IOWN構想
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想は、NTTが開発・研究を行っている通信基盤のことです。IOWN構想は、光電融合技術を中心とした3つの革新的技術(All Photonics Network(APN)、デジタルツインコンピューティング(DTC)、コグニティブ・ファウンデーション(CF))により5Gよりも高速化・大容量化・低遅延化を実現できるとされています。この構想は2019年に公表され、2024年の仕様確定、2030年の実現を目指しています。
現在のネットワークは、光信号と電気信号の変換を多数実施することにより、多くの電力を消費しているほか、通信トラフィックの制御処理により遅延が発生します。All Photonics Network(APN)は、最終的にこれらをすべて光にすることで、現在よりも低消費電力で、大容量かつ低遅延なネットワークを実現します。NTTとNTTデータグループは、英国および米国内で、NTTグループが保有するデータセンター間を、IOWN APNで接続する実証を行い、約90km離れたデータセンター間の通信についてIOWN APNでの接続により1ミリ秒以下の低遅延通信を実現しました。
背景には、都市部でのデータセンター建設が困難になり、郊外に建設せざるを得ないことがあります。物理的に離れたデータセンター間を接続すると、データセンター間の通信遅延が非常に大きくなってしまうため、低遅延接続するニーズに応えられない課題がありました。こうした環境でも、データセンター間の接続にIOWN APNを活用すると都市部のデータセンターと郊外のデータセンターを同一センターのように活用できるといいます。
データセンター間の接続がデータセンターをAPNで接続することで機能分散が可能になり、可用性が向上するといいます。地域の中小データセンターの活用による再生可能エネルギーの利用促進にもつながります。APN IOWN 1.0は、そのほか、遠隔医療、スマートファクトリー、eスポーツにも適用できるとされています。NTTグループと東急不動産は、IOWNの技術やサービスを活用した街づくりで協業を発表しており、これまでのインターネット回線では難しかったサービスなどが実現できる見込みです。
今後はリアルとバーチャルが交わる価値の論理の時代になると予測されます。IOWN構想には国内外含めて様々な企業が参画しています。消費者がその恩恵を受けるには活用するサービスがどれだけ増えるかにもよりそうです。今後、ビジネス実証や新たなビジネス創造を推進していくことがカギとなります。
2023年3月に提供を開始したAPN IOWN1.0は低遅延が大きな価値となっていますが、APNの最大の特徴は電力効率の向上であり、そのためのキーとなるのが光電融合デバイスです。光電融合とは、光回路と電気回路を融合させ、小型・経済化に加えて、高速・低消費電力化等、様々な性能向上を図るもので、これをネットワークだけでなく、コンピューティングの世界まで適用することで大幅な電力削減を図ろうとしています。
光電融合デバイスに関しては、まずネットワーク向け小型デバイスを適用した低電力デバイスを商用化します。今まで複数のデバイスだったものを同一パッケージに組み込み、大幅に小型化することで低電力化を図るものになります。次に2025年度にボードとボード間やボードと外部インターフェース間の接続に光技術を利用することができるようになるボード接続用光電融合デバイスを商用化予定です。これにより、ネットワークだけでなくコンピューティングにおける光の利用が可能になります。その後、2029年度を目標にボード内におけるチップ間も光電融合技術で接続できるようにし、2030年度以降にチップ内も光で接続できるよう目指しています。生成AIの導入が様々な分野で進む中、生成AIと光電融合デバイスはイノベーションのための両輪と言えるでしょう。
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