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【勉強会レポート 10】みんなで話そう「訪問薬剤師のこと」パネルディスカッション

テーマ:みんなで話そう訪問薬剤師のこと
講師:アスト薬局巣鴨店 管理薬剤師 畔原 篤 様
開催日:2024年5月16日(木)


第1部:訪問服薬指導について

前半は「訪問服薬指導について」をテーマに、ゲストの畔原氏に訪問薬剤師の業務についてお話いただきました。

後のディスカッションでも取り上げていますが、現在訪問薬剤師が在宅医療の現場に積極的に介入しているケースはまだまだ少なく、そもそも仕事内容がよく理解されていなかったり、業務の範囲も人によって捉え方が異なっているため、他の職種のようにスムーズに連携できていない現状があります。

訪問薬剤師の業務内容から考え方、仕事へのスタンス、今後の課題や現状についても詳しくお話いただいたので、より良い医療を提供できる連携チームづくりの参考にしてください。

(以下は当日の畔原氏スライドより抜粋)

第2部:ディスカッション

「みんなで話そう訪問薬剤師のこと」

ディスカッション参加者(写真右から)
畔原 篤:アスト薬局巣鴨店 管理薬剤師(薬剤師)→以下「
青木 裕章:エール在宅診療所 院長(医師)→以下「
佐々木 雄規:エール在宅診療所 診療アシスタント(看護師)→以下「

1. 訪問薬剤師さんってどんな業務をしているの?どんなことができるの?

:一般的な薬剤師さんのイメージは調剤(外来)・薬を届ける配薬・残薬の管理・お薬カレンダーへの配薬(訪問の在宅医療に関わってる場合)などだと思うんですが、看護師さんの業務と重なることも多いのでは?

:実際に訪問看護師さんがやってくれてることも多々あって、そこは今後薬剤師に代わっても良いのかな、と思っています。

:ただ薬剤師さんによって関わり方が違いますよね?
積極的に入ってくる方もいれば気づいたら薬が届けられてた、みたいな感じの薬剤師さんもいますし…訪問とか在宅医療に介入する、参入するにあたってボトルネックになってることはありますか?

:よく聞くのは、教えてくれる人がいなくてどうしたら良いかわからないということ。自分は色々試行錯誤して今のスタイルを築いてきたんですが、なかなかそういう教育体制が整っていないのがボトルネックのひとつだと思います。

:確かに上の世代の薬剤師さんだと関わっている人が少ない印象ですね。

:そもそもやったことがないって方も多いですからね。

:畔原さんが実際に入ってみて難しいと感じることはありますか?

:患者さんの生活背景が見えなかったり、どういう経緯で今に至ってるのか等がわからなくて、ポイントでしか掴めないのが結構困ります。

:佐々木さんはどうですか?(看護師の立場から)

:薬だけ持ってきてそのまま置いて帰ってしまう薬剤師さんもいて、それだとと訪問看護師でセットするのと、訪問服薬でセットするのとどっちがいいのかな?という状況で、ケアマネさんにプッシュ(薬剤師の介入を)できなかったというのがあります。

:実際に薬剤師によってレベルや対応の違いがかなりあることをいろんなところから聞くので、全体的に底上げしなくてはと思いつつ…教育のタイミングやコンテンツが不足してるのを実感しているところです。

:実際どこまでお願いしていいのかな?っていうのがいまいちわかりにくいですよね…例えば配薬時に薬を飲ませるまではやってくれる方も結構いるけど、じゃあ座薬までやってくれるのか?とか、患者さんに触れる処置ってどこまでできるのかな?とか。

:坐薬はさすがにないですね…たぶん薬剤師としてはやったことがないから怖いみたいなところが一番大きいんだと思います。
が、体に触れること自体は全然大丈夫です。僕も保湿剤塗ったりとか湿布貼ったりとかするので。

【会場参加者からの質問】

参加者(ケアマネージャー):患者さんのご自宅にある大量の残薬を薬局に持ち込んでリサイクルをお願いすることがあるのですが、手間のかかることだし頻繁にお願いし辛いのですが…実際その辺りどうですか?

:確かに手間のかかることではあるんですが、その業務に対してもきちんと点数がついているので、ぜひ遠慮なく依頼してください。
医療費を効率化させるという意味でも非常に大事なことだと思いますし。
ただ、残薬が溜まっている方には溜まってしまった原因もあると思うので、それを解消するために薬剤師の訪問もセットで考えて頂けると嬉しいです。

2. 服薬指導はどのタイミングで必要?

