側溝

 僕は今、嫌なこととどうでもいいことと好きなことが一斉に終わって、なんだかとんでもなくぐったりとしている。世界と、世界を受信するすべての感覚器官との間に、ヘドロが溜まっているような気分だ。心の中ではもっと書きたいもっと動きたいもっと始めたいと思っているのに、今の僕には世界が2段階くらい暗く見えるし、身体の中を水銀が巡っているような重さがある。

 外の空気を吸わなければ。無意識にそう思い、気づけば電車で梅田まで来ていた。ユニクロで真っ黒な服を1着だけ買った。そのあとも文房具売り場とか書店とかカフェとか、テンションが上がりそうなところを何ヶ所か巡ったのだが、いまいち財布を開く気にはなれなかった。

 美味しいものを食べなければ。無意識にそう思い、気づけばくら寿司のカウンター席に座っていた。サーモンと茶碗蒸しと揚げドーナツみたいなやつが美味しかった。でも揚げドーナツは流石に高すぎると思う。今日のお会計のおよそ3割は揚げドーナツ代だ。けしからん。罪なデザートだと思う。カロリーなんかより、値段が高い方がよほど困る。

 帰って寝ねば。無意識にそう思い、気づけば帰路についていた。とはいえ、どうせ夜になれば眠るだろうから、寝るのはもう少し我慢しとこうかとも考える。じゃあ仮に起きたままでいるとして、僕は一体何を成すというのだろうか。どうせ何もなさないまま時間だけを貪り食うのではないか。少し食べ足りないなと、冷凍うどんを茹で始めるだろうか。

 変わっていく時、変わりたくないと強く思う。
 変われない中、変わりたいと強く願う。
 各駅停車に揺られる僕は勝手だ。