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叶わないと思っていた夢を叶えた話

注意事項⚠️

福井県で開催されたコンサートに参加してきた物語調のレポ

楽器に対する熱量が凄すぎる、推しにオタクすぎる私が出てきます(心の声も含め、全て事実です)
県知事賞などを受賞されている方はお名前が出てきます。匿名にして欲しい場合はご連絡下さい
(皆様に知っていただきたい奏者なので名前を出させて頂いております)

受け入れられない方は今すぐお戻りくださいませ
誹謗中傷等、受け付けません🙅‍♀️
コメント、拡散大歓迎です

以上 ご理解の上 読み始めてください

⚠️期間限定 無料公開になる可能性あり⚠️
7月10日より有料にする予定

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2024.04.13(土)

起床してリハが始まるまで


福井県 芦原温泉駅に向かうため、朝4時に起床。まだ外は暗いようだ、朝日すら見えない。
布団の中でSNSを少し巡回し、朝の準備のために寝床を出る。
廊下も電気をつけないと何も見えない、こんな時間に起きて動き出すことなんてあっただろうか。
不安と緊張が入り交じった不思議な気持ちである。

まだ寝ている家族を横目にルーティンを開始する。洗顔、白湯を飲むためのお湯を沸かす、など…日課の梅白湯を飲む。これが美味しくて、体も温まり、水分も取れるので、気に入っている。

朝ごはんを食べたり、メイクをしていると、朝日が上ってきたのか外が明るくなっている。
電車の中で寝る予定をしている為、コンタクトは付けず、ポーチに仕舞う。
髪の毛のセットをして、荷物のチェックを行う。前日から荷物のチェックリストを作成していて、それを見ながら何度も確認する。不安症のため、どうしても荷物が多くなってしまうのが私の性である。
この間に2回ほど、今回弾かせてもらう曲「風来壮烈」を聞き、イメージを膨らませる。

6時48分発の電車に乗るため、母親を起こす。駅まで送って貰うのだ。本当は駅から徒歩15分の所にある職場で借りている駐車場に車を停めて行こうと思ったのだが、そうなると、3時台に起きないといけなかったため、母親に依頼したのである。そして、朝早くの送迎を快諾してくれた母親に感謝である。

約30分程で最寄り駅に到着。母に別れを告げ、駅の改札を通る。
私は奈良県から福井県まで行くのに、サンダーバード、特急、新幹線、何も使わず行く予定をしているので、こんな早い時間なのである。
去年、東京に年4回夜行バスで8時間ほどかけて行っているため、もう感覚がバグっているのだ。

徐々に福井に近づく度、ずっと前から夢に見た瞬間が遂に訪れようとしているため、緊張と共に高揚感が募る。
朝早くの電車に乗り、まず、京都に向かう。
これは乗りなれたもので、特になんの迷いもない。
さて、京都に着くと、近鉄からJRまで歩く。9時頃の京都は既にキャリーケースをひいた観光客で溢れかえっている。人の波を掻き分けながら、何とかしてたどり着く。また、近鉄からJRまで行くのも不安すぎて、YouTubeで行き方の動画を確認したほどである。

JR京都駅の改札を通ると、乗り場が多すぎて迷子になる。何が何か分からない。新幹線乗り場の矢印、サンダーバード、色んな行き方があるようだ。
何度も携帯で調べた電車の時間と、電光掲示板を確認し、ホームに降りる。
JR京都駅を使うのは高校3年生の校外学習以来で、少し懐かしく感じた。

さて、ここから敦賀までの約2時間半、ずっと電車に乗り続ける。寝ては起き、今どこにいるのか確認する。
何やらのどかな所に来たなと思い、マップアプリを開くと、琵琶湖が見える。滋賀県まで来たようだ。
電車の右側に見える水平線が琵琶湖のようだ。海とはまた違った感動がある。
滋賀県の街並みを見て、住みやすそうなところだなと思いつつ、更に電車に揺られる。

さて、敦賀に到着したようだ。日も高い所までのぼり、段々気温も上がり、暑くなってきていた。
ホームに出ると、恐竜のオブジェを発見する。
おぉ、さすが恐竜博物館が有名な福井だ、と感動しつつ、写真を撮り、ハピライン福井に乗り換える。

