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"深心塾"の目指すところ

横浜市立大学附属病院 心臓血管外科の立石 実(たていし みのり)と申します。

2000年に東京女子医大の心臓血管外科に入局し、20年以上心臓外科医をやって参りましたが、自分のことはさておき、昨今、外科医が「絶滅危惧種」と言われるほど、若い医師が志望しない、中堅が辞めていく…という現実があります。

外科医不足については、また別の機会で触れたいと思いますが、外科医が嫌厭される今でも「心臓外科に興味があります!」「心臓外科医になりたいです!」と言ってくれる稀有な若者もいます(涙)

そんな若者のために何か私にできることはないのか…と考えたのがこの「深心塾(しんしんじゅく)」です。この塾の目指すところをを、まずお伝えしたいと思います。


1. 心臓外科医として社会に貢献するために、よりよい医師になるために、知識や技術だけでなく、折れない心、セルフマネジメント、倫理観などを学ぶ

心臓外科医として社会に貢献するために、知識や技術が必要なのは当然ですが、「心」を鍛え、深く感じ、考えることも大事だと思い、「心臓」も「心」も深めることを目指して「深心塾」という名前にしてみました。

しかし、心臓外科医は一人前になるまでが長く、辛い道のりであることは否めません。さまざまな壁にぶつかることもあると思います。心臓外科を目指す若者の中には、真面目で努力家過ぎて、挫折してしまったり、心を病んでしまったりする人も多く見受けます。メンターとして相談には乗るようにしていますが、それだけでは防ぎきれないことも多く、何とかそうならないように、あらかじめどのように自分をコントロールしたほうがよいのか、なども知っておいたほうがよいと思います。

一方で、心臓外科医を志す人は「意識高い系」も多い印象ですが、意識が高過ぎて少し経験を積んで自信がつくと、他のスタッフや後輩に対してパワハラ的な態度になったり、「何でもできる!」と思って暴走してしまうことがあります。ちなみに、こういう状態は「ダニングクルーガー効果」という認知バイアスの一種で、「愚者の山」と言います。どうやったらそうならないか、などの対策を知っておくことも重要です。

また将来、心臓外科チームのチーフとなるために、チームマネージメント、リーダシップの知識が必要ですが、そういうことを学ぶ機会はあまりないと思います。こういうことも一緒に学んでいけたらと思っています。


2. 心臓外科医に必要な知識や技術を身につけ、モチベーションを維持し、立ち上がりの早いラーニングカーブを描けるようにする

心臓外科はある程度の手術が執刀できるまでの年数が、他の外科よりも長いのは事実です。でも振り返ると「もっとこういうことを早く知っておけばよかった!」と思うことが、たくさんあります。

何を見て学べばよいのか、他の人の手術をどう観察するのか、運針はどんなことを意識しているのか、どんなトレーニングが必要なのか…など。

自分が苦しんだこともあって、やはり若手には早く手術の技術を身につけて一人前になって欲しいと思っています。若いうちにたくさん手術をすることで(将来的には少数先鋭で術者が育つようになる環境が望ましいと思っていますが)、より技術力が高まり、ひいては患者さんのためになると思います。

また、現在の専門医システムでは、心臓外科を志していても、外科専門医取得までに心臓外科以外の外科で研修をしなければならない時間も長いため、継続的に会に参加して、その間のモチベーションを維持することも重要かな、と思っています。


3. さまざまな分野について学び、視野を拡げる

医師、特に専門分野に特化した医師は、視野狭窄になりがちです。心臓外科の論文や教科書を読むことも大事ですが、それ以外のさまざまな分野のことを知ることも大事だと思っています。物事を俯瞰的に見ることは「自分の軸」を定めることにつながると思います。

医療経済学、行動経済学、医療デザイン、そして、医療以外の分野も。例えば、プロスポーツの世界における試合前のマインドセットや、困難な場面での対応などは、手術中のセルフマネジメントにも通づるところがあります。

普段は知り合う機会がなかなかないような人と繋げていけるような会にしたいと思っています。


以上が、「深心塾」の目指すところです。

現時点(2024年5月)では、横浜市立大学 外科治療学教室で心臓外科医を目指している若手外科医、入局を考えている研修医の先生、心臓外科に興味のある横浜市立大学の学生さんを対象として、月1回、月末の土曜日に、横浜市立大学 みなとみらいサテライトキャンパス(横浜ランドマークタワー7階)の現地とオンライン(Zoom)で開催しています。将来的には対象を広げてもよいかも?と思っていますが未定です。

横浜市立大学 みなとみらいサテライトキャンパス
キャンパス内

開催した内容については、noteに書き溜めていきたいと思っています。
また、参加してくれた方のみに共有する内容(動画のアーカイブなど)については、noteのメンバーシップで共有していく予定です。

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