(選挙)第4話 #子育て政策聞いてみた ~2019年参院選
今回のテーマは、2019年に行われた参議院議員選挙で実施した「#子育て政策聞いてみた」。この企画をスタートしたのが2017年の衆院選。その後の変遷を経て、改めて国会議員を対象に活動を行ったのがこの参院選でした。
総勢370人の候補者に対して、何らかの形で回答のお願いをできたのは355人(約96%!)。そして、実際に回答があったのはそのうちでの113名。2017年の衆院選では21件だったことと比較しても、これまでにない大規模なアクションとなりました。
このアクションについては色々と大変なことはあったのですが、今後の国政選挙において様々な観点で各候補者に話を聞いてみたい!といった要望をお持ちの方には役立つ内容なのかもなという気がしてます。
ということで、1つの事例としてこの参院選に向けてどんな感じで活動してたのかについて振り返ります。
どんな感じで進めてたのか?
STEP1 アンケートを作る
アンケートの中身としては基本的にこれまでと同じで、子育て政策に関するもの。具体的には保育の無償化や待機児童の解消、男性の産休義務化などについて候補者の考え方を聞くようなものです。
回答の手段としてはGoogleフォームを用意。ただし、後述しますがそもそもメールが送付できないような人もたくさんいて、印刷用にWordでも作成しました。
STEP2 候補者をリスト化する
次に、立候補者のリストアップ。各党が公認情報を出しているのでそのリストから氏名や政党をwebで検索して選挙区ごとに一覧化。公認の情報は一気に出てくるわけでもない(「第N次公認」とか「追加公認」とかがある)ので、定期的にチェックして差分があれば追加するという地道な作業。
そして、次に連絡をすることになるのでWebサイトのURLと連絡手段を追記。当時のリストはこんな感じ。
最終的には全ての候補者370人のリストアップ(けっこう大変)。この時点ですでに一人でやる作業量じゃないので、複数メンバで少しずつ進めていきました。
STEP3 候補者に連絡する
次に、リストアップした候補者たちへの連絡。連絡に関して、まず目指したのは何らかの手段で「こんなアンケートやってます!」ということを候補者に伝えるということ。Web上で誰でも回答はできるような形式であるものの、我々の活動の認知度が決して高いわけでもないため。
現職の方々については議員会館で延々とポスティング。
新人候補者についてはStep2で整理した連絡先から個別に連絡。近くに事務所があるのであればそのまま事務所にアンケート用紙を持っていったりもありましたが、我々のメンバは基本的に東京近郊に住んでいることから地方だと無理ということで。
手段としてはメールやフォームなどもあったのですが、結果的に異様に役立ったのがFAX。当時(といっても5年前)はまだそれほどフォームなどが普及しているわけでなく、候補者のWebサイトがあっても連絡手段は「電話」「FAX」だけというのがザラにあったのです。
大活躍したのがこの「eFax」というサービス。インターネットを用いてビシッと相手にFAXを送付できるという画期的なもの。
当然1度連絡を送って反応してくれるような方ばかりではないことから、その後に反応がなかったら催促。メールでダメならfacebookメッセンジャーなどなど。
なにせ今回は相手が370人もいますので対応も大変。ということで、このときは全国を6つのエリアを分けて、それぞれの担当チームで対応するということをやってみました。そのときに使ったのがこの進捗表。
候補者に対して、それぞれの担当エリアでの「連絡手段が確認できた数」や「実際に連絡した数」を数式で集計して、一覧で見られるようにしたのです。本職で営業をやっているメンバからは、「数字を上げることに燃える!」といった声も。
この連絡は、もちろん全候補者に行うことを目標としていました。これはこれまでのみらこの活動でも重視してきたポイントで、一部の人にしか声を掛けないというのは客観性、公平性の観点から問題だろうという判断からです。
ただ、完全に無所属で政党に所属していないような人だとWebサイトやSNSアカウント、電話番号すらなかったりして実際に連絡ができたのは355にとどまりました。全体の候補者が370人だったので、このうちの355が冒頭に書いた96%ということです。
