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業務可視化の考え方

■業務可視化の必要性
 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、システム導入において、QCDに影響する事象の原因となる工程の5割は要件定義となっています。つまり、ビジネスの要求を明らかにすることや現状把握に問題があり、デジタル化が失敗しているということです。要件定義を適切に行うためには、現状業務の可視化がカギになります。現状業務が明らかになっていないと、要件定義を正確に行うことができないからです。

QCD に影響した事象の原因工程(ユーザー企業ソフトウェアメトリックス調査2020(JUAS)より作成)

■業務可視化ツールとは
 では、業務の可視化をするためには何をすれば良いのでしょうか?
業務可視化の大切な要素はドキュメント化です。ドキュメント化されていないと現状の業務を理解することはほぼ不可能です。頭の中だけの情報でやり取りをすると、空中戦になってしまい、誤解が生じやすくなるからです。また、業務を詳しく知らない他部門の人や上司に説明する際にもドキュメント化が必要です。システム導入をするのであれば、開発会社に説明するためにもドキュメント化されていることが大切なのです。
 
 では、業務の可視化にはどのようなドキュメントが必要なのでしょうか?業務可視化には、2つのドキュメントが必要です。業務フローと業務一覧です。業務フローというのは、業務プロセスをモデル化することです。下記のイメージのように、時系列で誰が何をやっているのかを示すものです。他方、業務一覧というのは、業務フローの一つ一つのプロセスを更に詳細に定義したものです。通常、業務一覧はエクセルなどを使って、担当者、インプット情報、アウトプット情報、業務量などを表形式で表していきます。

左:業務フローのイメージ、右:業務一覧のイメージ

  これらの業務フローと業務一覧を使うことで業務を適切に可視化することできて、業務を詳しく理解していない人にも明確に伝えることが可能になります。
■業務可視化ツールの位置づけ
 業務可視化は業務フローと業務一覧で表現されますが、これらのドキュメントは、システム導入の中でどのような位置づけにあるのでしょうか?経営全体の枠組みで捉えると、業務可視化というのは、戦略立案から戦略実行までのプロセスの中で、戦略実行に関わるものです。

構想策定のイメージ

 まず経営戦略と具体的な施策があります。つまり、経営サイドからの要求が起点となります。経営からの要求を実現する手段が業務変革やシステム導入の場合、実行に向けた第一歩が現状業務の分析です。現状業務の分析の土台となるのものが業務可視化で、業務フロー、業務一覧を作成することです。業務が可視化されることで、現状分析が可能になります。現状分析することで、課題が明らかになります。そして、課題への対応方針を明確にすることで、システム導入をするか否かも明らかになります。システム導入を進めるためには、RFPなどを作って、ベンダ選定を行い、実行計画書を作成します。このようにシステム導入における戦略実行の起点になるのが現状業務分析であり、業務可視化なのです。
 そして、業務フローや業務一覧は、本格的なシステム導入のフェーズにおける要件定義においても、要件把握の土台となるドキュメントとしても活用されていきます。要求定義が正確になされることが、設計や開発が適切になされるのに必要なことは、上記のJUASの調査でもあきらかです。
 以上のように、システム導入の失敗の大半が要件定義に関連していました。適切に要件定義をするためには、業務の可視化が非常に重要です。そして、業務可視化は業務一覧と業務フローによってなされるということを押さえていただければと思います。

(第78回 2022/9/17) 

<参考文献>
(2022). ユーザー企業ソフトウェアメトリックス調査2020. 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS).

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