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光合成の材料! CO2の施用について (農業)

作物栽培は 光エネルギーを利用して葉で CO2と水を原料に光合成し、合成された炭水化物と根から吸収された窒素など肥料、ミネラルを組み合わせてアミノ酸やタンパク質等などを合成し、それらを果実や成長点になどに転流させる行為です。光合成の原料である CO2をできるだけ多く植物に吸収させることが栽培技術として極めて重要です。

作物を栽培しているハウス内の CO2濃度は朝方には夜間の呼吸作用により外気より高くなっていますが、日の出後、日射量が多くなり光合成が盛んになるとともにCO2濃度は低下し、換気を行うと外気程度にまでCO2濃度は回復します。冬季にハウスの換気量を減らす結果、ハウス内の日中の CO2濃度は100 ppm 程度まで低下することもあり、植物は十分な光合成を行うことができない状態になります。そのため光合成を促進する目的でハウス内の CO2濃度を高めるために CO2施用が行われます。

養液栽培では培地はロックウールやヤシ殻を使うケースが多いので、土壌の微生物による CO2供給が行われず、同じハウス栽培であっても土耕に比べて CO2濃度の低下に対してより留意する必要があります。
(微生物が放出しているCO2量はバカにできない・・)

CO2施用により作物の生産性が向上することは古くから知られておりオランダなどのハウス栽培においては標準技術として導入されていいます。

一方、日本では導入実績は1983年の994ヘクタールをピークに1989年まで減少しました。その原因としては正しい利用法が十分に理解されていなかったため使用効果が確認できなかったことが原因といわれていますが、最近では CO2施用に高い関心がもたれるようになっています。 CO2施用は基本的には施設を締め切って行う必要があり、低温・寡日照(日照時間が少ない)地域に適した技術で、 冬季のハウス内で CO2施用を行うと多くの作物で効果がありますが、トマト、イチゴ、メロン、キュウリなどの果菜類で利用されることが多いです。

CO2濃度は1200 ppm 付近までは濃度が高い方が施用による生育促進効果は高いですが、コスト等を考慮すると冬季は800 ppm、 春及び秋は600~700 ppm 程度が適当と考えられています。かつてはタイマー制御により早朝のみの施用が行われていましたが、近年では CO2検出器が安価となり 終日 CO2濃度を一定に制御する自動濃度制御も行われるようになりました。 CO2施用に液化炭酸ガスのボンベから帰化した CO2を施用する方法や LP ガス灯油を燃焼させて CO2を発生させる方法があります。

液化炭酸の気化方式は熱が発生しないことから高温期にも植物に供給しやすく、不純なガスが含まれていないため、作物への効果が確実であるというメリットがあります。
一方で小面積ではランニングコストが高いことがデメリットとなります。

燃焼方式では燃焼器具のコストは割高であるが CO2施用の維持費は安く、夜間の補助暖房として転用もできます。現在、最も利用されているのは導入コストやランニングコストが最も安価な灯油燃焼式です。
灯油に不純物が入っていると不完全燃焼を起こし有害なガスを発生することがあるため掃除の点検 や燃料の品質管理には十分注意しておく必要があります。

光合成速度が最も高まる時間帯に大気中の濃度400 ppm 程度を維持する日中低濃度差施用法やハウス内の CO2がハウス外に漏れるのはハウス内濃度がハウス外よりも高い場合に限られることを利用して施設内のCO2濃度が等しくなる状態を維持して CO2施用を行うゼロ濃度差CO2施用法も増えてきています。このゼロ濃度差CO2施用法を用いるとハウス内の開口部が開いていても施用した CO2のほとんどが全て作物に吸収されるため CO2施用量が少なくて済むことになり、ランニングコストを削減することができます。

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