ベンチに座る恐竜

新幹線の案内を大声でしている係員さんに気を取られ、ハピラインの場所が分からない…知らない土地はこうなるから困るのである。
なんとか案内表示を確認し、乗り換えを無事に終える。
更に近づいていく…ここまで来たかという感動も大きくなってきていた。
一旦福井で降り、また乗り換える。次の到着駅で最後…芦原温泉駅である。金沢行きの電車に乗る。
電車の床に落ちているゴミが少し気になるが、もうそれどころではない。

「芦原温泉〜、芦原温泉」
と車内アナウンスがあり、電車を降りる。遂にたどり着いてしまった。電車を乗り継ぎ約5時間…
11時38分 芦原温泉駅到着。
さて、改札を目指しつつ、会場となっているAFLAREを探す。
無人改札のようだ。利用客も少なく、都会過ぎない空気感に少し安心する。
トイレに寄り、クリアのソフトコンタクトを付ける。よし、これでようやくビジュの完成である。

芦原温泉駅に到着

改札を出て、階段を降りると、すぐ左手に会場があった。直通と書いてあったが、正にその通りであった。そのため探す余地もなく、会場に到着。自動ドアを入ると、広場は沢山の人で賑わっている。大量に並ぶお筝、十七絃。毛氈の引かれた舞台。大きなスクリーン。空気感も光の入り具合も、広さも全て良く、ここで弾くのか…と感動した。舞台にはお筝が並べてあり、調弦している音が聞こえる。

会場の様子


音の響きも最高にいいのである。また、プロの演奏家のため、一音いちおん、爪音が綺麗すぎて圧倒された。リハーサルでさえ、本番さながらの演奏…足元にも及ばないなと思った。
私の演奏させてもらう「風来壮烈」のリハーサル時間は14時。1時間前には会場に来るよう指示があったため、あと1時間半ほど時間に余裕があった。
一度、お土産屋さんに入る。ご当地のお菓子や、キーホルダー、ピアスなどが売られている。サッと目を通し、店を出ると、舞台上にいぶくろ聖志さんの姿が…
「飛騨によせる3つのバラード」のリハーサルの様だ。いぶくろさんの十七絃の音色が響き渡る。他のパートも福井県知事賞などを持っておられる名だたるメンバーで、演奏の質が良すぎる。
全員楽しそうに弾いているのが聞いているだけで分かる。お互いに呼吸を合わせようとしている空気感、良い物に仕上げたいという気持ちが見ていてとても勉強になる。
「あ、すみません、僕が間違えました」
と笑顔で自分をミスを申告するいぶくろさんというレアな物も見れて、今日本当にこんな凄い人と演奏するのだろうか、と疑問に思った。
プロの演奏に圧巻され、一旦落ち着くために、外に出る。何かご飯屋さんはないものか…

とりあえず、右に行ってみる。特にこれと言ったお店はなく、駐車場が並ぶばかりで、直ぐに引き返す。左側に行くと飲食店が何店舗かあり、その一件に入った。
普段ならここでご飯を食べないという選択肢を取るのが私だが、プロの方と演奏するのに、空腹で集中出来ず、迷惑はかけられないし、せっかくここまで来たのなら美味しものを食べなければというマインドになっていた。

入店する。1人でご飯屋さんに入るのも怖かったのに普通に入れるようになった自分に少し感動した。
カウンターに案内される。
メニューを見ながら、近くにあるテレビを見る。奈良県のニュースが流れる。何やらお茶のイベントをしていた様だ。テレビから「奈良県」というワードを聞くだけで毎回ドキッとする。
ローカル番組もやっているが、関西とは違うテイストなのが面白い。
店に入る前に見ていたメニューにし、届くまでの間、友達に連絡を取る。緊張のあまり、大量に送り付けていた。ご飯もしっかり食べるように言われていたため、頼んだものが届くと、写真を撮ってすぐ様送る。

おろしうどんとミニちらし丼を食べる。美味しい。さすが、海のある県だ、新鮮度合いというか、普段奈良で食べるものとはやはり少し違うように感じた。
途中で暖かいお茶を飲みつつ、食べ終わる。
さて、リハーサルまでまだ時間はあるが、会場に戻ろうと思う。会計を済ませ、徒歩2分程の会場に向かった。

