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雇用統計後、逆イールド急拡大~米国、中国、トルコを見てみよう~【日経新聞をより深く】

1.雇用統計後、逆イールド急拡大

11月の米雇用統計は労働市場が依然強いことを印象付けた。しかし、米債券市場では金利が下落した。ドル相場も、発表直後にはドル高に振れたが、その後、ドル安に転じた。11月30日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長講演で、利上げペース減速が明示されたことがいまだに効いている。

とはいえ、労働市場では、失業者1人に対して1.7の求人件数という異常な事態が続いている。雇用統計の平均時給も急上昇した。パウエル議長を困惑させる結果となっている。

結局、利上げ幅は0.75%から縮小しても、0.5%あるいは0.25%幅の利上げは継続されそうだ。その結果、最終的な金利水準は5%を超え、しかも、その高水準は2023年通年で継続する可能性がある。米連邦公開市場委員会(FOMC)内ではハト派とされるサンフランシスコ連銀のデイリー総裁でさえ、「5%を超えた水準が維持される」ことを「上げた状況を留め置く(raise and hold)」と表現している。しかも、この5%を超えるプロセスを、パウエル議長は講演で「手探り」と語っている。ドル金利が通年で5%超となれば、外為市場の基調はドル高となろう。

さらに、雇用統計の次の注目は消費者物価指数(CPI)だ。くしくも12月FOMC初日の13日に発表という巡り合わせになっている。雇用統計の新規雇用者数が事前予測より上振れたように、CPIも蓋を開けてみなければ分からない。

なお、筆者が、雇用統計後の市場で最も気になるのは、逆イールド拡大が加速したことだ。政策金利に連動する2年債は4.3%台、将来の景況感を映す10年債は3.5%台。長短金利スプレッドはマイナス0.8%に接近中だ。この金利差は異常というほかない。

市場は雇用統計後にドル金利水準が下落したことを注目するが、逆イールド拡大のほうが、不気味である。スタグフレーションの可能性がちらつくからだ。ISM製造業景況感指数が50を割り込み49と景気後退入りするなかで、FRBが最も重視するPCEインフレ率は伸びが鈍化したもののコアで5%と目標の2%を大きく上回る。

市場の現実的対応としては、あまり高望みせず、PCEインフレ率が3%台に下落するなかで、懸念される米国景気も個人消費を中心にかろうじて下支えされる「準軟着陸シナリオ」で良しとせねばなるまい。パウエル氏自身も「ソフティッシュランディング」という表現を講演では使った。

ドル高基調転換については、まだ、山あり、谷あり。断じるのは、いかにも早計である

(出典:日経新聞2022年12月5日
(出典:TRADING ECONOMICS/米国2年国債、10年国債金利差)

米国は国債金利は短期金利を長期金利が下回り、逆イールドが発生しています。この逆イールドは不景気のサインと言われており、それが拡大しています。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国総合PMI

米国のISM製造業景況感指数が50を割り込み49と景気後退入りする中での逆イールドの拡大は注視しておく必要がありそうです。

2.中国経済はゼロコロナ政策次第

北京・上海、コロナ対策を一部緩和 地下鉄利用で
北京市当局は5日から、地下鉄や路線バスの利用者に48時間以内のPCR検査の陰性証明の提示を求めないようにする。新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策への不満が高まっているためコロナ対策の一部を緩和する。

国家イベントが多い首都である北京市当局のコロナ政策は極めて厳しい。11月末には、全市民に事実上義務付けてきた数日ごとのPCR検査について、長期間外出しない高齢者や幼児らを対象から外すと通知しており、段階的に緩和する。

ただ、オフィスなどに入る際は陰性証明が必要なことが多い。PCR検査所の多くが閉鎖された後に、再開されるなど混乱が起きている。セ氏0度前後以下の寒空の下で検査のために並ぶ市民からは「PCR検査の施策に統一感がなく、市民は迷惑している」(飲食店の経営者)との不満が出ている。中国では3日の新規感染者が約3万人を超え、感染は収まっていない。

北京では11月27日夜から28日未明にかけて、多数の若者らが中心部に集まって「PCR検査はいらない」などとゼロコロナ政策に抗議した。中国当局は週末も抗議活動が起きた場所などで警戒態勢を敷いている。