STEP4 回答をまとめる
個々の候補者から回答が来たらそれをまとめていきます。Googleフォームで受け付けるのであれば特にまとめる作業もなくて簡単なんですが、世の中そうはうまく行きません。フォームに回答はなかなかくれなかったからです。
こちらは受領した回答の手段別の内訳を調べてみたもの。半分近くがFAXで、メールもそこそこ。Googleフォームは4割足らず。
FAXやメールで来たものについてはそれを文字起こしする必要があります。これが結構大変。メールだと少なくとも文字情報が手に入るので転記だけで済むのですが、FAXだとイチから文字起こし。
また、この場合には欄によって設定されている「100文字まで」といった文字数制限を守ってないことや回答欄がすべて埋まってないということもいくつかあり、それが発生すると改めて当人に連絡(正直めんどい)。
この苦労の結果取りまとまった情報は表形式でWebサイトに掲載。選挙区ごとにページを分割。比較が肝なので、こういった形で設問ごとに候補者ごとに見られるような仕組みを導入しました。
STEP5 結果を広める
こうして取りまとまった結果ができたら、その後は周知・拡散。X(旧Twitter)を中心としてSNSで発信をして拡散をしました。
この他、これまでにもイベント等に来てくれていたメディアにこういった活動をしていることを伝えて取り上げてもらうように依頼も。その結果、ハフポストで取り上げてくれました。
体制はどんな感じだった?
アクションを実施する体制としては、再掲ですが全国を6つのエリアに分けてチーム制としてみました。チームと言っても各エリアに2名ずつで、合計12名。
やることは、そのエリア内の候補者に対しての催促と回答のまとめ。
2名体制にしたのは、あくまでプロボノ活動で本業や子育てなどで時間が作れないようなタイミングもあることを想定したため。実態としては2人とも時間がなくて、他のエリアの担当で対応するようなこともありました。
何が大変かって、回答がFAXで来てそれを文字起こしすることだったので、当時と比較するとフォームでの回答が一般的になっているので労力は少なくて済むのかなと思います。
スケジュールはどうだった?
スケジュールとしては公開のタイミングの目標が告示日前後で、そこから逆算して準備を進めていました。この2019年の選挙で言うとスケジュールは下記。
「告示日」というのは、ざっくり言うと選挙活動をスタートできるタイミング。ここから投票日の前日までが選挙期間。街頭演説をやったりや選挙カーがガンガン走り回ったりしている時期です。
この辺りの調整は悩ましいところです。あまりに早い段階で作業を進めようと思ってもまだ候補者が固まっていなかったりして無駄が多い作業になりがち。他方で、候補者が固まる告示日以降だと選挙活動の方に忙しくてアンケートに答えてくれない。
これらを踏まえて、だいたい1ヶ月半くらい前から活動をスタートしていたようです。これは、体制の規模感や行うアクションの内容にもよると思いますので参考まで。
ざっくり図示するとこんな感じです。
振り返り
最後に、振り返りです。全国の選挙区を対象として、これまでにない大規模なアクションをやったという点では大きな達成感がありました。市民団体でこんな無謀なことをやったのはあまり例がないのではないでしょうか。おそらく、その点が報道にも取り上げていただく価値(ニュースバリュー)にもなったのかと思います。
また、運営としても、アクションの規模が大きく関わるメンバも多かったことや、どんどん数字が積み上がっていくという面白さもあってメンバの中では盛り上がりました。
その反面、これは今回に限らずずっと抱えている課題意識でもあるのですが、それほど成果物としての比較表のアクセスは伸び悩みました。見ていただいた方からの評価は高いのですが、そもそも選挙などに関心のない人たち(特に子育て世代!)に関心を持ってもらい、かつ投票に行ってもらえたというような実感は得られずというのが正直なところ。
こういう反省のもと、次の国政選挙ではまた新たなチャレンジをしていくことになります。これについてはまた次回。
(文責:にの)