『幸せ者』

私は今とても幸せ者だ。
私にはとても素敵な彼氏がいる。
頭が良くて、優しくて、格好いい最高の彼氏。

私は男運がないものだとずっと思っていた。

高校2年生の時。
恋愛そのものに憧れを持っていたあの時の私は、バイト先の同い年の男の子に告白して付き合ったことがある。
バイトの他の男の子よりも話しやすい人だったから、選んでみたものの、実際付き合ってみると、お互いやっぱり違うとなって破局。

その3ヵ月後には、同じ学年の陸上部の男子に告白されて、付き合った。
爽やか系で、ファンが多かった男子だったから付き合ってすぐは本当に良かった。
まさに自慢の彼氏…見た目だけはね。
部活で忙しくてバイトしてないからっていつもデート代は私持ち。
そんなの有り得ないでしょ。
半年は我慢したけど無理になって破局。

大学のボランティアサークルで知り合った先輩に告白されて付き合ったこともある。
でもその先輩、サークルの他の女の子とも関係持ってたの。
よくあんな少人数のサークルでそんなことできたよね。ほんと最低だった。

他にもいくつかこんな最低な男達の話がある。
思い出す度に思う、私って本当に男運がない。

でもそれはもう過去の話。
最初にも言った通り、私には素敵な彼氏がいる。
職場の同期に誘われて行った婚活パーティーで出会った素敵な男性。
大学である研究をしてる教授。
詳しい研究内容は聞いたことないんだけどね。
歳はちょっと上だけど、話は合うし、デートのプランはいつも彼が考えてくれるし、お金も出してくれる。
そして何よりとても一途な人なの。

実は結婚を前提にお付き合いしていて、もう同棲してる。
彼の要求で、私は仕事を辞めて家事をすることになった。仕事にやりがいも目標もなかった私は、それでもよかった。
むしろ彼を身近で支えられることができて私は本当に幸せ者だと思う。
今の彼との生活に何の不満も不服もない。
…あ、でも1つだけ不思議なことがあるんだけど、一緒に住むようになってから、よく元カレとか他のクズ男達の夢を見るようになったんだよね。
おかげで一番好きだった寝ることが、今はそんなに好きじゃなくなったんだよね。
まぁでも、起きてるときは本当に楽しいし、今まで出会ったことないくらい最高の彼氏と出会えて、私は毎日が幸せで仕方ないんだよね。

「ただいま」
「おかえりなさい、今日も研究捗った?」
「あーうん、まぁね」
「そっか!」
「今日は何時に寝るの?」
「うーん、23時までには寝ようかな?なんで?」
「いや別に!気になっただけだよ」

「……やっと寝てくれたか…ったくいつもいつも寝るの遅いんだよな。もうちょっと早く寝てくれよ…さてと」
プルルルルル
「もしもし」
「おう、○○くん、どうだね研究の方は」
「やっと寝てくれたので今日も研究始められますよ」
「そうかそうか、それにしてもいい被験体を捕まえてくれたものだね」
「なかなかいないですよ、ここまでの女は」
「ふむふむ、その被験体なら私の求めていた研究『男運が悪い女とはいかなるものか』が実現できそうだな、研究が終わるまでは絶対に手放さないでくれよ?」
「分かってますよ、でもこの研究が終わったら別れるの手伝ってくださいよ?」
「分かってるさ」