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【勉強会レポート 6】尿道カテーテルの取り扱い

テーマ:尿道カテーテルの取り扱い
講師:院長 青木
開催日:2023年7月20日


尿道カテーテルの適応

尿道カテーテルは膀胱内の尿を体外に出すために用いられます。
通常は手術の時など短期的に利用するものですが、やむをえず長期で使用する場合があります。それは以下のとおりです。

尿道カテーテルの適応

  1. 残尿量の増加(一般的には100mL以上)

  2. 腎機能の悪化

  3. 尿路感染症の反復

このように排尿に問題がある場合にカテーテルを使用することになります。
自己導尿や膀胱ろうなどの方法もありますが、高齢者の場合多くは合併症などの関係でカテーテル留置で経過を見ることが多いです。

尿道カテーテルの利点と欠点

排尿管理をカテーテルで行う場合は自己導尿、膀胱ろう、尿道カテーテルの3つの方法があります。
尿道カテーテルの特徴は以下の通り考えられます。
利点:設置が簡単、比較的受容されやすい
欠点:感染や合併症のリスクが高い

合併症に関してはトラブルシューティングの項に記載します。

尿道カテーテルにかかるの費用

カテーテルに関しては追加の費用がかかります。
主に手技料(設置するための手技にかかる費用)と材料費(カテーテル自体の費用)がかかりますが、いずれも健康保険で決められた価格が設定されています。
一方でカテーテルの材料費は市場動向によって変動するので、多くは赤字(クリニックの持ち出し)になってしまっています。
また訪問診療では管理費にカテーテルの手技料も含まれているため追加で算定ができません。(ただしカテーテル留置中は重症加算が算定可能です)

尿道カテーテルの管理方法

どのカテーテルが良いのか

使用する尿道カテーテルには材質や形状などでいくつか種類があります。
材質:ラテックス、シリコン、銀コーティングなど
形状:フォーリー、チーマン(先端が曲がったもの)、先孔(先端が開口しているカテーテル)、3Way(内腔が3つに分かれている)など

どれを使用しても合併症などのリスクは変わりありません。むしろ適切な管理と尿量の維持が最も重要です。
カテーテルのサイズは14〜16Frが適切です。

カテーテルの挿入方法

カテーテルは可能な限り無菌での操作が望まれます。それは在宅でも同様ですが、在宅の環境では患者さんのベッドなどを利用するので汚染されないように注意が必要です。
廃棄物の取り扱いも気をつけて管理を行います。
消毒液はアルコール以外であればどれでも構いません。閉鎖式キットに入っているものを使用すれば良いでしょう。基本綿球が3個入っているので、自分は2回消毒して、残りの1個は残しておくようにしています。
挿入は滅菌手袋でも鑷子でも構いません。取り扱いのしやすい方で良いでしょう。
挿入後は尿が流れ出てくることを必ず確認します。

男性の場合

男性では尿道口が視認しやすいので、入れ間違うことはないと思います。ただ包茎の場合は一度包皮を剥いて確実に尿道口を確認しましょう。

一番のポイントは垂直に陰茎を引っ張ることです。しっかりと引っ張らないと尿道がたわんでしまい尿道損傷のリスクになります。
特に前立腺の手前で一度抵抗を感じますので、そこでゆっくりと力を入れて挿入していきます。
尿の流出が確認できたらさらに5cm程度挿入して固定水を注入します。

女性の場合

女性のポイントは尿道口を確認することです。
十分に足を開脚してもらい、尿道口を確認しましょう。

膣が萎縮してしまっていると膣側に尿道口が偏位してしまっていることがよくあります。その場合は膣に指を入れて腹側に押すことで尿道口が見えやすくなります。仮に見えなくても膣に指が挿入されているとカテーテルが膣に入ってしまうことはありません。

ひとりで処置する場合

ひとりで処置する場合は、より事前準備が大事です。
滅菌手袋をつけてしまうと触れるところが限られてしまうので、先に場を作っておく必要があります。
挿入時はカテーテルが挿入しやすいように、小指に挟んで挿入すると良いでしょう。

管理のポイント

管理のポイントは蓄尿バッグの管理とカテーテルの固定です。

蓄尿バックの管理方法
蓄尿バッグはカテーテルの交換と一緒に交換します。
その間は同じものを使用します。バッグ内に菌が繁殖する可能性があるので、床につかないように注意してください。
最近は低床用のバッグもあります。

カテーテルの固定方法
カテーテルは基本は腹部に固定するようにします。特に男性では尿道裂傷を起こしてしまうリスクが高いため注意が必要です。一方女性は管理しやすい場所に固定して構いません。

