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老人の戯言

老人ホームに入って3ヶ月。
私は毒父の借金返済に追われていた。
何ヵ所も返さねばならず、返済計画を練って片っ端から片づけていた。

そんな中、政府から「低所得者給付金」というものが支給された。

もちろん借金返済に充てた。
少しでも早く返済できるチャンスを逃すわけがない。

しかし…1本の電話。
知らない携帯番号から何度も何度も着信があった。
折り返しても出ない。
怪しげな携帯番号…。

あたすは出るのが怖かったので、また着信があったとき相方に出てもらった。

するとそれは毒父からの電話だった。

「給付金が入っただろう?小遣いをくれ」

もう…疲れた…
あたすがどれだけ頭を悩ませて返済をしてきたことか…。
そのお陰もあって借金先はあと1件…。
もういいだろう…。
あとは自分でやってくれ…。

老人ホームの費用、借金返済…
もう自分でやってもらおう。

それから…特別養護老人ホームのお話はお断りしよう。
そんな性格、人間性では集団生活はできない。
相方に肩身の狭い思いはさせてはいけない。

毒父と対決しに老人ホームへ向かった。

最初に私が持っていた現金を渡そうと万券を数枚封筒からだすと…

ガッツポーズをした。

でもそれは老人ホームの支払いに充てなければいけないお金。

このお金はお小遣いではないこと
借金先はあと1件なので自分で相手方と話して返済方法を相談すること
面談した特別養護老人ホームは入れないことになった
これからは自分で何でもするように

これだけを伝えてお小遣いは1円も渡さなかったら、もう用は無いとばかりに「これまでありがとうございました」と棒読みのセリフを吐いてきた。

あたすはそんなのスルーして老人ホームの施設長にこれからの支払いのことと銀行の暗証番号を教えて、入金があったらすぐに料金を徴収してほしい旨伝えてとっとと帰宅した。

それから連絡はない

…というかその怪しげな携帯番号はブロックした。
これ以上、関わるのは自分自身によくない。

温かい部屋と食事と見守り、身の回りの物を揃えてやって、ほとんどの借金を片付けたんだ。
もうあたすに用は無いだろう。

あたすの中では「親はいない」と思うことにした。
これからは自分のこと、相方のこと、仕事のこと、を大切にしていきたいと思う。


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