見出し画像

MSCI指数構成銘柄の定期見直し

 MSCIとは「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社」の英語の頭文字をとったもので同社が算出・公表する株価指数の総称を「MSCI指数」と呼んでいます。MSCI指数は世界の多くの投資家や投資信託などの運用の基準として採用されています。MSCIによればMSCI指数をベンチマークとして運用する資産総額は16兆3000億ドル(約1870兆円・2021年6月末時点)に上り上場信託(ETF)については1300本以上(2020年3月末時点)がMSCI指数をベンチマークにしています。
 MSCIは先進国や新興国などの市場別や国・地域別、産業別など多岐にわたる株価指数を提供していますが、代表的な指数として全世界の株式を対象とした「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」のほか先進国の上場銘柄で構成される「MSCIワールド・インデックス」や「MSCIコクサイ・インデックス」などが挙げられます。
 MSCIは四半期ごと(2・5・8・11月)の銘柄入れ替えを行います。特に5月と11月は大規模な見直しが行われます。世界の多くの投資家がMSCI指数をベンチマークとしているため、構成銘柄への新規採用や除外が決まると株式需給に大きなインパクトを与え対象銘柄の株価にも影響を及ぼすのです。例えば2023年2月に機関投資家がベンチマークとする株価指数である「標準指数」から除外が決まったカカクコムはMSCIが除外を発表した日本時間10日朝からの取引で株価は大幅安となり軟調な展開が続きました。今後は機関投資家からの買いが縮小するとの見方が広がりました。
 5月の見直しで日本株はアシックスが追加され、シャープと清水建設・小田急電鉄・東武鉄道・ヤマハ・エニックスホールディングス・朝日インテック・アズビル・GLP投資法人・ヒロセ電機・飯田グループホールディングス・日本都市ファンド投資法人・KDX不動産投資法人・ミスミグループ本社・ユー・エス・エスの15銘柄が指数から外れました。
 国別にみると除外銘柄の数が多いのが日本・中国・米国です。中国は新規組み入れが10銘柄、除外は56銘柄もありました。米国は新規組み入れが4銘柄、除外は15銘柄でした。逆に除外銘柄より新規組み入れ銘柄の多いのがインドです。新規組み入れが13銘柄、除外は3銘柄です。
 野菜や魚と同じように株価指数にもある程度の鮮度が求められます。マーケットは恐怖と欲望が渦巻く一種の有機体であり、そこに上場する数多の株式も栄えては衰え、衰えては栄える、を不規則に繰り返します。指数の使命は誰からみても合理的でわかりやすい「最大公約数化された市場平均」を提供し続けることです。定期的に一定のルールに則って行うのがMSCIなどの指数算出会社なのです。
 MSCIジャパン・スタンダード指数は機関投資家が日本株投資のベンチマークとするものですが、5月の定期銘柄入れ替えでは日本都市ファンド投資法人・KDX不動産投資法人・GLP投資法人が除外されました。円安の進行によってドル建てでみた日本市場の時価総額が相対的に縮小したことなどが決定の背景にあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?