習近平(シー・ジンピン)指導部は政府批判には厳しく臨む一方、地方当局には過剰な規制を見直して市民の不満を解消するよう働きかけている。

上海市当局は5日から、地下鉄や路線バスなど市内の公共交通機関または公園や観光地など屋外の公共の場での陰性証明の確認を取りやめる。重慶市でも中心部など多くの地域で外出できるようになった。

広州市では大半の封鎖地域が解除された。同市では11月、厳しい封鎖を巡り住民と警察の衝突が起こった。市当局は中心部の多くの飲食店で店内飲食を再開するなど、緩和策を打ち出した。

中国メディアによると、米アップルのスマートフォン「iPhone」の生産を請け負う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の工場がある河南省鄭州市でも、地下鉄や路線バスなどの利用に陰性証明を不要にした。瀋陽市などでは外出しない人のPCR検査を不要とした。

(出典:日経新聞2022年12月4日

中国はコロナウイルス感染拡大でロックダウンとロックダウンへの抗議からそれを緩和するかの状況を巡り揺れています。

そんな中、ブルームバーグのエコノミスト調査では、11月の中国の輸入額はドルベースで前年比7%減、輸入額は4.4%減と、いずれも10月より大幅に落ち込むと予想されています。さらに、世界経済の後退から、輸出も低下すると予想されており、中国経済は厳しさを増しそうです。

不動産セクターのバブル崩壊はこれからも明らかになってきそうです。2023年の中国経済は内外共に厳しい環境のため、悪化は避けられないでしょう。

3.トルコはインフレ率が低下?

Turkey’s red-hot inflation may show signs of cooling when the statistics agency releases its latest data on Monday, more than a year after the central bank began slashing interest rates and driving up prices.
中央銀行が金利を引き下げ、物価を上昇させ始めてから1年以上が経過し、統計機関が月曜日に発表する最新データでは、トルコの赤熱したインフレは冷める兆しを見せるかもしれない。

Annual inflation is expected to have fallen to 84.7 per cent in November, according to a Reuters poll, from 85.5 per cent in October. That would mark the first decline in consumer price inflation in 18 months, as month-on-month price rises begin to slow, economists said.
ロイターの世論調査によると、11月の年間インフレ率は10月の85.5%から84.7%に低下すると予想されている。前月比の物価上昇が鈍化し始めたため、消費者物価上昇率は18ヶ月ぶりに低下すると、エコノミストは述べている。

(出典:フィナンシャルタイムズ2022年12月5日

トルコは、エルドアン大統領の不思議な経済政策によって、考えられないインフレ率となっていました。そのインフレ率が85.5%から84.7%に下がるかもしれないという予想です。ただ、それにしても異常なインフレ率です。

このインフレ率の背景にあるエルドアン大統領の不思議な経済政策とは、インフレなのに、金利を下げるというものです。インフレの場合は、金利を引上げ、経済の過熱を抑えるのが通常です。しかし、インフレの中、ますます金利を引き下げ、通貨を弱くして、輸出を拡大することが経済を伸ばすことだと、金利を引き下げ続けたのです。

結果、経済成長をしていたのですが、それが止まってきています。

トルコ統計局は30日、2022年7~9月の実質国内総生産(GDP)が前年同期比3.9%増だったと発表した。80%を超えるインフレ率や外需の不振で、4~6月期の7.7%(改定値)から減速した。政府は金融緩和と財政出動で景気を下支えしようとしている。

産業別では製造業が1.7%増、サービス業が6.9%増など。それぞれ9.2%増、18.2%増だった4~6月期からの減速が鮮明になった。消費が19.9%増、輸出が12.6%増と、高水準ながらいずれも勢いは弱まった。

トルコは21年、新型コロナウイルス禍の反動で11.4%成長し、22年前半も7%台の高成長を記録した。政府は22年通期の成長率が5%程度になると見込む。

(出典:日経新聞2022年12月5日

エルドアン大統領の不思議な経済政策も息切れしているのかもしれません。来年には選挙を控えています。このまま経済が息切れすれば、異常なインフレの中で不景気に突入する可能性があります。そうなれば、エルドアン大統領と言えども選挙は安泰ではないかもしれません。

今回は、3つの国の経済をのぞいてみました。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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