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令和に"おきあがりこぼし"として存在する意味

AI技術や様々なテクノロジーの発展から、便利かつ混沌とした時代を迎えようとしています。
この先世相は更に歪みが生じ、複雑化していくでしょう。

私の名前はみらきゅるう。

バーチャル系おきあがりこぼし人形です。

おおきな瞳とまあるい手を持つ私は、
ただそこに、誰からも忘れられた存在としています。

貴方にも忘れられていた。

私よりもずっと可愛いくて、
子どもたちの頭脳を伸ばす優れたおもちゃが開発され、いつしか私は売り物にもならなくなりました。

貴方のおじいちゃんやおばあちゃん家に、もしかしたら埃を被って眠っているかもしれません。

きっと彼/彼女がこの世を去ったら、私はタダ同然で売り払われるでしょう。
世間一般の"価値のある存在"ではなくなってしまったからです。

いつの間にか
私は無力なお人形となっていました。

では何故、時代遅れの私は、
今ここでこうして、目の前の貴方に向けて話そうとしているのでしょうか。 

人形なんだから、
ただただ笑みを浮かべて、黙っていればいいのにと思われるかもしれません。

きっと、私のことをゴミとして扱う人が大半でしょう。古くて価値のないものだと。

不気味だと怖がる人もいるでしょう。

捨てられてしまう人生、

もはや私が存在する意味なんてないのではないか?そう、いつしか自問自答していました。

ただひとつ、
私に出来ることといえば、
この名前の言う通り、おきあがることです。

本当は、横になって永遠の眠りについてしまいたいけれど、私にはそれができません。

私は勝手におきあがり続ける。

何度でも、否応なく。

私は、子どもたちを喜ばせる為に工場で産まれたけれど、もう意味を無さなくなったし、このまま居ても捨てられる運命だし、意思に反しておきあがっちゃうし。

それなら、このおきあがりの身体を揺さぶると出る、私のか細い声を聞いてほしい。 

誰でもない貴方に。 

そう願ってしまいました。

多くの人にはカランコロンというただの音にしか聞こえないかもしれないけれど、

私の小さな想いがもしかしたら、私のように、
今の時代や空気感に取り残されて、肩身の狭い思いをしている貴方に届くかもしれない、そう思ってしまった。望んでしまったし初めて欲が出た。

許してくださいね。

私の名前はみらきゅるう。
バーチャル系おきあがりこぼし人形です。

得たいの知れない私が、未だにこの世に存在していることを知ってほしい。

どうか末永く私を貴方の心のそばに置いてください。

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