よく頑張ったね


血が止まらない

退院後、やはり出血がなかなか止まりません。糜爛にうっすら膜ができていても(フィブリン膜?)タオルなどで軽く抑えるだけでもすぐ剥がれてしまい、そこから出血し始めます。病院でもらったカルトスタットで止血を試みますが、何枚変えても止まらないこともありました。一方、呼吸はこわいくらい静かになっていました。モルヒネのお薬を始めてからよく眠るようになったのですが、睡眠中は息が止まっているのではと何度も口元に手を当ててしまうほどでした。

退院後はじめての外来での皮膚処置の日はクリスマスでした。その日もお尻からの出血がまったく止まらずに、アドレナリン液を使って止血してもらうことに。(アドレナリンって止血に使うんだ。。。)年末最後の受診日で、年明けの受診まで10日以上あります。出血量は気になるものの、呼吸音は落ち着いていて、顔のむくみもすっきりしていたので、なんとなくまた会えるような気がしながら、病院のスタッフさんたちとお別れをしました。

自宅ではクリスマスの記念撮影もして、お正月は鏡餅のマステアートを作ろうかなと話していました。

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クリスマスの翌日に

翌日、いつものように訪問看護師さんに来てもらい沐浴と処置。止血に苦戦しながらも処置を終えて、体温を測ると珍しく36.0℃を切っていました。止血の時間で身体が冷えてしまったのかもと、いつもより厚めのブランケットを掛けて寝かせ、注入を開始します。私と夫は、処置後の片づけをして昼食をとっていました。昼食を食べた夫が娘の様子を見に行くと、娘はもう動かなくなっていました。念のためモニターを付けてみましたが、もちろん何も反応はありません。処置が終わってから1時間くらいだったので、息が止まったばっかりだったのだと思います。名前を呼びながらモニターを付けているときに、娘から1回だけヒュッっと大きな音がしました。最後の力を振り絞って、お別れを言ってくれたのかもしれません。

そういえば、処置中なんどか欠伸をするように口を大きく開けていました。あの時にはもう苦しかったんだと思います。体温が低かったのも、予兆だったのに。娘が死んでしまったと分かった瞬間、亡くなるその時に抱いていてあげなかったことを悔やみました。

でも、やっと痛みから解放されただろう娘には自然と「よく頑張ったね」と声をかけていました。本当によく頑張りました。言葉もしゃべれず、身体も自由に動かせず、私たちにされるがまま、毎日泣いて痛みに耐えてきたんだと思うと、本当に胸が苦しくなります。同時に、なんで娘がこんなに苦しまなければならなかったのか、それまで考えないようにしていた感情も湧いてきて、涙が止まりませんでした。

電話で連絡してから病院に向かい、死亡診断をしてもらいました。その後、エンジェルケア室で身体をきれいにしてもらいました。亡くなった後は浸出液が増えてしまうそうで、大きめの吸水パッドを背中に入れて、予備の吸水パットもいただきました。皮膚科や歯科の先生、看護師さんだけでなく、入院病棟のスタッフさんもお別れに来てくれました。昨日もいつものように外来で処置してもらったばかりだったので、みなさん驚いていました。
病院から帰宅すると、斎場の方がドライアイスなどを持ってきてくれました。だんだん硬く冷たく、死人の顔色になっていく娘を横に、お葬式の手配を進めました。

生まれてから210日目のことでした。

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