風来壮烈の前の、「飛騨によせる3つのバラード」の練習中であった。
時間を計って、超えた分は何処のパートのテンポを上げるか、ここのイメージはこうしたい、など、プロ同士で話をしておられる。イメージの共有はとても大切で、それを入念に行う姿がかっこよかった。

飛騨によせる3つのバラード リハ

会場は既に次の14時からのリハになっている風来壮烈に参加するメンバーが集まっていた。
自分で持ってきたお筝を調弦する方、貸し筝を調弦する方、様々であった。
ホールの真ん中には机が置かれ、本部というのだろうか、スタッフの方や後藤礼奈さんが座って居られ、調弦の終わったお筝に紙を貼っていた。
私もスタッフさんに声をかけ、少し待つよう言われたため、隅の方で声をかけられるのを待つことにした。
制服を着た学生さんや、楽譜を持った人が沢山いる。こんな大勢で弾けるという事が嬉しくてワクワクしてくる。高校の箏曲部時代、最高8人だったため、どんな音の大きさになって、合わせやすさ、合わせにくさになるのかとても興味があった。

中々声がかけられないまま、リハが始まる20分前になる。楽器の調弦は大丈夫なのだろうか?
少し不安に思い始めていると、スタッフさんの1人が
「お名前よろしいですか?」
と不安げな様子で声をかけられた。自分の名前を告げると、調弦はしたのか、確認が入る。まだだと伝えると、急いで箏の置いてある所に行き、取りに行く。バタバタと忙しそうにされているため、忘れられていたようだ。
「じゃあ、ここで調弦してね」
と長机に十七絃を置いてくださる。すると、礼奈さんが近づいてきて、「いつも見てます」と笑顔で伝えてくださる。一瞬何の事か理解出来ず静止する。
ん??え??SNSの事か?となり、咄嗟に
「え、ありがとうございます!わ、私もです!!」と返す。何故こんな凄い人に認知されているのかよく分からない…一時期、私が学校に指導に行くのを悩んでいた時に、フォロー外からアドバイスを下さった事はあった、だが、それ以降の関わりは特になく、私の一方的なフォローだけで終わっていたのである。

リハを見ていたおかげか、緊張が無くなってきていたのに、礼奈さんの発言1つで手が震え出す。だが、調弦しないといけない為、爪、チューナー、マイク、楽譜を取り出す。
貸し筝の十七絃は初めてだが、木目で見えにくい、弾きにくいは特に感じなかった。部活などで色んなお箏に慣れていてよかったなと感じた。
全て黄色の弦のため、五、十、3に赤の印を付け、押し音のある八の琴柱の左側にも印を付ける。
「終わった?」と確認が入り、返事をすると、奏者から見える所に「風来壮烈 十七絃②」と貼られる。番号を口頭と目視で確認する。
スタッフさんが「遅くなってごめんね」と言っておられるが「あ、いえ!全然大丈夫です!ありがとうございます」とペコペコしてリハの準備に入る。
私は話しかけにくい見た目をしているため、敢えて当日はクリアのコンタクトで来て、柔らかめの白を着たつもりなのだが…まぁ、忙しそうでバタバタしているし、これだけ参加者多かったら仕方ないかと思っていた。

風来壮烈 リハ

さて、風来壮烈のリハが始まることになり、楽器屋さんがお箏を並べてくださる。参加者はパーテーションの中へ。いぶくろさんは舞台上でマイクを持って、トークの時間や配置などの確認をしておられる。
「僕は前の演奏終わったら、ここに出てきてマイクは誰から預かればいいですか?」
「僕の立ち位置はこの辺でいいですか?」
など見栄え、効率も含めて確認をする。流石、舞台慣れされているだけあって、必要確認事項が明確で素晴らしい。
確認している間に楽器の配置が終わる。舞台袖の参加者には、スタッフより「楽器を並べ終えて、入っていいという合図があるまでここで待機です」と伝えられる。
「じゃあ、奥(上手)から順に入ってきて貰って良いですか?」といぶくろさんが伝えるが、私たち参加者は何処に何番の楽器が置いてあるか知らないため、全員頭にハテナが浮かぶ。それをすぐさま感じ取ったいぶくろさんは、
「あ、皆何処に配置されてるか知らないのか、えっとじゃあ、三箏○○さん、○○さん、○○さん…」と順に呼ばれ、狭い場所を譲り合いながら入っていく。
「じゃあ最後に十七絃の方入ってもらって…」
と配置につく。5面の十七絃は真ん中をいぶくろさんとし、左右に2人ずつ。そして、まさかのいぶくろさんの右側が私という奇跡の配置になった。
もう脳内はパニックである。顔には出さないように普段通りを演じる

