『読書感想文の所感#5』

〜文章を着飾る〜

読書感想文のタイトルと言えば、「『蜘蛛の糸』を読んで」のような、「〇〇を読んで」の形を思い浮かべるかもしれない。そりゃもちろん感想文なのだから、〇〇を読んだ後の感想を書くわけで、「〇〇を読んで」というタイトルは、「〇〇を読んで(感じたこと)」みたいなニュアンスがある。文章の中身を示唆しているわけではないので、シンプルで動きやすいタイトル、と言えるだろう。

しかし、とここでは言いたい。タイトルをそんなにぞんざいに扱っていいのだろうか。私に言わせれば、タイトルはその文章全体の第一印象を決めてしまう、言わば外見のようなものである。
多くの読者はその文章を読む前に、まずタイトルを見る。そして、この文章が果たして自分が読むべきものであるかどうかを判断する。つまり、タイトルがあまりにそのまんまだったりありきたりだったりすると、それだけで文章全体を読んだ気になってしまい、本文を読んでもらえないことも多々ある。第一印象として、タイトルが見られるのだ。
さらにタイトルは、その文章中で最も大事なキーポイントを示していることが多い。ただ、タイトルだけではいったい何が主題なのかがわからない、というものもたまにある。しかしこれらも、本文を途中まで読むと、なるほどそういう意味だったのかと納得できる瞬間がある。他人を見た時の、かっこいいとか可愛いとか面白いとかのイメージは、その人のことをよく知った際、第一印象とのギャップに気づいて起こるものでもある。
また、読み終わった後数日置いて、もう一度タイトルだけを見てみる。当たり障りのないタイトルの場合、それを見ただけでどんな話だったか思い出せと言われると、少し難しい。しかしながら、少し引っかかる言い回しで、本文を通して意味を理解し納得できたタイトルだとどうだろう。タイトルを一目見ただけで、こういう話だったよなーと思い出すことができるはずだ。タイトルは、読了後の記憶の栞にもなってくれる。より大きくて目立つ栞を挟むことで、記憶の中から内容が掘り出しやすくなる、つまり、印象に残る文章が仕上がる。

タイトルは、決して文章につけた名前なんかではない。やはり文章の外見である。それ一つで、初対面の時にはその文章がどんな文章なのかなんとなく予想して、実際に読んでみたとき、ギャップに驚いたり納得したりして、タイトルを見るたびにその文章の記憶が蘇ってくる。これがタイトルのあるべき姿なのではないか。人が毎日顔を洗い、髪の毛を整え、服を選ぶように、文章のタイトルもまた、自分の納得のいくまで考える必要がある。だから、タイトルは本文を書き終えてからつけるのが当然とも言えるだろう。書き始める前から「〇〇を読んで」という、シンプルで動きやすい作業服を着せてしまうのは、いかがなものかと思ってしまうのだ。

と言いつつ、この文章に『読書感想文の所感#5』という制服みたいなタイトルをつけているのは、私がこの文章を完全に自己満足で書いているからである。