『読書感想文の所感#6』

〜付箋を活かせん〜

読書感想文のコツについて調べると、「読書中、好きになったところや気になったところに付箋を貼ってみましょう!」というアドバイスを見ることがある。このアドバイスを受けて私は、一時期付箋を本にペタペタ貼りつけて、それから読書感想文を書いていた。しかし、私はこのやり方がどうにも腑に落ちず、今では教科書以外の書物に付箋を貼ることはほとんどない。

付箋を貼ると、たしかに物理的にそのページを記録しておくことはできる。ところがそれはあくまで記録であり、ページの内容を記憶したことにはならない。これを勘違いするのは危険だ。読みながら気になった箇所に手当たり次第に付箋を貼っていくと、いざ一冊読み終えた後、過去の自分が勢いでつけた記録の数々を見て、「あれ?なんでここに付箋を貼ったんだっけ?」となる。この現象は、付箋を貼っただけでそのページの内容を記憶した気になってしまうことが原因で起きているのだ。

こうならないために、付箋を活かすために、必要なのは『記憶しようとすること』である。もう少し具体化すれば、『本に書かれているものを読む』という受動的な作業から『本に書かれていることを現実世界に持ち出す』という能動的な行動への飛躍が必要なのだ。例えば、本の中で『戦時中に食べていた質素な料理の材料』が書かれていたら、実際に材料を集めて、それっぽく作ってみる。そして食べてみる。するとどうだ。全然美味しくないし、パサパサしている。そもそもこれは料理なのだろうか。毎日こんなものしか食べられなかったのか。そう思うと、付箋を貼るのよりよほど記憶に残るし、感想も深いものになっていく。

付箋を活かそうとするならば、ただ記録として貼るのではなく、その付箋に、『その部分を読んでどう思ったのか』『どこに共感したのか』『他の場面との関係はあるか』などを自分の言葉で書き出すのが良いと思う。自らの手で本の世界にあった文字を現実世界に持ち出し、立体的に組み立てるのだ。
また、読書感想文とは少し違うか、国語辞典で調べた言葉に付箋を貼りまくれ!みたいなアドバイスも、なんだか違う気がする。辞典で調べる言葉は数が多すぎるから、付箋に意味を書いて貼ったりするのは大変だし、そもそも辞典が使いづらくなっていく。やはり、調べた言葉は日常生活で使おうと意識しなければならないのではないかと思う。

私の場合は、生活の中で出会った語感の良い言葉や、キレのあるキャッチコピーは、口に出して読んでみたり、スマホのメモ帳に書いてみたりしている。記録で終わらず記憶に残す、意識するだけで読書感想文も日常生活も、色が出て楽しくなるのではないだろうか。