いぶくろさんは自分の立ち位置確認のために、前に出ておられる。
「じゃあ、僕はここで話してから、自分の場所に…あ、僕、宙に浮かないと自分の所行けないですね😂えっとじゃあ、楽器運ばれる前に後ろに行って話しましょうか。それでもいいですか?」
と自分の動線を確認しておられる。私は宙に浮くいぶくろさんを想像して少し笑ってしまった。なんという可愛さなんだ…
細かな修正もしつつ、演奏者全員の位置、入り方を確認し終わると、いぶくろさんは舞台から降り、
「僕抜きで皆さんの演奏を何回か聞かせていただきますね」
と言い、全員の前に立つ。
合図を出す人も決まり、お辞儀をするタイミングも練習する。
さて、最初の合奏。合図が出される。
貸し箏の人が多く、初対面のため、探り探りのテンポ感、リズムもあまり上がっていかず、十七絃ソロに関しては合図を誰が出すかきまっていなかったため、ヌルッとした気持ち悪い入りになってしまい、全体的に何とか弾ききったという印象であった。

それを全て理解しているいぶくろさんは、合奏自体の否定はせず、曲想の説明をして下さる。
この曲は水野勝成という人の生き方をモチーフにしており、最初の入りは一人で歩いている所が表現され、段々二箏、三箏が入り歩兵が後ろからついてくる。十七絃は地響きを表すとのことだった。
この曲想説明のおかげで、十七絃は重く響かせるようにするのがベストであるという事が分かる。
その後のパートは鍔迫り合いをしており、静かになる所は、何日も続く戦の夜を表しており、星の瞬きで静かなイメージ。十七絃ソロからまた盛り上がり…など丁寧に説明してくださった。
曲想を全員で一致させ、2回目の合奏。
合図が入る。一箏メロディの十七絃は頭の一音、戦場に足を踏み入れた重たさを全員が表現する。鍔迫り合いは軽く弾み、夜は静かに過ごす。また戦が再開し、盛り上がる。最後は力強く生きた様を見せる…
2回目は1回目が嘘だったかの様な揃いようであった。曲想を理解するだけで、自分だけでなく周りもこれだけ音が変わるのか。と音楽の可能性と曲想を練る大切さを感じた。
ここで、また細かな調整と指導が入る。メロディパートを後ろに引っ張ってしまっているパートの注意や、リズムが走っている所など、全員で再度確認をする。
十七絃のソロからもう一度やろうと言うことになり、最後まで通す。
合図を出す人が決まっておらず、またヌルッと入る。最初のピチカートで誰かが始めるという、なんともバランスの悪い感じだった。テンポを上げ、三箏が入る。段々盛り上がっていく…
「うん、よく持ち直したね😂途中で止めようかと思ったけど、本番でもこういう事あるから試しに最後までやって貰いました。でも、段々曲想は掴めてきてるし、いい感じになってきてるね。もう1回十七絃ソロからやろうか」
といぶくろさんが仰られる。今のぐしゃぐしゃ加減は私も冷や汗が出たほどである…本当によく立て直したと思った。これも舞台慣れ、合奏慣れしてるメンバーのおかげだと思う。
日当たりの良い場所のため、これだけ人が密集してると段々暑くなってきて、腕まくりをする人が増える。
また十七絃ソロから入る時は女子高校生が合図を出してくれて、すんなり入ることが出来た。
何度も弾くにつれ、曲想理解も更に深まり、周りの音と合うようになっていった。
いぶくろさんが合流する前に何か質問あるかと聞かれたが、皆特に無く…でも、私は十七絃の合図どうしようと悩んでいたのである。

「よし、じゃあ、僕もはいりますね」
いぶくろさんはそう言うと自分のポジションについた。座るとすぐさま、左右にいる十七絃担当に「僕が合図出していい?」と顔をちゃんと見て確認してくださった。
皆頷く。私は目が合ったことにテンパる。推しが横に座って笑顔で目が合うって何事…??脳内で暴れ回ったが、合奏に集中せねば…感情を隠すのが上手くて良かったと思った。