:個人的な意見ですが、在宅が入るようなケースの患者さんはそもそも通院できないから訪問診療なり在宅の医療が入ってるので、薬だけ取りにいけるのはおかしなことだと思う。
そういう方はやっぱりアドヒアランスも悪くて有害事象も出やすいので、薬剤師さんに入ってもらって薬の管理をしてもらうのが妥当だし、安全に医療を提供できるので良いことだと思うんですが…実際に入ってるケースは決して多くなくて、当院でも3割くらいなんですよね。
なぜ入らないのか、畔原さんはどう思いますか?

:そもそもどこの薬局がやってるかわからない、実際に断られたという話をクリニックやケアマネさんから聞くので、どうしてもできるところに集中しているようですが…入れた方が良いタイミングがあれば、受けてくれそうな薬局さんにぜひ積極的にお願いしてほしいです。

:看護師さんが配薬しているケースも結構あって、管理していただいてるんですがそれで十分なケースと薬剤師が関わるケースがあると思うんですけど、佐々木さんから見てそこの違いってなんだと思いますか?

:生活がまったくわからなくて服薬管理もまったくできていないケースだと生活の聴取を含めて看護師が行った方が良いとは思うんですけど、飲み合わせがNGな薬もあったりするので、看護師の知識だけではわからないこともあります。都度先生に聞くわけにはいかないし、普通の薬局さんに問い合わせるわけにもいかないし…というところでやっぱり看護師としては困ることはありますね。

:逆に畔原さんが入ってみて、正直これは必要なかったな…というケースはありますか?

:正直ほとんどないです。やっぱり基本的に入った方がいいと思いますし、薬剤師も関わるべきだと思うので。

:僕も個人的には大体のケースに入ってもらった方が良いと思ってます。処方したときの疑義紹介だったり、そのダブルチェックをしてくれるのが薬剤師さんの仕事だと思うし、やっぱり数をこなしていくと間違えることも出てくるのでそこを引っ掛けてもらう役割もあると思っています。
普段コミュニケーションをとっている薬剤師さんだとパッと気づいてくれたり、そういうところでの安心感って全然違いますよね。

3. 訪問薬剤師はどのような患者さんに必要?

:事前アンケートにもあったんですが、退院時カンファレンスに薬剤師が参加しているケースって結構稀なんですよね。
もちろん訪問の薬剤師も稀だけど病棟の薬剤師さんすら入っていないケースが結構多くて、なんで呼ばれないんだろう…って。理学療法士とかは必ず退院時カンファレンスに来てくれるのに、その辺はどうなんですか?

:病院の薬剤師が来ないのはよくわからないけど忙しいのかな?という感じですが、薬局の薬剤師に関しては「呼ばれない」んです。
お声がけいただけてないケースがほとんどです。
でも今は退院時共同指導っていう点数が薬剤師にもちゃんとつくようになっているし、やっぱりどういう経過でそこに行き着いたのか、どういう経過で入院したのかとか、どういう経緯で退院することになったのかみたいな情報も大事だと思っているのでぜひ呼んでほしいです。

:今日ご参加の方にも退院支援していただいた元看護師さんとかケアマネさんがいらっしゃると思うんですが、人を呼ぶにあたってどんな基準で判断してるとか薬剤師を呼ぶか否かでご意見があれば…

たぶん呼んだことがないから呼ばないっていうことが多いのかな?と思うんですけどね。

皆さん頷いてるんで、たぶんそういうことなんですよね。
ですからその辺は…まあ僕が言うのもアレですけど、たぶん薬剤師さん側からももうちょっとアプローチすることが必要なのかなって。

:全体的に薬剤師ってアピールが足りないというか、控えめというか外に出ないというか…まあ、聞いてる薬剤師さんに申し訳ないんですが、そういう面はありますね(笑)

:どんな患者さんに必要かという話なんですが、先ほども言ったとおり在宅に入ってる方にはほぼ必要だと思ってます。

:やっぱり初めから薬剤師さんがいた方がいいですよね。
特にコンプライアンス悪い人とか、タンスの中から残薬がたくさん出てくるような人とかはもうぜひ早期に介入していただけると看護師としては非常に助かります。

