【掌編小説】『勘ちguy』

女「あ。先に着いてたんだね。ごめんね、待たせちゃったみたいで」

男「いやいや全然大丈夫だよー。僕も今来たとこだし」

女「そうなの?」

男「そうだよ。もうこんな時間か。どっかでお昼ご飯食べよっか」

女「いいよ!どこ行く?」

男「そうだなー、あそこって9月でも開いてんのかな?」

女「どこのこと?」

男「ガスト」

女「あー、オーガストって別にガスト関係ないから、多分開いてるよ」

男「あ、そうなの!?」

女「うん。むしろ年中無休」

男「ええ!?それは大変だよ!!」

女「まぁ確かに大変は大変かもね」

男「いくら働いてもお金もらえないなんて……僕なら耐えられないな」

女「あー、ムキュウってのは給料じゃなくて、休みがないことだよ」

男「あ、そうなの!?でも、それはそれでその人いつ寝てるの?」

女「あー、別に1人で店を回してる訳じゃないから、心配しなくていいと思うよ」

男「え!?お店の下にタイヤとかついてるってこと?」

女「あー、お店を回すっていうのは運営とか経営をするって意味だよ」

男「ん?それって何かの略語?」

女「あー、KAじゃなくて、経営。経済の経に営業の営で、経営」

男「なんだよー、KAって言うから、『カメラアシスタント』の略とかかと思ったよ〜」

女「あー、カメラはKじゃなくてCから始まるんだなー実は」

男「え!?それじゃあカメラじゃなくてキャメラじゃん!」

女「んー、割とネイティブに近くなったかも」

男「やだなー!僕はいつでもポジティブをモットーにしてるんだからさー」

女「あー、ネガティブとネイティブを混同しちゃってるなー」

男「コンドウ?誰よその男!」

女「あー、あらぬ疑いをかけられている。コンドウは苗字じゃないよ」

男「じゃあ名前?」

女「ちげぇよ!」

男「そういえばさ、この前テレビで、今再注目!!って言われてた人がいたんだけど、僕その人知らなかったんだよね」

女「え?誰?」

男「クロワッさん」

女「人じゃねぇよバーカ!!食いもんだよどあほ!!」

男「クイズモンスター?」

女「食いもんってのは食べるものって意味だよ!!そんなポケモンみたいなのじゃねぇよ!!」

男「ちょ、急にそんなに怒らないでよ……。全く、君はいっつも『棚から飛ぶ鳥跡を濁さぬ』なんだから」

女「あー、棚からぼたもちが混ざってるし、助動詞『ず』の終止形は『ぬ』じゃないし、仮にここで飛ぶ鳥跡を濁さずって言ってたとしても全然意味がマッチしてないんだよ!!」

男「僕はチャッカマン派だからなー」

女「そのマッチじゃねぇよ!」

男「チャッカマン売りの少女」

女「売るな!」

男「それはさておき、どこ行く?」

女「サンマルク行くか……」