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【最速ドラマレビュー】『赤い袖先(原題)』

「イカゲーム」の大ヒットで韓国ドラマの世界的人気が頂点に達した2021年。韓国では新進のOTTプラットフォームが続々とオリジナルドラマを制作・配信し、地上波ドラマは視聴者を獲得するのが厳しい時代に突入しました。特に20〜40代の多くはTVではなくOTTプラットフォームで自由にドラマ楽しむようになり、視聴率だけではドラマの人気を図ることが出来ない時代に。

そんな中、地上波ドラマの救世主となったのが時代劇。

最近は日本でもNetflixで配信中のKBS2制作の時代劇『恋慕』が人気ですが、韓国では昨年、実に8本もの時代劇が放送されており、国内では2021年エンタメのキーワードにもなりました。

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そんな中、ダントツ人気だったのがこの春から日本の韓流ケーブルチャンネルKNTVで放送が決定している『赤い袖先』です。

韓国の友人からもその人気ぶりは度々聞いていて、早く見たい!と思ってたんですけど、正直、わたくし時代劇はそんなに好きというわけではなく...。けれどもどうしてそんなに盛り上がっているのか知りた過ぎて、一足早くドラマをチェックしてみたわけです。

そして思った。

そりゃぁヒットするわけだ!!!

もうね、何から何まで素晴らしいのです。時代劇はたまに見るくらいの私がこれだけハマったのだから、日本でもこれは大ヒット間違いないはず。とにかくこのドラマの魅力を少しでも早く伝えたい!ということで今回は最速レビューをお届けしたいと思います。

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韓国では2021年11月5日からMBCで放送され毎回視聴率を更新。全16話の予定があまりの人気ぶりに1話プラスされ、最終的に全17話で終了しました。最高視聴率は17.4%で、年末のMBC演技大賞では8冠に輝きました。

ちなみにネタバレという点で言うと、このドラマは韓国でも多くの功績を残した名君と言われ、国民にも一番人気があるイ・サン(朝鮮時代の第22代王・正祖)と女官ソン・トギム(後の宜嬪成氏)のロマンスを軸に描かれていて、ベースとなる部分は史実として知られています。そのロマンスを題材に書かれた2017年発表のカン・ミガン作家の同名の歴史小説が原作。ちなみにカン・ミガンさんはこれが長編デビュー作で大学受験間近の頃に2人のロマンスに興味を持ち、それから史実を調べながら書き上げるまで10年かかったとのこと。そんなデビュー作がドラマになりこれだけの大ヒットになったということで一躍時の人となりました。

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原題はドラマも小説も < 옷소매 붉은 끝동 >、訳すと「赤い袖先の袖」。つまりは『赤い袖先』と言うことですね。

タイトルは女官を表す言葉の一つだった< 홍수 = 紅袖 >という漢字を紐解いたものであり、またドラマの第1話では、イ・サンの祖父、英祖が幼いトギムに「赤い袖先の女官は王の女人である」と語られるところから来ているようです。

ちなみにイ・サンの父・思悼世子は祖父である英祖との確執より生まれた「米櫃事件」があり、その悲劇はドラマや映画、ドキュメンタリーなど幾度も取り上げられてきました。近年の作品だとソン・ガンホが英祖、ユ・アインが思悼世子を演じた映画「王の運命-歴史を変えた八日間」などがありますね。ちなみにこの作品で正祖を演じたのはソ・ジソプでした。

それだけ繰り返し作られてきたストーリーなのにも関わらず、どうしてこんなに人々を魅了したのか。

それはこのドラマがイ・サンではなく女官ソン・トギムの視点で描かれているからだと思います。

トギムはイ・サンが唯一愛した女性と言われており、彼女が亡くなった際には一途な思いを記した文、いわばラブレターが残っていて、世紀のロマンスと呼ばれています。史実によればトギムは王の求愛を2度も断っているそう。普通ならば王の命令に背けば命を奪われてしまうほどのことなのですが、死を覚悟してまでも自分の人生を生きようとした女性をイ・サンはなんと15年も片思いし続け、遂にはトギムを後宮に迎えるのです。しかし、やっと王の思いが通じたのも束の間、その後、2人が迎える悲しい結末も有名な話。それでもこのドラマが愛された要因は、2人のロマンスをイ・サンではなく愛された女性の視点から描かれたというのが、今までにない新鮮な演出だったのだと思います。

「私の人生は私のもの。愛よりも自分のために生きる。」という現代にも通じる自立した考えを持った女性トギムを演じたイ・セヨンはまさに適役。聡明で溌剌で話術に長け、何よりも友達思い。そして王を守ることだけに徹しようとするトギムという女性を凛々しさとコミカルのバランスを絶妙に保ちながらも繊細さを併せ持った演技で、こんなにも魅力的に演じた彼女に拍手を送りたくなる!