:実際に診療している時は事前に処方箋を作って行って、それを現場で調整したり修正したりしてご家族にお渡ししてるんですけど、訪問服薬が入ってるケースだと慌てることなくゆっくり処方を考えられるんです。
もしかしたらこっちの方が良いのでは?とかもう一回考え直す時間を作れるし、処方箋を見た薬剤師さんの意見も聞くことができる。
お金がかかることなのでどうしても「絶対に」とは言えないですが、入ってくれると非常に診療のストレスが減ります。
たぶん看護師さんも直接ドクターに聞くよりは薬剤師さんに聞いた方がやりやすいんじゃないかな、と思います。

:そうですね、ワンクッションあれば(相談できれば)助かります。

:確かに、今先生がおっしゃったような「考える時間」は薬剤師にとってもすごく大事です。
持ち込みで処方箋を持ってきていただく方にはその場ですぐご用意して渡さなきゃいけないので、その処方がどうなのかとか考える時間があまりないのですが、在宅で入ってるケースだともとの情報もあるので処方箋が来た段階でこの処方がどうなのかとか、提案できることはないか等をチェックした上でお薬を用意できるし、さらに訪問するまでの時間もあるので色々考えられるんです。

4. 訪問薬剤師が在宅診療所に求めること~連携の疑問点~

:在宅医療で薬剤師さんが入っているケースというのはまだまだ少ないと思うんですが、そんな中で実際に入ってみて、在宅のチームに求めることや連携していく上でここが難しいな…と感じること、この方がいいんじゃないか?みたいな意見があれば聞かせてください。

:今まで関わってきたクリニックさんが本当に良いところばかりだったので、特段要望や不満はないというのが正直なところなんですが、強いて言うなら検査値の共有とかは積極的にしていただけるとありがたいです。
例えば、腎機能一つとってもこっちの薬の方が良いのでは?と思うことがあるので、これとこれどっちが良いの?で迷った時にはぜひ薬剤師に相談していただきたいですね。
あとは先生方でも薬の概要(形状・使い方・使用感)的な部分では相談していただいても良いと思います。

:確かに、外用薬だとどの薬剤を混ぜると一番効率が良いのか?適正なのか?とかありますからね。
薬剤師さんも色々な方がいるので、ここで話したような目線でお願いしたら「あれ?」ってなることも結構あって難しいとは思うんですが(笑)

:すいません…(笑)

:情報共有の部分ですが、電子カルテはモバカルを使用しているので連携している薬局さんが見られるようにリンクを貼ることもできます。
あとは情報共有ツールとしてMCSを使用していて、そこに検査値を載せているので連携している薬剤師さんも見ることができると思います。

【オンライン参加者からの質問】

参加者:逆に薬剤師さんにはどんなことを求めていますか?

:薬剤師に一番求められているのはアドヒアランスの向上だと思います。
薬を出しても飲んでくれないと何も始まらないし、1回飲んでやめられてしまうと結局どうだったのかわからないし、飲めないなら仕方ないっていう判断で終わってしまう…なので、そこをサポートしてほしいです。
今までの在宅のチームだとドクターや看護師、場合によってはヘルパーさんやケアマネさんが残薬の管理みたいなことをしてたんですけど、そこの部分を助けてくれればみんなの負担が減るし、活かせる場も広がるのかな…と。

:おっしゃるとおり、決められた処方の内容を正しく飲むことも治療の一つなので、それを正しくサポートするのが薬剤師の仕事だと思っています。やっぱり薬剤師も患者さんのためになりたいとは思っているので、そこはぜひ頼っていただきたいです。
あとこれはこちらの要望なんですが、ご依頼をいただく際に薬剤師に何を期待するのか、アドヒアランスの向上は大前提としても他にプラスアルファで何を求めているかを伝えていただけると助かります。

:そうするとやはり僕らも薬剤師さんがどこまでやってくれるのかを知る必要があるし、それを共有していかないとなかなか意見を出し辛いですよね。

:そうですね。

:あとは個人的な意見ですが、訪問薬剤師さんが入ってて助かるなって思うのはクリニックが何個も入っている場合ですね。
自分たちが出していない処方に対して相談があった時に、薬剤師さんを通して病院に疑義を出してくれるとすごい助かるなって。
特に大学病院とかだと聞き辛いんです…

:本当ですよね、大学病院の先生に聞くのはすごい嫌ですもん、それは私たちも一緒ですから!(笑)
それに何個もクリニックにかかっていると当然その先々で必ず薬が出るので、結果ポリファーマシーになってきちんと飲めていない…という現象が起こりますよね。そこはぜひケアマネさんにもお願いしたいんですけど、何件か受診してる場合は薬剤師をハブにして薬を管理してもらう、コントロールしてもらうことを検討していただきたいです。

:確かに薬剤師さんがハブ的な役割をしてくれれば助かりますね!

