ANTCICADAで昆虫を食べてきました。
はじめに
新しい体験をしてみたいという軽い気持ちで伺ったお店で、ここまで感動させられるとは思いもしませんでした。
食事をしてこんなにも多幸感に浸れたのは初めてで、食べ終わってから1日経った今も、余韻に浸りながらこの記事を書いています。
きっかけ
TwitterでANTCICADA(アントシカダ)さんの記事を見かけて、昆虫食という未知の体験に興味を持ちました。
早速友人に連絡して誘ってみたところ、「昆虫やだ笑」という返事が…。
私が出会った人間の中で一番ノリの良い人間ですら、この反応です。
昆虫食のハードルは想像以上に高いのかもしれません。
しかし上記の記事を読んだら興味を持ったようで、すぐに日程を決めて予約しました。
アクセス
お店は浅草橋駅から徒歩5分のところにあります。
散歩がてら東京駅から歩いて向かったのですが、30分ほどで着くことができました。
コース料理
コース料理が6,400円、ドリンクペアリングが3,600円で、合わせて10,000円(税抜)です。
ドリンクペアリングは、アルコール or ノンアルコール を選ぶことができます。
私は現在お酒をほとんど断ってしまっているので、ノンアルコールにしました。
メニュー
MENUの右に記載されている「#12」は、おそらく12種類目のメニューだということを表しているのだと思います。
虫の日(2020年6月4日)にお店をオープンしたと言っていたので、2週間に1度ぐらいのペースでメニューを変更しているのかもしれません。
1品目 ようこそ〜 スナック / 珈琲と茉莉花
100%コオロギの出し汁でつくられたスナック。
スナックにかかっているパウダーは、マッシュルームを発酵したものと、唐辛子の燻製で作られているようです。
さっぱりしていて美味しい。
ペアリングのドリンクは、コーヒーで煮出したジャスミン茶とのことでした。
(コーヒー、お茶の知識がなさすぎて、「コーヒーで煮出したジャスミン茶」の意味がよくわかっていません)
ANTCICADAのスタッフさんたちは、定休日に日本各地に出向いて、虫を捕まえたりしているようです。
2品目 山伏〜 飛竜頭、春菊、松茸、コオロギ餡 / 栗の蜂蜜と柚子
コの字になっているカウンターの中央で、スタッフさんが毎回料理とペアリングのドリンクの説明をしてくれます。
2品目はがんもどき(飛竜頭)です。
餡は徳島と福島のコオロギのエキスで作られているようです。
今までは製造過程で捨てられていたエキス、実はそこに旨味が凝縮されていたことに気づいたという話がありました。
しいたけと煮干し醤油がアクセントとなっております。
コオロギエキスの独特な味と春菊の苦味が、程よくマッチしているように感じました。
ペアリングのドリンクは、栗の花の蜂蜜と柚子で作られたものでした。
3品目 コオロギ醤油のあそび方〜 雲丹、コオロギ醤油 / ツマものサイダー
1品目と同じスナックの上にウニが乗せられています。
これにスポイトに入ったコオロギ醤油を4~5滴ほど垂らして食べます。
少しウニに苦手意識があった私でも、美味しいと感じられました。
友人は、この料理が一番美味しかったと帰りに話していました。
ANTCICADAさん特製、「こおろぎ醤油」です。
大豆を一切使わずに、1瓶で約482匹のコオロギを使用し、
8ヶ月間発酵してつくられているとのことです。
(「約482匹」という表現、好きです。)
この「こおろぎ醤油」がスポイトに入っています。
スポイトに残ったコオロギ醤油を直接全部吸って食べました。
普通の醤油より、甘みがあって濃厚な感じです。
ペアリングのドリンクは「ツマものサイダー」です。
ウニをお刺身に見立てて、ツマで作られています。
ベースはシソです。
お刺身のツマは、食べられずに残されてしまうことが多かったりしますが、
消化を助けたり、口の中をさっぱりするといった効果があるとのことです。
4品目 秋〜 かぼちゃ、蜂の子、小麦、ハーブたち / アユピス カムカム味
ついに虫が来ました。
写真の右の蜂の子が、明らかに虫のかたちをしています。
少し気合を入れて食べてみると…
普通に美味しい。
黒糖と赤ワインビネガーで味付けされていて、甘味があります。
虫から想像される気持ち悪い食感や味というのはまったくなく、ガンガン食べられる感じです。
この蜂の子はオオスズメバチの幼虫で、殺虫剤を使わずに生け捕りをしたものだそうです。
ペアリングのドリンクは、スタッフのあゆむさん特製です。
あゆむさんが作ったことに由来して「アユピス」と名付けられているそうです。
ノンアルコールのジンを乳酸菌で発酵したものと、カムカムフルーツの果汁で作られています。
