これこそはと信じれるものが
彼は冬が好きで、彼が嬉しそうなところをずっと見ていられるからわたしも冬が好きだ。
***
わたしたちは、身体的な距離の取り方が下手になってしまった。あの夜以来、何食わぬ顔をしてこれまでと同じ関係性を装ってはみたけれど、その手のひらがあたたかいことも、お互いの肌がどれほどしっくりと馴染むかもわたしたちは知ってしまっているので、素肌が触れ合っていないほうがもう不自然だと身体の細胞ひとつひとつがざわめくのを、意識的に殺しながら笑っている。お互いわりあい明確にパーソナルスペースを