【会場参加者からの質問】

参加者(退院支援をしている看護師):アドヒアランスの悪い患者さんは訪問看護師さんにお願いすることが多いんですが、悪戦苦闘しています。
患者さんに強く言うと契約を切られてしまうかもしれない…というところでせめぎ合いが見えてくるんですけど、訪問薬剤師さんが入ることで何か変わりそうですか?

:患者さんから見ると、薬剤師ってそんなに近い存在ではないがゆえに言葉が入ることもあるのかな?と思うことはあります。
それに、薬剤師=薬の専門家みたいな感じで見てくれているので、薬剤師が言うことで少し響き方が違うように感じることもあります。
あとは薬を飲む回数をちょっと工夫してみたり…例えば最近あったケースだと1日2〜3回飲んでいた人の回数を少し減らしただけでアドヒアランスが向上したり、食後のお薬を食前と一緒にするだけでも変わってくることもあるので、そういう処方を考え直すのは薬剤師にしかできないことなのかな、と思います。

まとめ

:これから外来の患者さんはどんどん減るし、処方箋の枚数もリフィル処方箋が進んで減ってくると思うんですが、薬剤師業界では今後どんな展開を考えているのか教えてください。(訪問を含めて)

:個人的な意見ですが、今後訪問をどんどん進めていく薬局とそうじゃない薬局とで二極化すると思います。
積極的に依頼を受けて、それを糧にレベルアップしていく薬局と、あまり積極的ではなく久しぶりに依頼を受けてもうまく対応できない薬局とで二極化していくのかな…と。
ただ点数は薬局も訪問・在宅のところが年々手厚くなっているので、経営的にそちらを向いている薬局が非常に多いと感じています。

:僕らもあまり紹介しても(薬剤師さんが)大変になってしまったりボランティアになっても困るな…と思ったりして紹介するべきか考えてしまうことがあるので、紹介することで薬局の経営面をサポートできるのであればどんどん紹介していきたいと思ってます。

今日のディスカッションのトピックについては一通りお話できたかな…というところで、畔原さん、締めの一言をお願いします。

:ぜひ薬剤師を頼っていただきたい!というのが率直な思いです。
実力のある薬剤師も本当に多いので、そういう薬剤師にもっと外で活躍してほしいし、外に出るきっかけを作っていただきたいな…と思っています。
小さなことでも良いのでまずは連携・連絡していただく、そういうところが大事だと思うので、薬局側からももっと積極的にケアマネさんと連携していこうと思います。
その際はぜひ、よろしくお願いします!

:こういう薬剤師さんは非常に貴重なので…ぜひ皆さんこの機会に知っていただいて、また、皆さんの周りで「この薬剤師さんいいよ!」という方がいらしたらぜひ僕らにも教えてください、良いチームを一緒に作っていきましょう。

本日はありがとうございました。

会場展示ブースの紹介

当日は会場内に展示ブースが設けられ、医療や介護の現場で役に立つ医療機器をご紹介しました。

トイレの介護負担を減らす排泄予測支援機器「D Free」

超音波センサーで膀胱の状態をモニタリングし、トイレのタイミングを事前にお知らせします。
https://dfree.biz/

D Free 株式会社 様よりご提供

スマホで診療が受けられる眼科医療機器

スマホに取り付けられるアタッチメントと専用アプリケーションを用いた画像ファイリングシステムで、遠隔診療・診断が可能です。
https://ouiinc.jp/product/

株式会社 OUI 様よりご提供

次回開催のお知らせ

エールのつながる夜会 Vol.11 は8月22日(木)です

ケースディスカッションを予定しており、ケースと参加者を募集中です。
参加者全員で日頃のあれこれをぶっちゃけられるディスカッションを展開する初めての試みなので、ぜひご参加ください。


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