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【勉強会レポート 5】医療連携「退院調整について考える」

テーマ:医療連携 退院調整について考える
パネリスト:院長・当院連携室 寺尾・福寿会 前田看護師 
開催日:2023年5月18日


どうして医療連携が必要なの?

クリニックと病院との課題を事前に解消したい。

病院側の意見
クリニックの技量の差が大きく、紹介できるのかがわからない
在宅側の意見
病院で本人・ご家族に、ICがしっかりされておらず曖昧な方針になっている

寺尾:
実際入院するとどのような形で退院支援が行われるのですか?

前田さん:
福寿会足立総合病院では入院したらすぐに入院前のADL状況、在宅のサービスを問診票に記載、3日以内にスクリーニング表を作成し退院支援が必要なのか確認します。特に自宅での介護力の問題などを検討します。
退院支援では病棟側と連携室側とでカンファレンスを行って内容を共有します。退院支援ナースは入院時点の意思決定在宅での介護サービスを受けているか、さらに医師やリハビリ、看護師、相談員などでカンファレンスを行い退院の目処を立てていきます。
特に連携室で行うことは退院に繋げる役割を担っています。介護サービスが必要な場合、介護保険の申請を行うのか確認しています。家族、本人の意思決定がなければ手続きできないので、極力介護保険の申請を促すようにしていますが、自宅に帰るのか施設に行くのかによっても変わってきますね。

寺尾:
在宅だと病院の動きがわからないです。多岐にわたって様々なケースがあると思いますが退院平均の日数はどのくらいでしょうか?

前田さん:
一般的には急性期14日目処に退院支援を行っています。

寺尾:
当院では医療連携担当をつくり4つの役割があります。

  1. 地域の関係事業所との連絡・調整

  2. 営業・広報活動

  3. 病院受診調整

  4. 在宅患者受け入れ調整

可能ならACPの確認の為、退院前カンファレンスに参加します。
その時患者様本人がいて聞きにくい時もあります。


事例検討

症例:83歳男性 腎盂癌の末期

病気の状況と経過

ADLは自立
予後1〜2ヶ月
介護者は奥様
緩和的支持的療法(ベストサポーティブケア:BSC)の方針
病院緩和ケア病棟へのエントリーや予後説明を本人が受けられているが、在宅療養のイメージがつかないまま退院

問題点:病院と本人、家族との理解の相違があった

病院:
「BSCなのであとは緩和ケアで良いと思います。」
ご本人の気持ち
「自宅に戻って体調を戻し、抗がん剤 次のクールを受けたかった。」
奥様:
「緩和ケアの段階に移行していることは理解していると思う。」
本人は今後起こることが予測できず介護保険の申請も今後考えるとの返答でした。

ある日、無尿の状態で緊急往診。
腎不全が進行して尿管ステントなどの処置が必要だが、処置をしても僅かに予後が伸びる程度。病院側は方針を考えると受け入れができないと難色。
しかしご本人の希望があり病院に救急搬送となり、入院。
処置を行い症状改善。

病状の説明と介護保険の申請をお願いしたいと連携室にお願いしましたが、入院の翌日退院となってしまいました。ご本人の受け止めが不十分でしたが、奥様の不安があり訪問看護導入に繋げることはできました。今後はご本人との関係性を構築しつつ最期の方針を決めようということになりました。

しかし数日後、再度腎不全悪化。

病気の進行、自宅でも苦痛を取ることは可能と説明したが、ご本人が無尿以外の自覚症状がなく病院での治療を望んだため、再度救急搬送。そのまま病院で逝去された。

課題

  • 緩和ケアまでエントリーしていたのに2度の救急搬送となってしまった。自宅で良い時間を過ごしてもらうために調整段階でできることはなかったのか。

  • 病状に比べて本人の体調が良い場合、どのように介護サービスを提案するべきなのか

ディスカッション

前田さん:
病院での退院前カンファレンスの実施はされていますか?

