『ずうっといっしょ!』

・恐ろしいほどのスピードで、武道館から一週間が経った。その間のことを、覚えている範囲で書く。

・まず、5/14(火)に『ずうっといっしょ!』という新曲があるとの告知。事前情報では何時解禁なのか明確にされていなかったが、月曜深夜のANNX内で初披露。リアタイしていなかったので、武道館当日の朝、急いでその部分だけ聴く。

・イントロから鳥肌。こん谷を思わせるようなバチバチのギターとドラム、支えるベースもめちゃくちゃかっこいい。頭での理解より先に、身体にダイレクトに響き、細胞に沁み入り心震わせるような音。
歌い方と声もたまらなく良い。
歌詞もキタニらしさが凝縮されており、幸せな結婚ソングではなく、重い呪縛ソング。
ひらがなを多用し、子どもっぽい言い回しで純粋無垢を散りばめていることで、残酷さが際立つ。

・中でも特に印象的なのが、
「あなたの一生の後悔として添い遂げるよ」。
「添い遂げる」という一途さと「一生の後悔として」という陰鬱な表現が合わさることで、目の前で笑いながら号泣されているような、底知れない恐怖を感じる。
また、下記部分

健やかなるときも病める時も
他の誰かと眠っていても
お揃いの悪夢でずうっといっしょ!

にも、既に崩壊した関係を認識しながらも、それを絶対許さない、表面的にほかの誰かといようとも、心は地獄までずうっといっしょだよ!という純真さの皮を被った執念が見てとれ、震えてしまう。
「お揃いの悪夢」は『人間みたいね』にも出てくる表現で、愛ゆえの狂気をはらんだ同じ系統の曲といえるのかもしれない。

・そして、「あたし」がこうなる決定打となったシーン
の解像度の高さ。

髪を乾かしてくれた夜から
あたしは壊されたんだよ

あたしは「こんな顔」というぐらいだからおそらく整ってはおらず、ただ髪は綺麗だったのではないか?
だから、自分が唯一自信を持てるその綺麗な髪を褒められ、優しい手つきで乾かしてもらったことで、情緒が壊れてしまったのだろう。
この女性あるあるなシーンをピンポイントで切り取り、こんなに痛くて的確な表現をできる男性アーティストがほかにいるだろうか?

・その他、韻の踏み方を始め、一つ一つ挙げたらキリがないほど歌詞全部が素晴らしい。最初から最後までゾクゾクしてしまう。もう十分知っていると思ったのに、また新しい扉を開き招き入れるキタニタツヤの深みに嵌まってゆく。

・あと、細かいところでいうと、
「繋がっていようね、消耗戦に持ち込んで」
の部分の「う」の連続が良い。
私は昔からキタニさんの「う」が大好きで、以前にもこう呟いていた。

探し出したツイート

・そして、これはたぶん共感が得られないだろうと思ってTwitterにも書かなかったけれど、この曲は、キタニさんからファンへの、『私が明日死ぬなら』とは違った形の激重ラブソングにも思える。もう共犯者だし、ずうっといっしょだよ、、わかっているね?🌹みたいな。
「あなたたちが自分の音楽を離れるときもあるだろう」
とおっしゃっているキタニさんだから、実際そうではないのだろうけど、「おれの音楽から離れさせないからね?」という重い愛をもらっているみたいで、興奮してしまう。(???) キタニさんのせいで、だいぶM気質が開拓されて、どんどん変態化している気がする。笑

・MVは公開翌日に観たけれど、これもかなりインパクトがあった。じわじわ引き画になって露わになる全容が底なしに恐怖。
男性の薬指から血が流れているのは、あたしが着けていたサイズの合わない指輪を無理やりはめさせられたから、ともとれるが、あたしが薬指を隠していることからして、指輪をはめたあたしの薬指ごと切って、男性につけたようにも思える(過激派)。

・最初普通の新婦さんの笑顔にも見えたのが、最後に再び映されて意味がわかると身の毛がよだつ。
あたしにとって最高に幸せな瞬間を永遠にするために、罪を犯してしまったのか?それが正しいと信じて疑わないからこそ、満足げに微笑むあたしが痛々しい。
おそらく幼少期から愛に飢えていて、初めて愛を感じられた相手だったから、底なしに沼って執着してしまったのだろう。「髪を乾かしてくれたあの夜」のあの手さえあれば、その先(身体)はいらなかったのか。
ラスサビからアウトロの激しいリズムの畳みかけが、猛スピードでお揃いの悪夢に堕ちてゆく感じで良い。つまり、全てが最高。

・ご本人曰く、「サウンド的に10周年を振り返る意味があり、自分の原点であるボーカル・ギター・ベース・ドラムのみで演奏できる曲。10代の心が沸騰するようなギターサウンド」(Spotify「ENCORE」)。
キタニさんの10年分のエッセンスが詰まった新曲を、配信当日に武道館ライブで披露してくださったのは、とびきりのファンサだったと思う。

・色々書くつもりで、まず〜で始めたのに、『ずうっといっしょ!』だけで激語りしてしまった。でもまだ語り尽くせていないくらい。一応この辺で止めておいて、ほかの件はまた改めて書きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?