デッパちゃんとグレコ

ぼくの名前はグレイス。デッパちゃんの愛車だ。巷では影の薄いコンパクトセダン。一応ハイブリッドだし、燃費は自慢できる。冬道が苦手で四駆しか運転したことのないデッパちゃんからは、絶大な信頼を得ている。デッパちゃんはぼくのことを、親しみを込めて「グレコ」と呼んでいる。

ぼくのオーナー、デッパちゃんは学校のセンセイをしている。今は担任ではなく、サブの立場でのんびり仕事をしている。

ぼくがデッパちゃんのところに来て、去年２回目の車検を終えた。一緒に家庭訪問に行ったり、巡回や引率で出掛けたり、通勤だけでなくデッパちゃんのいろんな仕事にも付き合ってきた。問題児や親の対応で毎日遅くまで学校にいた時期、誰もいなくなった学校の駐車場で、デッパちゃんの帰りを一人ぼっちで待っていたこともあったっけ。

おひとり様のデッパちゃん。学校というところは独身者が多いので、デッパちゃんも特に困ることなく今まで過ごしてきた。でもさすがにアラフィフを迎え、周りとの人間関係や家族のことなど、心に引っ掛かる悩み事が大きくなってきた。デッパちゃんから漏れたため息と思いを、伝えていこうと思う。