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インパクト・マネジメントとは?

■社会的インパクト・マネジメントとは何か?
 近年、環境問題や社会問題が浮き彫りになっている中で、営利・非営利の事業を通して、問題を解決しようという動きが出てきています。SDGsやESG投資などという考え方もそれにあたります。そして、こうした事業を評価し、継続的に改善するための考え方が社会的インパクト・マネジメントと呼ばれるものです。

 2016年の内閣府の定義によると社会的インパクトとは、「短期、⻑期の変化を含め、当該事業や活動の結果として⽣じた社会的、環境的なアウトカム」の事を指しています。平たく言うと、「環境や社会問題のための活動が、実際にどれだけ効果(インパクト)があったのか?」ということです。更に、社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)は社会的インパクト・マネジメントのことを「事業や取り組みがもたらす変化や価値に関する情報を、各種の意思決定や改善に継続的に活⽤することにより、社会的インパクトの向上を⽬指す体系的な活動」と定義しています。こちらも平たく言うと、社会的インパクトを正しく測定・評価して、社会的インパクトを向上させるための意思決定や継続的な改善をしていく活動です。

 では、具体的に社会的インパクト・マネジメントとはどのようなものなのでしょうか?SIMIが提唱するものは、「インパクト・マネジメント・サイクル」を回すというものです。基本的には、PDCAサイクルに似通った考え方になっています。つまり、取り組みを継続的にモニターして、改善点を洗い出して、改善につなげていくということです。PDCAと「インパクト・マネジメント・サイクル」の異なる点は、あくまでも社会的インパクトの評価と向上に焦点を当てているかどうかということです。

①計画(Plan)
②実行(Do)
③効果の把握(Assess)
④報告・活用(Report&Utilize)

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社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)より抜粋

 なお、社会的インパクト・マネジメントが有効なのは、ロジックモデルなどで事業戦略を組み立てて、結果を測定していくようなケースに適しているとことです。つまり、即座に対応が必要なケースや事業戦略などが不要な単純な取り組みには適しません。これも事業を立ち上げの初期段階などには、状況が日々刻々と変わるため、PDCAなどはかえって足かせになってしまう場合が多いというのと似ているように思います。

■インパクト・マネジメントのイメージ
 では、ここからはインパクト・マネジメントのイメージについてみていきたいと思います。イメージを持つために、SIMIにおいて掲載されている「特定非営利活動法人 〇〇〇」の事例を参考にさせていただきたいと思います。参考情報のサイトから閲覧できる情報ですが、ここでは社名などは伏せさせていただきます。

 〇〇〇社は「発達障害の子ども達へのエビデンスに基づいた早期療育の普及を目指し、A町とB町の教室を拠点に事業を実施」している非営利の団体です。そして、下記の目的(抜粋)のために社会的インパクト・マネジメントの導入を試みました。

・発達障害の子どもたちの可能性を最大限に広げられる社会の実現に向け、必要な成果、期待した成果を出せているかを定期的に測定し、常に無駄のない事業計画の実行と見直しを行う。
・活動の成果を、受益者やその地域全体の変化として詳細に可視化する。社会的な共感を得やすい成果を見つける。

 次にインパクト・マネジメント・サイクルにおける最初のステージである計画(Plan)についてみていきたいと思います。計画の段階では、事業戦略やロジックモデルと呼ばれるものを作ります。ロジックモデルは下記のように、「資源」、「活動」、「直接の結果」、「初期成果」、「中期成果」、「長期成果」を整理していきます。

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社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)より抜粋

 これによって、初期、中期、長期の成果を洗い出すことが可能になります。成果が洗い出されたら、下記のように成果に対する成果指標を明らかにします。

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社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)より抜粋

 このように成果指標と具体的な目標値を作成することで、活動の評価ができる状態が整ったと言えます。インパクト・マネジメント・サイクルの計画(Plan)では、このような事を検討していきます。その後は、実際に事業を、②実行(Do)すると、成果指標が明らかになっていることで③効果の把握(Assess)が可能になります。更に結果を整理し、④報告・活用(Report&Utilize)することで、次のサイクルへとつなげていくイメージのようです。

 〇〇〇社においては、実際にロジックモデルを作ったことで、下記のようなメリット(抜粋)があったようです。

・成果を考えることで、必要な活動が見直すことができる。
・今何のためにやっているのかを長期的な成果とつなげて考えられる。
・評価のプロセスや結果を全職員と共有し、共通言語として使うことが出来る。
・きちんと評価を行うことで同じ課題を抱える他地域のモデルケースとして、対外的にアピールできる。
・助成金や研究費等の資金獲得の根拠として活用できる。
・行政の制度改革やロビイングなどの根拠として活用できる。

 以上が、インパクト・マネジメントのイメージとなります。参考情報に引用元のサイトが記載されていますので、更に情報を得たい方はご参考にしてみてください。

(第41回 2022/1/4)

[参考情報]
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI). 社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン. https://simi.or.jp/tool/practice_guide.
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI). (2017). 評価の高かった事例. https://simi.or.jp/wp-content/uploads/2020/05/h28-social-impact-sokushin-chousa-04-1.pdf.

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