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命をつなぐバトン、設計図の大航海!

 こんにちは。みらいメドテック事務局長の長谷川です。
 6月4日に、医療現場から生まれた飛散防止シールドを医療施設へ無償で届けるクラウドファンディングプロジェクトを開始しました。このクラウドファンディグは、ものづくり企業さんと臨床工学技士さんが共同で生み出した、医療従事者の命と安全を守る感染防止の防護具を1つでも1日でも早くまだ使ったことのない医療機関に届けたいという思いを受けついだプロジェクト。人から人の手に渡り、目的地へとまるで旅をするかのような設計図ということで、この本稿では「大航海」としてみました。

人を動かす設計図

 この設計図の何がすごいかというと、ものづくり企業さんにとっては命とも言える設計図が一般公開されているということなんです。

 このものづくり企業は、東京都葛飾区にある株式会社大門です。大門の代表取締役の津野田博さんは、4月8日の午後、自治医科大学附属さいたま医療センターの臨床工学技士、百瀬直樹さんから手書きの図面をLINEで受け取りました。「ここはこうした方がいいんじゃないか」「高さは多分これくらい確保したほうがいいんじゃないか」というやり取りをしながら、「飛散防止シールド」の試作品を作りあげていきました。

 臨床工学技士さんが作りたいというモノは一刻を争うものでした。「至急作ってもらえないか」の言葉に込められたその思いを、医療の現場をものづくりで支えてきた津野田さん率いる大門チームはしっかりキャッチ。リアルタイムで会話とチャットをしながら、図面を書き、ステンレス加工と組み立てをしていきます。依頼から試作が病院に到着するまでに要した時間はわずか2時間というスピードです。(以下の写真は6月4日のオンライン説明会より抜粋)

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 興味深いのは、大門の専門はプラスチックの射出成形・金型製作なのに、どうしてこのスピード対応ができたのかということです。実は、近所の板金加工を得意とするものづくり企業さんも協力を即断。こうした協力の連鎖が生まれるのは、ものづくり企業の横つながり、日頃からの連帯があってこそなのだと思います。

 試作品の改良を経て、設計図が完成したところで、百瀬さんは考えます。

医療現場が「飛散防止シールド」を注文するときに、すでに不足した状況に陥ってることもあるだろう。最寄りの板金加工の町工場が最短納期で収められるようにしたい。

「図面を一般公開できないか」という百瀬さんからの申し出を、「最前線で戦う医療従事者を守ることができるのであれば喜んで」と津野田さんは快諾。百瀬さんと津野田さんの医療現場のためのものづくりを通じた信頼関係があったからこそ、一般公開が実現したのでした。

臨床工学技士の輪から出発

 百瀬さん考案の飛散防止シールドを「百瀬シールド」とここでは呼びたいと思います。公開された「百瀬シールド」の図面は、いろんな地域の臨床工学技士の手に渡りました。

 臨床工学技士とは、医療機器の臨床スペシャリストと呼ばれ、人工呼吸器や人工心肺装置、ECMO(体外式膜型人工肺)という生命維持管理装置や、カテーテルなど血管内治療で使う装置の操作を担うほか、医療施設内の医療機器が安全に機能するように保守・点検管理をする専門家です。医学と工学の双方の立場から、チーム医療に関わります。普段から、多くの医療スタッフとコミュニケーションを取りながら、医療安全や患者さんや医療従事者の安心につながる仕事をしています。

 臨床工学技士は、こうした仕事柄、医療現場の困りごとをものづくりで解決するアイデアが思いつくことがよくあります。そのための勉強会や、経験・知識の共有に学び合いをする有志の会「臨床工学技士100人カイギ」も生まれました。臨床工学技士が100人規模で集まる有志による取り組みの一つです。そして、2020年の年明けとともに世界的に新型コロナウイルス感染が広がる中、「臨床工学技士である自分たちに出来ることは何かー」と、立ち上がったのがONE CE 「コロナ対策プロジェクト」で「臨床工学技士100人カイギ」の取り組みの一つになりました。

 新型コロナウイルスに新たに感染する人の数が減ることはあっても、完全な収束は見えていません。医療現場のニューノーマルとして、感染を断つための手段をなるべく低コストで実現していくためにも「百瀬シールド」は重要な役割を果たせるであろうと、ONE CE 「コロナ対策プロジェクト」のメンバー2人が、クラウドファンディングへの挑戦を決めました。

 埼玉の百瀬さんと東京の津野田さんが公開した設計図のバトンは、大阪の株式会社iDevice代表取締役の木戸悠人さんと、福岡にいるKiwi(CE医療機器安全管理支援)代表の大石杏衣さんに渡りました。

 早速、この設計図を大阪の町工場に持ち込み、協力を仰いで試作品をつくりました。医療現場で初めて使った医療従事者からは「これは良い!」という声があがり、木戸さんと大石さんは「もっと広めたい」と考えます。

 試作品として無償で1台使ってもらえば、2台目の注文が入る可能性はあるにせよ、最初の1台分の製作費を町工場に負担をお願いするわけにはいきません。コロナ禍で受注が減るなどして、協力をしてくれる中には、経営がしんどい町工場もあるかもしれません。地域によっては、新型コロナウイルス感染症対策など、何かしらの補助金や助成金を受けられるケースもあるかもしれませんが、そればかりを期待するわけにもいきません。

 医療従事者が救おうとしている患者さんは、あなたの大事な人かもしれない。あなたの大事な人を救うために医療従事者を、みんなで一緒に守りたいという気持ちの輪を広げたい。

そんな思いから、クラウドファンディングの挑戦がはじまりました。

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6月25日にオンラインで進捗報告会を開催

 6月4日にクラウドファンディングを開始し、その夕方にオンライン説明会を開催しました。その経過報告を6月25日(木)18時30分から開催します。ご関心を寄せてくださる方は、ぜひこちらからお申し込みの上、ご参加ください!

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引き続き、「命をつなぐバトン、設計図の大航海」の行方を見守っていただけますと幸いです。

医療現場の困りごとを解決するために、医療関係者が取り組む医工連携のサポートをしています。ご寄付は、そうした活動に役立てさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします!