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消費税計算の基礎とインボイスとの関係のおさらい(インボイス制度解説Part1)

令和5年10月1日から開始されるインボイスについて残り半年となりました(記事作成日は令和5年3月)。制度開始に伴う軽減措置がとられてはいますが、情報の浸透はまだまだという印象です。国税庁のホームページや動画を見ても、難しい用語が並んでいるだけで果たして何割の方が理解できたか疑問が残ります。

この記事ではインボイスの制度解説を3つのテーマに分けてお送りいたします。
Part1は消費税計算の基礎とインボイスとの関係
Part2はインボイス制度開始に伴う負担軽減措置である「2割特例と仕入税額控除80%の経過措置」
Part3は1万円未満の取引についてインボイス不要になる「少額特例」と「少額な返還インボイスの交付義務免除」
Part1~Part3は相互に関係するテーマになりますので是非御覧ください。

今回はPart1の消費税計算の基礎とインボイスとの関係に付いて解説します。

消費税計算の基礎 本則課税

先ずは分かりやすくするため、1年間の消費税込みの1年間の売上が1100万円、消費税込みで支払った経費が550万円だった場合を例に計算します。

消費税の計算において、人件費や社会保険料など消費税が発生しない経費は計算に影響しません。また、売上においても例えば病院の公的保険が適用される診察代や薬代、土地の代金、賃貸住宅の賃料などは消費税が掛かりませんので、これらも消費税の計算に影響しません。

消費税率を10%として売上1100万円の内100万円が納めるべき消費税の元手になります。しかし、この例では経費の支払いの際に50万円分の消費税を払っています。

よって、売上代金と一緒に徴収した消費税100万円から、経費の支払いの際に一緒に払った消費税50万円を差し引いた残りを納めます。

【計算例】
売上代金と一緒に徴収した消費税100万円 ー 経費の支払いの際に一緒に払った消費税50万円 = 納めるべき消費税50万円

この計算方式を本則課税と言います。本則という名称が付いている通り、消費税の申告義務の有る全ての事業者を対象にした申告方法です。

用語の説明をします。消費税を計算する際に対象となる売上の事を課税売上と言います。先程の例に出てきた税込みの売上1100万円がこれに当たります。消費税を計算する際に対象となる経費の事を課税仕入と言います。先程の例に出てきた税込みの経費550万円がこれに当たります。

先程の例の最後に、売上代金と一緒に徴収した消費税100万円から、経費の支払いの際に一緒に払った消費税50万円を差し引きました。この差し引く計算のことを仕入税額控除と言います。

もう一つの消費税計算方法 簡易課税

次に、もう一つの消費税の計算方法である簡易課税を説明します。簡易課税は先程の売上1100万円の内100万円の消費税部分にみなし仕入率を掛けて納める消費税額を計算します。

【計算例】
売上代金と一緒に徴収した消費税100万円 ✕ みなし仕入率20%(小売業の場合) = 納めるべき消費税20万円

みなし仕入率とは、、対象者の職種によって大体これくらい掛かるだろうとみなして、簡易的に経費に含まれている消費税を算出する方法です。詳しくは国税庁のホームページの表をご確認ください。

すべての企業で利用できるわけでは無く、基準期間と呼ばれる判断期間の売上が5000万円以下で簡易課税を利用する旨の手続きをした場合にできる申告方法です。この場合、売上5000万円は消費税込みで判断します。

消費税計算とインボイスの関係

では、インボイス制度は、これらの消費税の計算にどの様に影響するのでしょうか?……もう一度、本則課税の例を参照します。

先程、本則課税の計算は売上代金と一緒に徴収した消費税100万円から、経費の支払いの際に一緒に払った消費税50万円を差し引いた残りを納めるとお話しました。この差し引く50万円について、これまでは消費税申告義務のない免税事業者や一般個人からの支払いについても、消費税を支払ったとして計算に入れて良いとしていました。

しかし、インボイス制度開始後は、経費の中に含まれる消費税については「適格請求書」を発行してもらい、それを保存したもの以外は認めませんとする制度です。計算例で言えば、この50万円の部分は「適格請求書」を保存していないと、売上に掛かる消費税100万円から差し引けなくなります。

更に「適格請求書」は税務署に登録を受けた事業者のみが発行でき、その登録の条件として消費税を納税する義務の有る事業者…これを消費税課税事業者と言いますが、消費税課税事業者であることが条件になります。このインボイスに対応した「適格請求書」を発行できるようになった事業者のことを「適格請求書発行事業者」と言います。

インボイス制度で問題とされていることが2点有ります。これまで消費税の申告を免除されていた小規模な事業者やフリーランスに対し、実質的に増税を迫ることになる点とインボイス制度導入による経理事務の負担が大幅に増える点です。

この問題点に対し政府は令和4年の12月に税負担や事務負担の軽減を行う旨の閣議決定を致しました。小規模な事業者やフリーランスに対する税負担の軽減については「小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置」別名で「2割特例」で対応し、インボイス制度導入による経理事務負担の増加については「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」別名少額特例で対応しようと言う考えです。

次回のnoteでは「2割特例」について解説します。是非この記事のスキとフォローをよろしくお願いします。

インボイスに関するご相談

本記事は税理士・社会保険労務士・行政書士など専門家の集まるグループ企業:みらい創研グループが作成しております。インボイス制度開始に伴い税理士のアドバイスやコンサルティングをお考えの方は是非お問い合わせください。*日本みらい税理士法人はグループ企業です。


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