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お助けタヌキ

長女が一年生になった時。重いランドセルを背負った小さな娘が学校に行って帰ってくるのが奇跡のように感られた。

娘は幼稚園に通っていた時も、お友達と遊ばず、ずっと本棚の前に座っているような子どもだった。体を動かすのも公園に行くのも好きだったが、一番好きなのは本を開いている時だった。それは今でも変わらない。

1年生の時に娘が私に言った。お助けタヌキが学校についてくると。娘は小さい頃から大のタヌキ好きだった。お助けタヌキたちは学校に着くと、昇降口で娘が上履きに履き替えている間、マットで足をゴシゴシすると言う。

授業中は机の下か、後ろのロッカーの中で寝ているそうだ。給食の時間になると、娘が朝、笹の葉に包んであげたお弁当を食べるのだと。

お助けタヌキは何を手伝ってくれるの?と聞いたら「何も手伝ってくれない。ただ学校についてくるだけ」と言う。

2年生の時には、「この街はパラレルワールドになっていて、夜になるとタヌキの街になる」と言っていた。

昼間街を通ると、ここは誰々の家。そこは誰々の家。とタヌキの名前を連ねる。タヌキのお祭りや、タヌキの店について詳しく教えてくれた。

タヌキ街に行くには特別な葉っぱが必要で、その葉っぱさえあれば、タヌキ街にいける。でも特別な人にしかその葉っぱは見つからないという。

幼稚園児だった次女は、「私は特別な葉っぱがないので、タヌキ街にいけない」とさめざめと泣いた。

おかしすぎて笑えるが、次女の悩みは切実だった。あなたも行こうと思えばいつでも行けるのよ。そう言ったが、信じてもらえなかった。夜は暗くて怖いからタヌキ街なんか行かないで、ママと一緒にいた方がいいんじゃないと言ったら泣き止んだ。

長女は今4年生である。最近はドラゴンの本にはまっているので寝ても覚めても、脳内はドラゴンである。お助けタヌキたちはもう学校についてこないかもしれないが、脳内タヌキたちは今だに健全だ。

あぁ、なんて不思議な子たちの母になったものだ。


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