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ある日突然の老人ホーム探訪記④

脳梗塞から約2ヵ月で退院の日を迎えた。
当日、迎えに行くとそこには倒れた日の汚い服装の父が待っていた。
前回の面会時に新品のスウェット上下とフリースを差し入れていたにもかかわらず、それを着ていない。
 
「そんな汚い服で車に乗せられない」と私が言えば
「汚くない!きれいだ!!」と言い張る父。
看護師に頼んで着替えさせてもらったが、上しか着ていない。
「下も着替えてくれ!汚いよ!!」
「だから汚くないって!」
「施設にそんな汚い恰好で連れていけない」
「…着替えましょう」と看護師。
 
渋々着替えて退院手続きをして1時間。
やっと施設に向けて出発した。
 
その道中「タバコが吸いたい。酒飲みたい」と言い続けた。
途中、昼食をとらせつつタバコを吸わせて、要るものがあるというのでコンビニに寄ったが、タバコを買おうとしてお金を払うことができない。
手に持った硬貨を出したり、入れたり…。
後ろにお客が並んでいたので、見かねて横から払った。
 
トイレを相方に連れてってもらったが、ちゃんとできず手におしっこがたくさんかかり、まともにトイレができないそうだ。
そしてその手を洗わずに行ってしまう。
 
手続きに訪れた市役所でも「俺には関係ない」とばかりに横柄で、手続きや大事な話は全て私に丸投げ。何の手続きをしているのか話しても「ふーん」と興味なし。
私の怒りメーターはとっくに振り切れていた。
 
清潔にする。
お金の管理。
思考力。
全てがダメになっていた。
 
施設は3食温かい食事が出て、週2回お風呂に入れる。
自由にタバコが吸えて、買物にも「無料」で連れて行ってくれる(通常付き添いは有料です)。
特に決まったレクリエーションも無いので、自由に過ごすことができる。
 
だからといって全て自由を認めるわけにはいかない。
持たせた財布には月3000円を入れ、残りは施設の支払いと返済しなければいけない支払いに充てる。
 
今まで好き勝手にやって貯金や私が家に入れていたお金も使い果たしたのだから、今後は勝手気ままにやらせられない。
周囲に多大な迷惑と嫌な思いをたくさんさせたのだから。
 
おとなしく晩年を過ごしてもらいたい。
 

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