トートタロットの物語(#0 The Fool・愚者)

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僕はディオニッソス。ローマ神話ではバッカスと呼ばれている。葡萄とワインとお祭り騒ぎが好きな神様だ。大神・ゼウスと人間・セレメー王女の間に生まれたのが僕。神様と人間のハーフだからちょっと普通の人間とは違うんだ。本当は人間じゃないから見えない存在だけど、人間に分かり易いように人型になってみた。それがこの絵だよ。

「0」の形を見て欲しい。グルグルと永遠に回り続けることが出来る。そして「0」には角もなければ凹みも欠けもない。つまり僕は僕単体で完結している。つまり完全無欠ってこと。

僕はこれから人間の世界降りてみようと思う。人間的に言えば「赤ちゃんがこの世に生まれる」ことかな。バーンとこの世に飛び出た格好をしているだろう?行先なんて決まっていないよ。まず「生まれる」ことから始まるんだから、

虎は僕の相棒。恐怖心の象徴とも言われている。でも噛みついていても全然気にならない。一緒に人間の世界に連れていこう。

袋の中にお金も沢山あるし、いざという時には敵を射る矢もある。父さんのゼウスからのメッセンジャーの鳩もいるし。だから何の不安もないよ。

この世って「男と女」「白と黒」「善と悪」とか両方(両性)を持つことが難しいらしいね。むしろ「男か女か」「白か黒か」「善と悪か」と「どちらかを選び、どちらかを捨てる」。「どちらかを肯定し、どちらかを否定する」傾向があるようだ。

それなのに「自分」だけでは何か物足りなくて、他人や周りのモノを手に入れようとする。いつも自分が欠けているような気がして、それを補う為に「無い」モノねだりだ。

神様には性別がないように、僕にも性別がない。両性を持っている、というほうが正しいかもしれない。ほら、火(男性性の象徴)と水(女性性の象徴)を持っているでしょ。男でも女でもない。男でも女でもある。

両方を矛盾なく持っていて完全無欠な僕としては人間の世界の方がが複雑に思えるよ。そんな摩訶不思議な世界を見ることが僕たち「赤ちゃん」は大好き。

どんな人間になっていくのかなんて僕だって分からない。だって僕はまだ存在しない「0」「無」だから。人間界にある「限度」とか「制約」というものを知らない。僕が持っているものは限界の無い「無限」という可能性だけなんだ。人間界では「無謀」とか「無知」って言われるかもしれないけどね。

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