レモン4個分のビタミンCが入ってるようです。
生きているメスのオオスズメバチを見せてもらいました。新女王蜂とのことです。カッコイイ。
攻撃性は低いが、人を刺すことはあるようです。
こちらはオスのオオスズメバチ。見た目が全然違います。
スズメバチの種類によって巣の作り方が異なるようでして、
キイロスズメバチやモンスズメバチは地上に巣を作りますが、
オオスズメバチは土の中に巣を作るんだそうです。
これは知らなかったなぁ。
蜂をニコニコしながら説明してくれた女性スタッフの、蜂への愛が伝わって最高でした。
5品目 セミの気持ち
穴が4つ空いた木製の物体と、銀のストローが提供されました。
この木製の物体は、オーナーさんのお友達のデザイナーさんに、特注で作ってもらっただそうです。
セミの気持ちになって、ストローをセミの口に見立て、木の穴にストローを刺して樹液を吸うように説明されます。
カウンターを囲った大人13人が、セミの気持ちになって樹液を吸っている光景は相当シュールです。
樹液を吸える穴と吸えない穴があるところに、オーナーさんの遊び心が垣間見れました。
樹液を吸える穴は2つありました。
そこでスタッフさんから、2種類の樹液の味が何であるか当ててみてくださいというクイズがありました。
目を瞑って鼻をつまんで食事をしてもほとんど味がわからないというアレと同じで、中身が隠されたドリンクの味を当てるというのは至難の業です。
直感で、りんごと、ニンジンかな?と思いましたが、一つはあたりで一つは外れでした。
お客さんからいろんな回答があがりましたが、おそらく2つとも当てられた人は一人もいなかったと思います。
樹液と言いつつも、実際には全く樹液とは関係がないドリンクが入っています。
実際の樹液は味気ないので、樹液にはしなかったとのことでした。
実際の樹液の味が気になりますね。
そして、
提供された植物の葉っぱの裏に、セミの幼虫が潜んでおります。
葉っぱをちぎります。
セミの幼虫に、燻製したキャラメルがコーティングされています。
これは食べる際に少し勇気が入りました。
まるごと口に入れると…
これまた美味しい。
食感は強いて例えるなら、殻付きの小エビに近い感じかもしれません。
蜂の子と同様に、見た目から想像される気持ち悪さのような食感は全くありませんでした。
アブラゼミとミンミンゼミの幼虫で、お店から歩いて15分ほどの公園で取ってきたとのことです。
セミの幼虫はを見つけるのにはコツがあって、
時間は日暮れまえの50分ぐらいから探し出すといいらしいです。
高い木ではなく、ちっちゃい丈の木の葉っぱの裏にいることが多いので、匍匐前進をして探すといいそうです。
一つの木から20匹見つかることもあり、オーナーさん曰く、慣れると1時間で200匹ぐらい取れるそうです。取れすぎです。笑
セミの幼虫を探しに行ったことがあるというお客さんと、オーナーさんとの、一生でここでしか聞けないようなマニアックな会話を聞けて良かったです。
6品目 憧れのメキシコ〜 きのこ、イナゴ、モレ・ネグロ / 浅利とマンゴーのお吸い物
6品目はタコスです。
こおろぎを練り込んだタコス生地に、チョコ、バナナ、玉ねぎなどを含んだモレネグロというソースがかかっています。
その上に、猪のタンとイナゴが乗っています。
これはめちゃくちゃ美味しかったです。コース料理の中で一番好きな味でした。この味を形容する技量が私にはありませんが、バナナの味とイナゴの味が合っていたように感じました。
写真の赤っぽいのがイナゴです。エビと同じ原理で、イナゴも火を入れると赤くなるそうです。
ペアリングのドリンクは、アサリとマンゴーのお吸い物です。
貝の旨味と、イナゴの旨味が合います。
番外編 シロヘリミドリツノカナブン
タコスを食べているときに紹介されたカナブンです。
「シロヘリミドリツノカナブン」という種類で、
オスのフェロモンが桃の香りがするというのが特徴です。
私は興味本位で、「このカナブンも食べるんですか?」とオーナーに聞いてみました。すると、「もちろんです。食べないものはないです!」という回答でした。
「食べないものはない」そんなこと、考えたこともなかったです。
自分の常識というか、価値観を揺るがされるような名言を思いもよらないタイミングで聞けてしまった、そんな気がしました。
7品目 野生〜 猪、イナゴ醤、黒にんにく、ニラの蕾 / 和製ラッサム
猪のお肉に、イナゴの醤油がかかっています。
これもめちゃくちゃ美味しかったです。
イナゴの醤油とは、イナゴと米麹と塩で作ったもので、梅とかシソみたいな味がします。まだ販売はしていないようなのですが、リクエストは多いので、今後販売する可能性はあるようです。