カテーテルプラグについて

長期で留置する場合はカテーテルプラグを使用する場合もあります。
バッグがないので生活を妨げることが少なくなります。リハビリの時は助かるとおっしゃられる方が多いです。
一方で感染のリスクが高くなるので、きちんと管理ができる人に限られます。
あと費用も自費で購入いただく必要があります。

尿道カテーテルのトラブルシューティング

挿入できない時

女性の場合は先ほどの挿入の項で解説しました。
男性の場合は特に尿道狭窄と偽尿道に注意が必要です。
一度偽尿道ができてしまうと挿入が難しくなってしまいます。ゆっくりと挿入することで偽尿道を作るリスクを減らすことができます。また折れ曲がってしまう場合などはサイズを1サイズアップすることで挿入できることがあります。
前立腺肥大症の場合はほとんどの場合で挿入が可能ですが、出血すると後で厄介なので、より愛護的に挿入することが良いと思います。

これでも入らない場合は膀胱鏡での挿入が必要になるので、病院の泌尿器科へ紹介を考えてください。

血尿が出た時

カテーテルの影響で血尿が出る場合があります。多くは自然に止血されますが、抗凝固薬などを服用しているとなかなか止まらないこともあります。
ほとんどは貧血になる程出血することは稀です。

まずは水分の摂取と安静で経過を見て、改善が悪い場合や感染が疑われる場合は止血剤や抗菌薬の投与が必要になります。
どうしても出血が止まらない場合は腫瘍や腎臓からの出血も可能性があるため一度画像検査が必要になってきます。
前立腺からの出血は難渋することもあります。感染や閉塞のトラブルがなければ気長に止まるのを待つのが良いでしょう。

カテーテルの閉塞

カテーテルは異物のため必ず閉塞します。
頻回に交換しても予防につながるとは限らないため、感染症に進展しなければそれで良いと考えて対応しましょう。

閉塞なく定期的な交換で対応できている方が良いですが、残念ながら閉塞してしまった場合は交換が必要です。
往診まで時間がかかる場合もあるため、まずはミルキングなどで流出を維持しましょう。閉塞時の膀胱洗浄は膀胱内の細菌が露出した血管などから侵入するリスクにつながるため、無理に行う必要はないと考えます。ただどうしても実施する必要がある場合は、ゆっくり愛護的に行いましょう。
まずは20mL程度注入してみて、確認しながら実施してください。

頻回に閉塞する場合

すぐに閉塞してしまう場合は何か原因があると考えられます。
結晶の成分や脱落した膀胱粘膜がカテーテルの孔を塞いでしまいます。膀胱結石などができていることが多々ありますが、手術適応はなく経過観察の指示になることがほとんどです。

長期で留置されていると閉塞する頻度が増えます。特に寝たきりの方は膀胱内での対流がおこりづらく、尿量も少ないためリスクが高い状況です。
やはりカテーテルがなくて良いのであればその方が良いですね。一度抜去してみることや自己導尿ができないかを考えても良いと思います。
できるだけ動いて、ADLを維持できることが予防につながります。

尿が漏れる場合

閉塞に伴い尿がカテーテル脇から漏れることも増えます。
閉塞での尿もれはカテーテルの交換が必要ですが、中にはカテーテルが折れてしまっていたり、膀胱のテネスムスが原因のこともあります。

カテーテル関連尿路感染症について

カテーテル留置中は尿路感染のリスクが高くなります。細菌尿はほぼ必発なので、治療は熱が出てから行うことで十分です。
予防的な抗菌剤の使用は耐性菌の助長につながります。またスクリーニング目的の培養検査も不要です。実際の起炎菌になっていない場合もあるためです。

パープルバック症候群に関して

熱は出ていなくても膀胱や蓄尿バッグ内での細菌の繁殖でカテーテルやバッグが変色してしまうことがあります。パープルバッグ症候群と呼ばれます。
これは体内の細菌が関連しているため、便秘の管理と尿量の維持が予防につながります。
これも長くカテーテルが入っている方がなりやすいです。どうしても改善しない場合はニオイをとる袋などを使って対応しています。

カテーテルの抜去に関して

このようにできればカテーテルがなくて済むならその方が望ましいです。
特に男性は多くは前立腺肥大症が関与しているので、薬や手術などの選択肢が女性に比べると多く、抜去できる可能性が高いです。
いずれにしろ希望があれば一度抜去してみることをお勧めします。
ダメだったら改めて挿入すればいいですので。

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