『読書感想文の所感#7』

〜ズレない話題かブレない主題か〜

読書感想文には、何を書けばいいのだろうか。そんなの考えるでもなく、名前の通り、読書を経た感想を書けばいい。本の紹介だけで終わってしまってはアマゾンの商品ページだし、自分の体験だけを書いたのは自筆伝記である。読書感想文を読書感想文たらしめるのは、感想。
だが、真っ当に個人的な感想だけを書いた2000文字程度の文章に、果たして需要はあるのか。それってあなたの感想ですよね?と一言ツッコミを入れられたらまだいい方で、最後まで読んでくれる人すらかなり少数だと思われる。感想なんてせいぜい140文字で呟いたら十分で、2000文字に引き伸ばされたような文章は、実はそこまで需要がないのである。

需要のある感想文を書きたいのであれば、話を本の中だけにとどめていては勿体ないと思う。現実世界の話とリンクさせると、文章に奥行きが出て、それが時に需要となり得る。自分の過去の体験談でも、今世界で起きている諸問題でも、有名アニメのあのシーンでも、何かその本以外の場所から引っ張り出してきた情報を載せる。それらがない読書感想文を読むくらいなら、感想文を書くにあたって読まれた本を実際に買って読んだ方が面白い。
ただし、ここで一つ注意すべきなのが『新たな話題を出しても脱線してはいけない』という点だ。どんな話に飛躍させるとしても、必ずそれらは、自分の感想に関係のある話、主題が同じ話でないといけない。「そういえば」とか「ちなみに」とかで初めて、別のアニメの推しについて語り出したら、全てが崩れてしまう。それは、読書感想文が『感想を書く』という共通の目的意識の上に成り立っているものであり、長く書き連ねる形式的な文章だからである。

本の感想を書くにあたって他のアニメの話を出すことを、脱線であると言う人もいる。話の軸を本にするならば、確かにこれはまごうことなき脱線であるが、話の軸を感想にすると、これは脱線ではなく延長線であると言える。古典の中にも、前半と後半で全く別の人物の逸話を書いて、最後の一文で『どっちもこんなところがすごいよね〜』みたいに締め括っている文章があるように、別の事例を繋ぎ合わせることが話の脱線であるとは限らない。大切なのは『話題』ではなく『主題』がブレないことなのだ。

『主題をブラさずに別の話をする』というのは、言い換えれば『例え話』である。ピタッとはまる例え話を考えるのは、案外難しいなと思う今日この頃。少し前に残り10日だった夏休みは、後1日。時の進み方が、ド・ドドンパくらい速い。骨が折れてしまうよ。こんな感じで、話題のズレは一瞬で生まれてしまうのだから。