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緩やかな風と共に原付バイクの未来を考える

私といえば原付バイク。もはや生活、いや人生に欠かせない相棒となっている。

このnoteでも、原付バイクの事は度々記してきた。しかし、ついこの間、馴染みのバイク屋のご主人から原付バイク(50cc)が将来的には存続が危ぶまれていると悲しい業界裏話を聞いてしまった。その詳細は後記する。

原付バイクといえば、テレビ東京の「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」という人気番組をイメージする人がほとんどだと思う。

電動バイクで旅をしながら、充電が切れそうになったら、その土地の方々の厚意で充電させてもらい、ゴールまで目指すというバラエティ番組である。

この電動バイクは1回の充電で20キロくらいしか走らないらしい。通勤でも往復30キロ、そして、プライベートでは片道300キロの旅にも出た事があるヘビー原付ライダーの私としては、1回につき20キロしか走れない電動バイクなんてお話にならない(無意味なマウント)

もちろん、その充電がすぐ切れて、出川さん達が旅先の方々と楽しく交流を深める人情旅がメインなので、この不便さこそがこの番組の肝でありベストなのだ。出川さんとゲストの方が旅先で気さくに写真撮影などの交流しているところが毎回描かれている。活舌は悪いが、人情味溢れる出川さんの人柄が人気の高い大きな要因だろう。

私はこの人気番組の影響で、昔は怪訝な目で見られていた原付バイクの旅が今では好意的に見られるようになったので感謝している。

そもそも私が原付バイクを乗り始めたのは、沖縄の与那国島に旅行した際にレンタルバイクを借りたのがきっかけであり、それから20何年間原付バイクは私にとって欠かせない存在になった。

原付バイクというのは、決して全員に刺さる乗り物ではないと思うが、本当に便利な乗り物なのだ。運動神経が壊滅的で車の免許は何とか取れたものの、駐車場に上手く停められないという理由で車所有を諦めた私にとって、救世主のような乗り物だ。

利点を述べると、まず燃費が車に比べて圧倒的に安い。1回の給油が4リットルくらいなので、その時のガソリン価格にもよるが1000円を超す事は決してない。それと、法定車検がないのでガソリン代、オイル交換、タイヤ交換、自賠責保険(任意保険)くらいで維持費が安い。

次にドアtoドアのイメージで移動出来て小回りが利く。駐車場ではなく駐輪場に停められるので、駐車代が安い。自転車と同じ所に停められる時も多いのでスーパーなどの施設の入口までの移動が短い。

なによりも、スピードが出せない事を逆手に取って、のんびり景色を楽しみながら緩やかな風を感じながら走れるという事。

ここで恥ずかしい話を出すが、昔からずっとこっそり歌いながら走る事もある(もちろん周りに聞こえない程度に)自作松浦亜弥メドレーを歌ったのはもうどれくらい前の事だろうか。それくらい原付バイクでの走行は楽しい。

利点ばかり出すと、詐欺広告のようになるのでデメリットも出しておこう。この記事が原付バイクの布教を兼ねているとはいえこういうのはフェアにいきたい。

まずは原付バイクは身体が野ざらしなので、安全面と防寒、耐熱、更には雨風対策は必須である。これが嫌で原付バイクに乗らないという人は多いとは思う。

あとは、原付バイクの制限速度規制が30キロであるということ(道路が60キロ規制であろうと)更には一番左の車線しか走れないので車線変更や2段階右折の煩わしさがある。最近では車道と歩道の間に自転車専用通行帯があり、そこは原付バイクは走行出来ない。

車にも自転車にも邪魔にされる原付バイクという乗り物は、まるで中間管理職のような立場である。

そんなデメリットがありつつも、私はそれを許容しながら一生原付バイクと共に生きていくはずだった。

それで冒頭に書いた件に戻るのだが、将来的に原付バイクの存続が危うくなっているらしい。

元々、原付バイクは1980年代にブームになって爆発的に作られていたが、現在は売り上げが右肩下がりの上に、2025年に原付バイクも排ガス規制の対象になる(今までは対象外)そして、排ガス規制に対応した原付バイクを50ccで作るのには技術と材料の関係でコストが見合わないので、50ccの原付バイクが次第に廃止になる(かもしれない)

私にとっては、死の宣告くらいショックが大きかった。

私と原付バイクは今や一心同体のようなものだ。原付バイクがなくなったら、今の会社を切られるかもしれない。何故なら、パートの交通費をケチりたい今の会社で私が採ってもらえたのは、原付バイクで通勤するという条件だったのが大きい。ちなみに原付ではなく、バス+電車で通った場合、ひと月の交通費は16400円(20日勤務の場合)になるが、今支給されている交通費はひと月1950円である(微赤字なんだけれど)その差は14450円。という事は、原付バイクで通えなくなったら切られる可能性もゼロではない。いや、切られないとしても、もしバス+電車の交通費が出せないと上から通告されたら、ただでさえ安い給料なので私から辞めるかもしれない。

それよりも、どんな移動も共にしてきて、遠い富士山や千葉、伊豆、日光いろは坂まで一緒に走り抜けてきたかけがえのない相棒である。ヘタレな私が非常に低コストで遠征の旅が楽しめるのは、全て原付バイクのお陰なのだ。

出来れば、何としてでも身体が動かなくなるまで原付バイクに乗り続けたい。先行きは非常に厳しいが私は微かな望みを胸に、今日も明日も緩やかな風を感じながら原付バイクと共に生きていく。


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