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そして彼女を一途に愛し続けるイ・サンを演じた2PMのイ・ジュノがもう素晴らしい!今までにも数々のドラマや映画に出演してきた彼ですが、除隊後復帰作となった今回のイ・サン役で彼はトップスターの仲間入りを果たしたと言われています。

韓国人の多くはイ・サンと聞いてまず思い出すのはイ・ソジン主演の歴史ドラマ「イ・サン」でしょう。韓国2007〜2008年にMBCで放送され最高視聴率は35.5%を記録。今なお、世界的な人気で、あるバラエティ番組ではイ・ソジンに会った外国人男性が「目の前に王様がいるなんて!」と大喜びしていました。それほど「イ・サンと言えばイ・ソジン!」と言われ続けてきたわけですが、今回のドラマの大ヒットによって「イ・サンと言えばイ・ジュノ!」と世代交代がおきました。

ちなみに元祖イ・サンのイ・ソジンは最近のインタビューでジュノのことについて聞かれ「僕は2PMのテギョンと長く仕事をしたから他のメンバーのこともよく知っているんだけど、ジュノはきっと成功すると思ってた。これからはイ・サンと言えばジュノでしょう。僕はもうイ・サンと言われるのは恥ずかしいから。」とのこと。

このように元祖イ・サンの存在が強過ぎたことや何度も描かれている歴史だったため、放送当初は、ジュノが「イ・ソジンが演じたイ・サン」を越えられるのか疑心暗鬼な反応も多かったようなのですが、始まってみると「ジュノのイ・サン」が魅力的すぎて沼にハマる人続出!トギムへの熱い想いを心に秘めながらも、国と民のための王であることが最優先だった王に成長していく高貴で美しく、頼もしい姿を熱演しています。

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前半はツンデレなジュノ、後半は愛情ダダ漏れなジュノが楽しめるんですが、ドラマの中盤からはは最愛の人への想いを何度も何度も繰り返し、「私を愛していないのか?」と嘆願する姿はもう女性のハートを鷲掴みです。

史実でイ・サンがトギムに断られるのは2回となっていますが、ドラマではそれ以上に断れまくります。ドラマ中盤からのイ・サンの告白タイムにキュンキュンが止まりません。想いを告げるときの切実な眼差しといったら...。なのに毎回、断られる...切ない。

ドラマをご覧になる際にはイ・サンは何回、トギム断られるのか数えてみてください。きっと私のように「トギム〜受け止めてあげてよ〜」って呟くはず。そして一度でいいからジュノに < 나를 연모 하느냐? = 世を愛しておるか? >と言われてみた〜い!って思うはずです(笑)。

あ、ちなみに2人が水際に立つと毎回、何かが起こります。

2人を取り巻く脇役たちのアンサンブルも完璧で、イ・サンに忠誠を誓う幼馴染であり女官たちを心をときめかすホン・ドンロを演じたカン・フンは難しい役をこなし、トギムを実の娘のように見守るソ尚宮を演じるチャン・ヘジンは「パラサイト」の半地下家族の母や「愛の不時着」のソ・ダンのお母さんのように多くの人に記憶されるほどの名演。イ・サンの護衛武士カン・テホを演じたオ・デファンのクスッと笑える演技はドラマのいいスパイスだし、トギムと女官仲間3人組とのやりとりは女子高生みたいで楽しくて可笑しくて泣ける。個人的にはイ・サンの祖父、英祖を演じたイ・ドクファ先生のカリスマに感動しましたね。

音楽や美術、衣装などもうっとりするほど素晴らしくて、本当に大ヒットも納得!というドラマでした。

あぁ、早く皆さんに見てほしい!

最後に先日、韓国の人気トーク番組「ラジオスター」に出演した際、ドラマヒットの公約を果たすため王の姿で「우리 집」を歌うジュノさん&ホン・ドンロ&護衛武士カン・テホの姿をお納めください。12:10くらいからです。

KNTVで放送が始まったらまた細かく書いていこうかなと思っていますが、『赤い袖先』を見る前に少しでもイ・サンがどんな人物なのか知っておくとよりドラマが面白くなると思いますよ。









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