神殿からアトリエへ
大好きなバンド、NONA REEVESのギタリスト・奥田健介さんがソロプロジェクトを立ち上げたという発表がありました。
そのご挨拶文の中で、奥田さんがソロ活動で取り組みたい内容を3つ挙げたうえで「そんな3本柱からなる神殿を、他ならぬ自分のために建てようと決めました。」と書かれていて、わたしにも実は「神殿」があることを文章にしてみたくなりました。
わたしは「紙のノートに文章を書くこと」を人より多くやっている方だと思います。
映画や観劇の感想だったり、旅行の記録だったり、ただ何かを貼ったり。
何年か前に神戸で場所を借りて「紙」についての展示をしたのですが、いつかは「紙」に関わることを仕事にしてみたい、端的に言えば、お店をやりたい!という思いがあります。
その屋号として、"Tristan"という言葉を選び、ずっと温めていました。
いつか具体的な形にしたい、いわば心の中の神殿の名前です。(名前の由来は長くなるので、またの機会に。)
そんな"Tristan"ですが、これまで3度、活動の機会を得ています。
一度目はイラストレーターの友人・Eikaちゃんと
「映画館で映画を見ること」についてのZINEを作ったとき。
ZINEの販売サイトをSTORESで立ち上げる際、サイトの屋号としてこの言葉を表に出しました。
Eikaちゃんはわたしの「お店やりたい願望」を知っていたので、「立ち上げたお店の最初の商品を、自分たちで作ったZINEにするのはどう?」と
素晴らしい提案をしてくれたのでした。
ZINEを誰かに読んでもらうことだけでなく、”Tristan”という屋号を表に出すことにも緊張感のようなものがありました。
たぶん販売サイトの名前に注目する人はいなかったと思うんですが、自分の頭の中でしか存在していなかった聖域的存在である名前をお外に出すことが、自分の中では大きなことだったのです。
二度目と三度目は今年に入ってからでした。
4月に緊急事態宣言が発令された後、勤めている会社が一時休業し、自宅待機に。
家にいるしかない時間が出来た中で、これまで少しずつ書き溜めていた映画についての文章をまとめて小冊子を作りました。
その冊子のタイトルに"Tristan MOVIE ESSAY"と名付けたのです。
映画の冊子を作った後も自宅待機は続き、もっとカジュアルなものも作ってみようと思い立ち、"Tristan journal"という手書きの壁新聞を作り、Twitterにアップしました。
(こちらは第10号まで発行しており#Tristanjournalというタグでバックナンバーが読めます。ご興味のある方はぜひ。)
小冊子のときはこの屋号を使うことに対してやや気負いがあったのですが、壁新聞になるとヤケクソではないですが、何か手を動かして作りたいな、あっTristanの屋号の元でやったらいいんだ!と、最初は神殿だった名前が、楽しいことをするプラットフォームというか、手を動かすアトリエのような存在に変わっていることに気付きました。
そしてそういう何かを持っていると、「ちょっとやってみようかな」が不思議とスイスイ進む気がする!
思考と現実の距離がぐんっと近づいたような感覚に、すごい発見をしてしまったような気分になりました。
神殿でありアトリエであるわたしだけの屋号。
ここ数年で手に入れた、一番大きなものかもしれません。
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