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【第4戦】新築住宅の洋式トイレ【うんこファイター☆ユウ】

「敗戦処理」という言葉は、プロ野球を語る時にしか聞いた事がない。
戦争は今でも世界のあちこちで起きていて、そうした処理は行われているはずだけれど、それを語る人に出会ってもいない。

勝負の世界では、勝つか負けるかわからない状況がドキドキして面白い。
「面白い」どころでは済まない事態もある。
敗戦処理をするという時点で、悪い結果、つまらない結果が既に出ているわけだから、これをさせられる人の注目度はどうしても低くなるのはわかるし、やる方もそれを知る人も熱意が上がらなくても仕方がないと思う。

加えて、勝負に関わった人(達)と、敗戦処理をする人(達)は別だったりもする。
勝敗に関わる事柄をさせてもらえなかったのに、悪い結果を招いた他人の後始末だけさせられる人達が存在するわけだ。

そんなマイナス要素だらけの敗戦処理、それでいてかなり重要性の高い仕事だったりする。
その出来事をキッチリ始末し、「次」を迎えられるようにするその役割は、何もしなければ色々とマズい何かを残したままになってしまう。

前述のプロ野球の場合は、試合が終わらないんだよね...。
けれども、内容良く頑張れば、敗戦のはずが奇跡の逆転勝利に繋がる可能性だってあるんだよ。



ホームには自分の人生が有利になる要素をふんだんに盛り込んでもらおう。



【新しい家】

ユウが中学を卒業した頃、ユウの両親は、実家の向かいの土地に家を建てた。
この家が新築された事により、ユウは...ついに...


ホームでうんこと闘う事ができるようになった。


過去、その殆どの闘いはアウェイ戦だった。
家で落ち着いて自分のうんこと向き合う時間があったのは、今は亡きおまる先輩簡易トイレの力を借りられた時期にまで遡る。

この新居には、両親の想いが詰まっていた。

当然といえば当然なのだが、両親は、ユウのうんこ事情をよく知っていた
駅のトイレを舞台にした、60cm級のうんことの闘いは両親には話していなかったのだけれど、それでも何かを察したのか、新居のトイレは洋式便器が採用されていた。

家は2階建てで、2階部分に家族全員の寝室がある。
1階はリビングスペースと客間。
1階と2階の両方に、洋式便器のトイレがあり、出勤前のトイレ渋滞や、緊急うんこウェーブへの対処も万全という配慮が為されていた。

加えて、あの激闘を境に、ユウのうんこサイクルは少しずつ短くなっていた
うんこが魔物化する前に排出するよう、意識して癖付けをして日々を乗り越えていたのだ。

ここまで環境と肉体が整えば、もはや「ファイター」ではない、一般人と同様になったと言えるのではないだろうか。
厳しい闘いの日々から解放され、安らぎの中でうんこができると期待していたユウに、母親はこう言った。


母親:「2階のトイレは1階と比べて水流が弱いから、あんたは1階でうんこしてね。」



有利な環境は油断を招く。


【油断】

新住宅の排便環境は快適だった。

母の言い付けを守らず、2階のトイレにうんこを解き放った事も
あったが、新しいトイレはそれを受け入れ、呑み込んでくれた
ただ、大きめのうんこをした時、2度ほど水の流れが怪しい挙動があり、危険を感じたユウは、それ以後、緊急うんこウェーブ発動以外は、母の言い付けを守り必ず1階のトイレでうんこしていた。

新居の環境に家族全員が馴染んだある日、ユウはいつものように1階のトイレで肛門をフルオープンし、うんこをひり出した。
ホームの快適な排便環境は心地良く、良質なトイレットペーパーにより、尻の穴のうんこを拭き取る際のザラザラ感も大きく緩和された。
洋式便器の能力を信頼していたユウは、うんこを拭き取ったペーパーを、うんこが居座る便器に放り込み、とてもナチュラルな動きで‘大’のレバーを捻ったのであった。



それは...


油断によって生じた、致命的な‘隙’だった。



常勝無敗が約束されたかのような快適な排便環境の主役である洋式便器は、この時もいつものように、‘渦巻き式水流波’でうんこを呑み込もうとした。

ところが、である。

普段より少し大きめで硬かったうんこを吸い込みきれず、尻を拭いたトイレットペーパーが隙間空間に入り込んでしまい、引っかかって流れなくなった



うんことの闘いで奥義を使う際に必要不可欠な武器がこれだ。


【奥義炸裂】

新居において初めて訪れた危機ではあったが、数々のうんことの闘いを制してきたこの日のユウは冷静だった。
60cm級との闘いで培った、あの技を使えばなんとかなる。


一芯流水流波!!


ここはホームである。
トイレットペーパーの予備は豊富で、芯の取り換えも容易なのだ。
惜しまず、芯でうんこを押し込みながら、水流波を出せばいい。


ブゥゥゥゥーーーン...ドゥバババババガボボボボボボ!!!!


一芯流の奥義に助けられたホームの洋式便器は、強者であるはずのうんこを力強く呑み込んだ




勝利を収めたはずのフィールドで異変が起きていた。


【他力解決】

奥義を繰り出して危機を乗り越えたユウは、反省も欠かさない。
いかに性能の良い洋式便器であっても、これまで通りの基本を怠らず、排便の前に1度水を流しておき、うんことトイレットペーパーは別で流す、というのを徹底するべきだ。
それさえできていれば、こうした事態すら起こさず、平穏な日々を過ごせるのだから。


母親:「ユウちゃ~~~ん、ちょっと来てぇ~~~~。」


先ほどのトイレから約1時間後、1階から自分を呼ぶ母の声がした。


母親:「ユウちゃん、ちょっとこれ見てぇ。」


と、母親はユウをトイレに呼んだ。
そして母親は、ユウに便器を見せた。


母親:「水が流れんが。あんたぁ、最後に使った時どうだった?」


どうやら母親は、トイレ掃除をしていて、便器に水を流したようだ。
それが流れず便器内に溜まっていき、今にも溢れ出しそうになっていた。

ユウは正直に、自分がうんこした時は流れたが、うんこが大きかったために詰まりそうだったと伝えた。
この時の母は、「流れたんなら故障じゃないねえ。」という判断だった。

こういう事態が起きた際、我が家では祖父が召喚される。
我が家の便利屋さん...いや、我が家に留まらず、地域の便利屋として、こうした様々なトラブルを無償で解決してきた頼れるジジイだ。
ジジイはひとしきり様子を見て、こう言った...


祖父:「これは俺でもわからんわい。業者呼ばにゃぁいけん。」


じ、じいちゃん...。
じいちゃんでもダメなんか...。
そんなに深刻なのか...。
俺達のスーパーヒーロー、じいちゃんですら解決できない事態とは、いったい何が原因なのか。

ほどなくして、業者が呼ばれた。

到着後、早速作業に取り掛かった業者の方々は、ひとしきりあちこちを確認し、通水カップを持ち出した


ガッポン!ガッポン!


シュゴゴゴゴゴゴ!!


事態は解決した。

通水カップって、あの動きで、見えない奥の詰まりの原因になってるヤツを、動かしたり砕いたりする素敵なアイテムなんですよね。
これを機にね、この新居に常備される事となりましてね...まあ、それ以後出番は無かったりするんですが。
あ、そうそう、原因ですよね、それ、知りたいですよね。



業者:「便が詰まってたんじゃないですかねえ。」



この翌日、母は‘ヨーグルトきのこ’を買ってきた。
ユウはそれを毎日摂取する事を義務付けられたのだった。


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