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黛チャイムの考察と再現

■はじめに


黛チャイムとは、昭和43年黛敏郎氏によって作曲された0系新幹線車内チャイムです。昭和45年の日本万国博覧会を間近に控え「新幹線に合うスピード感ある未来の曲を」という理由で作曲されましたが、前衛過ぎたため乗客には不評で、わずか数年で四打点音チャイムに変わりました。
あまりにも短い期間でしか使用されなかったため、そのチャイム音を聞ける音楽メディア(音源)が不明でかつて「幻のチャイム」ともいわれていましたが、近年記録されている音楽メディアが数点見つかり、今では幻ではなくなっています。
ただ、音楽メディア(音源)ごとに電車の騒音や雑音、チャイム音の速さや発音のばらつきがあるため、実際はどのようなチャイム音だったのかわかりづらくなっています。そのためこのたびその数点の音楽メディア(音源)を参考にしながら音や速さの共通点を探し独自にチャイム音を再現してみることを試みました。
※記事の黛チャイムの再現につきましては、ほっちチャンネル様のYouTube動画「昭和の光景・一コマ 東海道新幹線 ブッフェ・車内販売 サービスの手引き」を大変参考にさせていただきました。心より御礼申し上げます。




■聴ける音楽メディア(音源)は?


黛チャイムを聴ける音楽メディア(音源)は私の知るところでは3つあります。
レコード:ビクター 日本の鉄道<上>(SJV-1110)S45.7.12 収録
レコード:東芝 新幹線ひかり19A (TK-4066)S45.1.23 収録
研修用スライド(YouTube):帝国ホテルサービスの手引 列車食堂

■新幹線で使用されたのはテープかオルゴールか?


川崎弘二氏編著「黛敏郎の電子音楽」のなかで、黛チャイムはテープで納品されたことが書かれてます。では実際、0系新幹線の車内チャイムとしてもその納品されたテープが使用されていたのでしょうか。
「日本の鉄道<上>」の東京発と名古屋着の車内チャイムをそれぞれ聴くと一音一音の発音タイミングが東京発と名古屋着で違い、「新幹線ひかり19A」は同じ音程でも鳴る音と鳴らない音があります。
「帝国ホテルサービスの手引」は他の2つにくらべゆったりとしたテンポで低音になるほど発音タイミングが遅くなっています。
どれもテープでは起こりにくい現象ですので車内チャイムで使用されていた黛チャイムの音はオルゴールと思われます。

■オルゴールとしたら何弁か?


黛チャイムの前に使用されていた「鉄道唱歌」のオルゴールは23弁と言われています。黛チャイムも同じ23弁で23音が使用されているものと思い、3つの車内チャイムを聴くと22音しか使用されてないように聴こえました。ただ黛チャイムの曲の1小節目と2小節目の最後に「ソ#」の音が高速で連打されています。オルゴールは、はじいて音を出す仕組みから連打音は苦手とされています。
このことから「ソ#」の弁を2つ用意し23弁として、オルゴールの弱点である連打音を克服し、オルゴールとしての機能を最大限活用しようとしたのではないでしょうか。
 

※それぞれの段落の上段はオクターブ記号付きト音記号です

■黛チャイムを6種類再現


黛チャイムを6種類再現しました。
再現にあたり上記楽譜の通り音階は22音にして、オルゴールとして再現ができない余分な音は加えていません。
下記音声ファイルのうち最初の「黛チャイム(再現)」は、3つの車内チャイムのテンポや音のタイミングを平均化したものです。
「黛チャイム(ひかり19A)」は、オルゴールのシリンダーピンが摩耗し鳴らない音があるものをそのまま再現しているもので、「黛チャイム(ひかり19A 修正)」は摩耗する前の正常に音が鳴ってい時のものを再現しています。
音はフリーのオルゴール音源をフィルターで加工したものを使用し、スピーカーから流れてくる感じにしました。
下記YouTube音楽チャンネルと個別音声ファイルで聞けますので参考にしてください。