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おにぎり山の悲劇 (後編)

 前回のお話はこちら↓


 今、おにぎりマシーンには大量のうるち米が投入され、機械がうんうんうなりながらせんべいを作っている最中である。
 やがて、米が炊き上がる香りに続き、せんべいが焼かれる醤油の香ばしい匂いがあたり一面に広がった。

「間もなく焼き上がります!整理券お持ちの方はこちらのせんべい搬出口から出てくるせんべいをお手持ちの袋一杯に詰めて下さい」

 袋を手にした人々が、いっせいにスーパーおにぎりマシーンの搬出口に群がった。
 
ざらざらざらざら~~🍘🍘🍘🍘🍘🍘🍘🍘

 焼き上がった熱々のおにぎりせんべい🍘がマシーンから次々に飛び出してきた。
 我先にと袋にせんべいを詰める人たちが殺到し、マシーンの周りは混乱状態に陥った。
 袋一杯に詰めた後も、食べられるだけ食べようと、マシーンから離れない人もいて、せんべいを両手につかみ、口に運びながらもまだせんべいを目で追っている。

「すごい光景だにゃ…」

 にゃまけものは、目の前で繰り広げられているおにぎりせんべい🍘争奪戦を見ながら、自分はせんべいが好きではなくてよかったと思った。
 そのうちにスーパーおにぎりマシーンのせんべいを焼く速度が速くなってきた。
 できたせんべいをいくら食べたり袋に入れても、搬出口からせんべいがあふれだしてくる。

「せんべいを詰め終わった方はすみやかに、マシーンから離れて下さい!」

 係員が叫ぶ。せんべいはどんどん焼かれて止まらない。もう搬出口からもあふれたせんべいは、香ばしい匂いを周り中に漂わせながら、なだれるように地面を覆いはじめた。
 さすがに人々も異変に気付き、せんべいの袋を手に会場から逃げはじめた。

「あ~れ~🙀」

 にゃまけものがたちまちおにぎりせんべい🍘の波に飲まれて、せんべいと一緒に押し流されてしまった。
 あわてておにぎりくんが駆けつけたが、せんべいが保護色になり、にゃまけものがどこにいるのか全くわからない。

「なんということだ!おにぎりせんべい🍘と同じ色の毛並みが仇になるとは!」

 いっぽう、おにぎりせんべい🍘と一緒になだれ続けているにゃまけものは、おにぎり山を大量のせんべいと共に下っていった。
 身体中におにぎりせんべい🍘の匂いが移り、自分がせんべいそのものになっていく気がする。このまま、にゃまけものはおにぎりせんべい🍘になってしまうのだろうか…
 山の下にある町では、せんべいがなだれてくる状況を株式会社マ○ヤ(おにぎりせんべい🍘製造者)が把握していた。

「このまま、わがおにぎりせんべい🍘を見捨てるわけにはいかない!」

 社員一同が団結し、ふもとの町で、なだれてくるせんべいを受け止める対策が次々に立てられた。
 オレンジ色と緑色の縞々模様が鮮やかな最新式貯蔵袋が用意され、なだれ先に設置された。
酸化防止のアルミ材を使用している袋は、迎え撃つおにぎりせんべい🍘をできたてそのまま真空パッケージできる優れモノであった。
 山の彼方に茶色のなだれが見えた…

 今、できたてのおにぎりせんべい🍘が、次々に袋の中に詰められていった。そう、その中にはあのにゃまけものも、含まれていた。
 しかし、にゃまけものは袋に片足つっこんだだけで、全身入りきらなかったので、助かったのである。

足付きおにぎりせんべい🍘


「えらい目にあったにゃ…😿」

 にゃまけものは、おにぎり山でまたもとのにゃまけ生活にもどったそうな。
 それでもおにぎりせんべい🍘と一体化した体験は忘れられない記憶となり、毎朝お日さまを浴びて、おにぎりポーズのヨガを欠かさない生活をしているらしい。
 あなたがいつかどこかでおにぎりポーズをしている茶色いネコに出会ったなら、「よっ、おにぎりせんべい🍘」と声を掛けてみて下さい。
 びくっとして、あなたの顔をじっと見てきたなら、そのネコはきっと・・・
(おしまい)


※ 本作品イメージにより「おにぎりせんべい🍘」が無性に食べたくなる場合がありますが、
その時は遠慮なく食べちゃって下さい。
私はいつも袋を開けたら最後、全て食べ尽くしてしまいます。
また、作中に登場する固有名称や商品名は限りなく実在している可能性がありますが、お話はあくまでフィクションとしてお楽しみ頂ければ幸いです。
おにぎりせんべい🍘は美味しいですにゃ😺


🍘おまけ記事↓


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