寺尾:
今回は退院日が既に決まっており、介護保険の申請もされていませんでした。次の退院時も訪問看護のサービス調整が急になってしまいました。

前田さん:
もし連携室の対応として私なら最期の予後予測はできたので、病院側としては家族を巻き込んでご家族に先に説明し申請にいってきてもらいますかね。介護保険の申請許可が出るまでには1ヶ月かかりますから。
本来はあまり良くないですが、本人にはいよいよというところで説明したケースもあります。

院長:
BSCが決まった時点で担当医は自分の治療は終了したと思ってしまいます。
ステント交換を自分で交換できれば良かったですが、在宅では難しく病院の処置になってしまいます。
1回目の搬送の時、今後も閉塞が予想されたので腎ろうを薦めましたが、病院側としては、ステントの方が処置が簡単でそちらを選ばれてしまいました。なかなか大きな病院だと連携が難しいですね。化学療法後の末期癌の方は進行が早いので、スピード感を持って対応するべきでしたね。

寺尾:
1ヶ月以内で症状が進んでしました。予想よりも早い状況でした。

院長:
できれば入院中に倫理的なカンファレンスを行う機会を作った方が良いかなと思います。実際には自宅に戻られてからでは難しいので。

前田さん:
インフォムードコンセント投げかける、院内での共有という問題もあったのではと思います。


アンケート結果の共有

薬局より

  • 病院からの退院処方が不明のため準備が難しい。在庫の関係で事前準備もあるので。

  • 病院と在宅での内容が異なるので困ってしまう。

院長:
初診時残薬を数えるのは大変で、事前に薬局に連絡できるといいですね。

前田さん:
病院では事前に退院時何日分薬が必要か連絡を取ることが多いです。
自宅の残薬まで把握できずそこがこれからの問題だと思います。

訪問看護ステーションより

  • 退院の連絡がない。

  • 急な退院で特別訪問看護指示だけ出されてあとはよろしくというケースがあった。

  • 何度も連携室に連絡するのは迷惑になりそうで躊躇してしまう。

  • 患者情報が退院ギリギリまでわからなかった。

  • きちんと説明を受けておらず対応に困った。

  • 介護保険の申請がされておらず、自宅療養環境が不十分だった。

寺尾:
確かに医療連携室は忙しそうで連絡しづらいですね。
自宅環境療養不十分だったり、退院連絡がないことも結構ありますね。

前田さん:
病院では沢山の患者様がいて業務が忙しく、退院日の連絡が漏れてしまうこともあります。また、こちらも在宅チームのどこに連絡すればいいのか悩んでしまう。迷惑なことはないので、ぜひ連絡をください。コミュニケーションにもつながるので。

寺尾:
私たちも連絡を後にしようか迷うことがあります。

前田さん:
病院側も在宅のイメージが湧かないのだと思います。
相手にもよりますがコミュニケーションにもなりますので患者様のために連絡してください。

ケアマネージャーより

  • MSW連絡窓口がない。連携室がない病院もある。

  • 在宅を知らない看護師さんもいて、退院間近に連絡があり調整にかけ回ることがあった。

  • 土日に退院が決まることもある。

寺尾:
家族の仕事の都合で土日退院が決まることもありますよね。

前田さん:
MSW配置がない時は病院の師長に連絡をお願いします。
病院側で介入が必要ないと思われている場合はスクリーニングされていないこともあります。ケアマネさんから連絡をいただけると解決するのではと思います。
個人情報のところは病院によって差があると思います。土日退院は家族の都合を優先することがありますね。
病院の看護師さんが在宅を知らない事が多く、連携が難しいですよね。コロナ禍の対応も緩和されたのでぜひ病棟に足を運んでいただき指導していただければと思います。

病院より

  • 緊急入院を受けた時、介護サービスの状況やキーパソンのことなど、ケアマネが把握していないこともある。

  • ADL問題ないが在宅チーム側から退院を拒否されてしまうこともある。

  • 本人のキャラクターなどもありベットコントロールがあるがうまく進まないこともある。

前田さん:
本人のキャラクターが濃すぎて、周りはとにかく入院していて欲しい、本人はとにかく帰りたい、急性期の病院も自宅に返したい、そんなケースありますよね。そもそも在宅側がチームを組んで自宅に帰れない場合もあります。

院長:
帰れないケースありますね。施設に入るのかも含めて拒否するのではなく次のステップを用意する必要があると思います。

寺尾:
我々としては病院の連携室がなんとかしてくれるのではと思ってしまいます。

前田さん:
ご本人が将来どうしたいのか確認してくださると助かります。

院長:
入院時あった方が良い情報などありますか?
最近は、診療情報提供書に在宅チームの各事業所の情報なども載せています。

前田さん:
やはり意思決定のところが重要です。他にキーパーソンや介護力、経済力もわかると助かります。施設の費用が月20万かかるところもあり、経済力が分かればそこを考えて探すことができます。
やっぱり在宅が1番費用がかからないですね。

まとめ

・本人、家族が在宅に戻って本当はどうしたいのかを把握
・病院との連携をスムーズにするための工夫
・将来的には入院中の様子も覗けるようになると良い

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