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金融機関から融資を受けた後、やらなければいけないこと、やってはいけないこと

金融機関からの融資が決まり、手続きをして融資金が振込まれたら、まずはひと安心です。でも、それで終わりではありません。
融資を受けた後、やらなければいけないこと、やってはいけないことがあるのです。


1 約定通り遅れなく返済する


融資が実行された後、数週間後に「支払明細書」が送られてきます。毎月の支払日にいくら支払うのかが記載されています。
まずは自分の認識通りの返済金額であるか再確認しておきましょう。

毎月の返済日の前日には、返済金を引き落としできる残高があることを必ず確認する必要があります。もし不足するなら必ず前日中に入金してください。
金融機関は返済日の営業開始時刻よりも前に引き落とし作業を行うことが多いです。よって、営業開始後すぐに入金しても間に合わないというケースが少なくありません。そのようなときは金融機関に問い合わせして対処方法を相談しましょう。

金融機関は、融資金が回収できなくなることをもっとも恐れます。期日通りに返済できないことが多くなると、回収できなくなるリスクが高いと判断します。そうなると追加融資を申込んでも断られる可能性が高くなってしまいます。

約定通り返済することは当たり前と思われるでしょうが、信用をつけるもっとも有効で確実な方法といえるのです。

2 当初予定通りの使いみちを守る


融資審査のときに担当者が必ず使いみちを確認します。使いみち自由のフリーローンなどを除き、融資金は原則として予定通りに使わなければなりません。

①流用はNG


次の例のように、融資金を流用するとNGとなります。
・株式や不動産への投資に回すこと
・融資金をほかの会社や個人へ又貸しすること、社外流出させること。とくに自社への融資金を関連会社や役員あてに貸付するケースが見受けられます。
・ほかの金融機関の返済に充てること

②流用したらペナルティを科されることがある


金融機関によって、また流用の内容や程度によって異なりますが、ペナルティを科されるケースがあるので注意が必要です。

融資契約書に、予定の使いみち通りに融資金を使わなければならないことが明記されていることが根拠になります。

たとえば、日本政策金融公庫は、予定通りに使わなかった分について、一括完済や金利の引き上げを求めることがあります。
信用保証協会は、流用があった融資金を完済するまで新規の保証をしてくれなくなります。

③やむをえず流用する場合は事前に金融機関に相談が必要


当初予定より設備投資額が安く済んだとか、予定設備が購入できず代替設備に変更せざるをえなかったといったケースもありえます。

流用がやむをえない場合は、必ず事前に金融機関へ相談しましょう。
予定通りに使わない部分の一括完済を求められることもありますが、ペナルティにはなりません。今後の取引へ悪影響を及ぼすことを避けられます。

また、代替設備に妥当性があると判断されれば、問題視されることはまずありません。

融資金の目的が運転資金なら、商品仕入資金の予定が実際には諸経費支払へ充てたといった場合は問題とされることはありません。事業のための運転資金という範疇内であるからです。

また、教育ローンなら、A大学の予定だったが実際にはB大学へ入学したといった場合もOKです。
ただし、地元の国立大学の予定だったが、遠隔地の専門学校へ変更したといった場合は、使いみちの内容や金額が大きく変わります。金融機関へ相談しておいたほうが無難でしょう。

3 設備資金は決算書や確定申告書に正確に計上する


融資金を使って投資した設備は、固定資産台帳や貸借対照表に正確に記載したほうがよいです。
記載がなかったり、金額が著しく低く記載されていたりすると、実際は設備投資していないのではないかと疑われかねないからです。

4 金融機関から求められたことにはきちんと対応する


融資を受けた後、金融機関から書類などの提出を求められることがあります。

毎期の決算書または確定申告書なら、確定申告後すみやかに提出しましょう。必要に応じて、事業の現況を口頭説明しなければならない場合もあります。

融資の使いみちを確認するための領収書などの提出を求められるケースもあります。融資審査のときなどに提出物の内容や時期について事前に説明を受けることが多いです。
もし、金融機関から提出を求められなかったとしても、領収書などの融資金の使いみちを証明する資料は保管をおすすめします。
また、投資した設備の現物を金融機関が実際に見に来るケースもあります。

なお、金融機関にもノルマがあるので、協力的な姿勢を見せると、今後の取引に有利にはたらくこともあります。
ただし、リスクの高い金融商品の購入などは避けるべきです。断ったからといって取引に不利になることはありません。
無理をせず、あくまでできる範囲で協力することが大事です。

5 約定通りに返済できなくなったら早めに金融機関に相談する


ふだんから資金繰りをきちんと管理して、期日通りに遅れなく返済していくことが大事です。

とはいえ、事業がうまくいかなくなったり収入が減ったりなどして返済が難しくなることも起こりえます。

その場合の対応方法は二つあります。追加融資を受けるか、返済条件の変更(リスケ)を受けるかです。

追加融資は、資金繰りのための運転資金となるでしょうが、前向きでないため、金融機関は消極的になるのが事実です。返済中の既存融資を借替えて新規融資にまとめて返済額を減らすという方法をとる場合もあります。

返済が厳しい場合は、返済条件の変更(リスケ)をして、返済期間を延ばしたり、一定期間猶予したりすることが多いでしょう。

大事なのは金融機関へできるだけ早めに相談することです。返済条件の変更にも審査があります。相応の時間がかかるケースもあるので、今月から返済が困難となる前に、余裕をもって相談する必要があります。そのためにも数カ月先までの資金繰りをきちんと管理していくことが重要なのです。

なお、変更後の返済条件にしたがって、先行ききちんと返済できる見通しがあることを示さなければなりません。一時しのぎで返済が楽になっても、何カ月か後にまた返済が厳しくなるというのを金融機関は嫌います。

 

金融機関とは長く良好な関係を築くことが大事です。融資の使いみちを守り、返済をきちんとして実績をつけ、信用を高めるという地道な努力が将来役に立つことになるものです。

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