検証:AIはMTGのカード概要からどのようなカードイラストを作るのか?
概要
Wizards of the coastはMTGのカードイラストをアーティストに発注する際、アート概要というものを提示してイラストの方向性を指示しているらしい。
今回の試みは、このアート概要をAIに食わせるとどのようなカードイラストが出てくるのかを見てみようというものである。
検証には以下を使用する。
1.AI craiyon
フリーで公開されているAI。
英語で呪文を詠唱することでイラストを生成する。
人間の顔を描くのが苦手。
2.アート概要を「濫用」する
2015年4月22日にmtg公式ウェブサイトに掲載されたコラム。
タルキール龍紀伝に収録されたカードの一部のアート概要とそのアートが掲載されている。
シルムガルの魔術師
この文章を全て英語に翻訳する必要があるが、幸いなことに本コラムには原文へのリンクが記されている。
早速リンク先の文章をコピーしてAIに食わせてみよう。
「人間の女性の魔術師」あたりはバッチリ読み込まれているようだ。
やたらドラゴンの意匠が強くなっているのは「DRAGONS OF TARKIR」のせいだろうか。
「彼女の両手の間には、若きオジュタイ種の龍の頭蓋骨が浮かんでいる」のあたりが完全に無視されており、このままではWizardsからリテイクを出されてしまう可能性が非常に高い。
YOUNG OJUTAI-BROOD DRAGONが上手く伝わっていなかった可能性があるので、趣旨とはズレるが原文に少し手を加えて「彼女の両手の間には頭蓋骨が浮かんでいる」くらいの文章で改めて食わせてみる。
(SKULL of のof以降を削除する)
やはり頭蓋骨は浮かばなかった。
というか画面のどこにも頭蓋骨が見当たらない。
もしかしたら頭蓋骨がセンシティブ設定などで描画されないようになっているのかもしれない。
と思ってskullだけ入れたらリアルな頭蓋骨がたくさん出てきて怖くて泣いてしまった。なんでなんだよ。
ちなみに上記のアート概要からJeff Simpson氏が描いたイラストがこちら。
シルムガル氏族の不気味な女魔術師の姿が見事に描かれている。
AIには解釈の難しかった頭蓋骨もちゃんと描かれているのが分かる。
また、青を基調とした背景に黒(紫)の魔力で青黒の氏族のカードであることを分かりやすくしている。
これは近年のMTGのカードでは良く見られる手法だが、AIのイラストも割と青黒っぽいものが多く見受けられるように思える。
シルムガル氏族を正しく青黒と理解したのだろうか。それともたまたまだろうか。
若年の識者
次の犠牲者サンプルはこのテキストだ。
早速英語版のサイトから取ってきたテキストを食わせてみよう。
「図書館にいるドラゴン」が大量に生成されてしまった。
一段落目の文章は主語がシルムガルになっているため、ここで取り違えたのかもしれない。
試しに「Show a MALE HUMAN〜」を一段落目に持ってきて再度食わせてみよう。
人間を出すことには成功したのだが、ギリシャ美術みたいになってしまった。
単純にキーワードを並び替えただけなので、もしかしたら意味がおかしくなってしまったのかもしれない。
私の英語力が低い為これ以上の深追いはやめておく。
ちなみに上記のアート概要を受けてCynthia Sheppard氏が描いたイラストがこれだ。
当たり前だが、ドラゴンではなく犠牲となる人間がメインのイラストとなっている。
刈り上げられた頭、豪華な装飾品、そして頭の切り取り線。華やかさと恐ろしさを兼ね備えた見事なイラストだ。
これならWizardsも納得してくれるだろう。
(製品化されているので納得したようだ)
死者を冒涜するもの
アート概要によるとかなり恐ろしいイラストとなるようだ。
早速食わせてみよう。
「橋とドラゴン」が生成されてしまった。
橋はいいのだが、ドラゴンはいただけない。
人もいないことはないのだが、どう見てもドラゴンが主役のイラストだ。
やはりDRAGONS OF TARKIRがいけないのだろうか?
思い切って、Settingの項目を丸々削ってみよう。
ナーガの女性、宮殿、橋などパーツはいい感じに描画されたのではないだろうか。
残念ながら切断された首を掲げることは出来なかった。
ただでさえ顔の描画が苦手なCraiyonには生首は荷が重かったのかもしれない。
上記のアート概要からVincent Proce氏が描いたイラストがこれである。
宮殿と橋はかなり控えめだが、切断された生首というインパクトのある要素をかなり強く前面に押し出している。
指示された要素の中から最も強く伝えるべきものを選択する、という判断はまだAIには難しいのだろうか。
ラクシャーサの墓呼び
ラクシャーサという概念をAIが正しく理解できるか見ものである。
さっそく食わせてみよう。
雰囲気はそれっぽいものができたのではないだろうか。
さすがにラクシャーサ(猫のデーモン) を描くのは難しかったようだが、砂漠、毛皮、ヒョウのような模様などパーツは押さえている。
相変わらずドラゴンの自己主張が激しいのはタルキール故仕方ないと割り切るべきだろう。
Jakub Kasper氏の描いたイラストがこれだ。
AIでは2人のゾンビが上手く描かれていなかったが、正しく描画されている。
また、指示に無かった部分としてゾンビとなっていない死体も描かれている。
これにより「ああ後ろの人たちも一度死んでるんだな」とか「もっとゾンビが増えそうだな」とか想像、理解が広がる効果をもたらしている。
まとめ
以上、4例を試したが、いずれもWizards of the coastの要件を満たすことはできなかった。
だが、一部分とはいえ描くことのできた部分もあったわけだ。
描かれた部分、描かれなかった部分の詠唱の差を調べることで、よりAIのコントロールの精度が上がる可能性がある。
今回は元のアート概要を極力崩さないこととしたが、アーティストのイラストに近づける為の詠唱を考えてみるのも面白いかもしれない。
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