販売されたらぜひ買って人に紹介したい、そう思わされるぐらい良い味でした。
ペアリングのドリンクは、ラッサムというスープです。(写真撮り忘れました。)
リンゴ、トマト、豆などで作られています。
小中学校の給食で出たポークビーンズを思い出すような味がして美味しかったです。
8品目 これまでとこれから〜 コオロギ / 高野食品のミキ
8品目はコオロギラーメンです。
オーナーさんの「コオロギ乗せますか?」という発言には笑わざるを得ませんでした。ジロリアンにはたまらないフレーズです。
コオロギだけで出汁を取ったラーメン。
スープに浮かんでいる油もコオロギの油で、麺にもコオロギを練り込まれています。
どんぶり1杯に、約70匹のコオロギが使われているそうです。
「ハナビラタケ」という、キノコハンターの中では幻のキノコとぼ呼ばれるキノコが乗っています。
とにかくコオロギ、コオロギ、コオロギって感じのラーメンですので、今までは他の味と混じっていてどれがコオロギの味であるかが明確にはわからなかったりもしたのですが、これがコオロギの味なんだな!っていうのがわかるラーメンでした。
今まで食べたことのない独特な味で、癖になりそうです。
ペアリングのドリンクは、高野食品のミキという奄美大島産の発酵飲料です。お米感が残っていて、甘味と酸味があって美味しいです。
ラーメンにも合います。
9品目 タルト〜 西洋梨、蚕の糞、金木犀 / 半発酵ほうじ茶
オーナーさん「秋といえばタルト。秋といえば金木犀。そして秋といえば、蚕のフンですよね」。一同爆笑。
焼きたてのタルトに、マスカルポーネチーズとメレンゲと蚕のフンを練り合わされたものが添えられています。(少し食べてから写真を取り忘れていたことに気づきましたので食べかけです、すみません)
第一感としては、「フンを食べるなんて、そんなことあり得るのか?」って感じがしましたが、蚕のフンは漢方としても使われているもので、血液の流れをよくしたり、腎臓や肝臓にもいいと言われているようです。
蚕が食べる葉っぱの成長度合いによって、蚕のフンに含まれる葉っぱの割合が変わるという話が面白かったです。
秋の桑の方がフンに桑が残るため、良質なフンになるのだそうです。
蚕は1000種類以上もいて、フンの乾燥のさせ方によっても質が変わるようです。
「蚕のフンを極めようとしたら、一生あっても足りない」というオーナーさんの発言が印象的でした。
コース料理を食べた感想
私は週7松屋でいいやと思ってしまったり、ひとりでの食事なんてただの作業と思ってしまっているぐらい、「食」に対する意識が著しく低いです。
そんな私が、初めてこのようなスタッフさんの愛のこもりにこもったコース料理を経験して、生まれて初めて食事に感動しました。
ここまでひとつひとつの食材を意識しながら食事をしたのも初めてでした。
大げさではなく、人生で一番楽しい食事になりました。
スタッフさんの魅力
スタッフさんひとりひとりが、本当にみんなこのお店が好きで、料理にこだわりを持っているんだなという感情を目の前で感じられて、最高の経験になりました。
そして何より、私はオーナーの篠原さんから終始溢れ出ていた知性に惹かれました。
自分より年下の方々が、こんなにも素晴らしいお店を作って経営していること、このクオリティのサービスを提供できていること、そして、昆虫食という明らかにニッチな分野であっても勝負ができることを証明していること。それに私は非常に感化されました。
ANTCICADAのグッズ
MacやiPhoneなどの実用的なテクノロジー系の機器や、本、必要最低限の衣類等を除いて、物欲がない私は日常生活で「モノを買う」という行為をすることがありません。
ですが、2時間半に渡る素晴らしいサービスを受けて感動してしまった私は、店内に展開されていた商品の何かしらを購入して、このお店に貢献させていただきたい、そんな感情が湧き上がりました。
帽子を買いました。
「ANTCICADA」さんの「ANT」はアリ、「CICADA」はセミという意味なので、ロゴの「A」の右側はアリの足なんだろうなぁと思いオーナーさんに聞いてみましたが、オオクワガタの足でした。
AからZまで、いろんな昆虫の足や触覚や角で作られたロゴが用意されているようでして、見させてもらいました。
帰り際にいただいた「コオロギラーメン」のステッカーは、iPhoneのケースに貼りました。完全に洗脳されています。
本当に、いい経験になりました。
ANTCICADAのスタッフのみなさん、ありがとうございました!
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