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罵声語

 日本語で罵声を発することがない。何か失敗をしたときは「あ、やばっ」とか、やるせないないときは「なんだかな〜」とぶつぶつ言うことはある。

罵声を発したい時はたいがい英語になる。アメリカの映画やドラマを見ていても分かるが英語にそういう文化があるのだ。日本語に訳して使ったらびっくりするようなことを可愛い女子高生も比較的育ちの良い女性も結構普通に使う。まぁでも母になってからはそういう表現は極力使わないようにしている。

先日イライラすることがあった。夫が外国籍なために銀行かなにかの手続きが上手くいかなくて、電話を切った後にプンプンしていた。

“They are such… backward… such…  I don’t know what to call them!?” お行儀のいいののしり語がみつからず言葉に詰まっていた。すると8歳の次女が “They are such Monkey headed marshmallows!” と助け船を出してくれた。「猿頭のマショマロ」とは最高にお行儀のいいののしり言葉である!どこで読んだのか聞いたのか。

そういえば、子どもたちはお行儀のいいののしり言葉をたくさん知っている。数年前に夫がよく「タンタンの冒険」の英語版を読み聞かせしていた。アル中のハドック船長はそれはそれは豊富な罵声語のボキャブラリーを持っている。タンタンシリーズはもちろん子ども向けの作品である。原作はフランス語で私は読めないが、英語訳と日本語訳のハドック船長語録を見れば、作家エルジェと訳者たちが、ありったけの知恵を振り絞って子どもに適切な?罵声語を考えたのかがよく分かる。

下の括弧書きの和訳は私が適当につけたが、英語バージョンは音のリズムが快感な罵声語であることが分かる。そしてハドック船長の罵声語はなんと言っても、船乗りならではの海テーマであるのが面白い。

Billions of blue blistering barnacles!(ブツブツフジツボ10億個)
Clumsy footed quadrupeds!(ふにゃふにゃ足の4足獣め)
Purple profiteering jellyfish! (不当利益を追求する紫クラゲめ)
Ten thousand thundering typhoons! (雷伴う台風千回)

日本語バージョンはダジャレの要素が強い。また違った面白みがある。

「コンコンニャローのバーロー岬」
「こんなことってアラル海」
「まっかな血しおがドーバー海峡!」
「イカレコンパス!昼灯台!」

「タンタンの冒険」は1930年から連載が始まった。21世紀に「タンタンの冒険」を読み返すと、植民地時代から受け継いだ白人優位主義的な要素、途上国や先住民族へ対する偏見など垣間見れる箇所もある。女性のキャラクターが極端に少ないことも留意すべき点であろう。そのように歴史的作品として捉えるのもまた面白い。

必要に応じていつでもお行儀の良いののしり言葉が使えるように「猿頭のマショマロ」は私のボキャブラリーにインプットしておこうと思う。


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