「じゃあ、僕はここで話してるので、座ったのを確認したら、合図と共にお辞儀です。1、2、3、4、5…はい、合図お願いします」
風来壮烈の完全リハが始まった。順調に進み、戦の夜。重たくならないように軽く軽く。他のパートを後ろから支えるイメージで…
十七絃ソロ、いぶくろさんを見て、合図で一緒に入る。これぞ私が待ちに待った瞬間である。私は元から箏曲の音源を大音量で聞いて、人の息を吸う音、合図の音、ページをめくる音、息を飲む音を聞くのが大好きだった。それがついに、推しのを生で、しかも隣で聞けたのである。母親に駅まで送って貰う時もずっと合図の話をしていたくらいだ。入りやすい合図の出し方、息を吸うタイミング、入るまでの間のとり方、全てが美しく計算され、プロの技を見た瞬間だった。
演奏の途中、首を傾げて、調弦を直しておられたが、何か不具合でもあったのだろうか?
そして、いぶくろさんが入った演奏は凄くまとまっていて、全てにおいて入りやすく弾きやすかった。さっきまでは、十七絃パートの真ん中が不在で、音が聞こえにくく、三箏の音も取れなかったため、不安定だったが、全員がいぶくろさんの音を聞いているという意識の向き方を凄く感じた。

余韻を残し、音を消す。
「はい、弾き終わりました。手を膝に置いて、お辞儀。これが一連の流れになります。すみません、僕の調弦ちょっとズレてたみたいで、最初変になっちゃいました。」
と自分の非を認め、どのタイミングで前の曲から調弦を直すのか、効率の良さは、など確認される。
演奏が終わると周りから拍手が起こる。曲になっていた様だ。
更に細かな修正が入る。優しい表現にしたい所は「合わせ爪じゃなくて、トレモロでもいいくらいなんです。弾きにくいので合わせ爪にしましたが…」とトレモロを実際にしながら表現を教えてくださる。その和音のトレモロが凄く綺麗で音の粒の揃い方も良くて、プロの凄さを再度感じる。
段々曲想に近づいて来ているのが分かる。回数を重ねる毎に良くなる演奏、本当に今日出会ったのが初めてなのか?と思わせるような、全員の吸収力、集中力、向上心…学ぶ所しかない。
また何度か弾き、リハ終了の時間が近づく。
「じゃあ、あと何回かやって終わるので、皆さん自分で調弦取れるんですかね?一度見てもらって良いですか?」
といぶくろさんが指示を出し、一斉にチューナーを取りに行く。舞台には爪と楽譜以外持って入らないように言われていたのである。
周りにいる人に「すみません」と言いながら、舞台から降り、急いでチューナーを持って戻る。十七絃は何せ弦の本数が多いため、調弦に時間がかかる…チューナーのマイクを出している暇が無かったため、そのままやっていると、右隣に座っていた参加者さんが
「マイク使います?」
と声をかけてくださる。手元にマイクはあったため、
「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
と調弦をしながら顔だけそちらに向け、お礼を伝える。周りを見れている奏者が多い事に感心する。

「最後に通しますね」
その声を聞き、お辞儀の練習をし、最後の合奏へと入る。全員が更に集中して、真剣に弾き切る。
「うん、よしじゃあ、お箏持って捌けれる人は履けてください。本番も同じような感じになります」
と最終確認を行い、舞台から降りた。
あっという間の1時間練習であった。右親指と左薬指がジンジンと痛む。だが、これは楽しさ嬉しさを含んだ痛みで、自分が頑張った証だと思っている。

リハ終了~黄昏

さて、風来壮烈のリハが終わり次は「新時代」のリハの時間となる。私は楽譜と爪、チューナーなどを片付けていると、声をかけられる。
「普段カッコイイ格好でお箏弾いてる方ですか?」
と。この方は、さっきのリハで横におられ、マイクを貸そうとして下さった同じ十七絃担当の方だ。一瞬、何事か分からず考えたが、思い当たるのはスーツか?と思い
「赤スーツですか?」
と問う。すると、そうだと答えが返ってきた。SNSを見てくださっているとの事だ。通りで会場に入った時からよく目が合うと思った。風来壮烈の楽譜を持っておられたから、同じリハ時間かと思って見ていたが、まさかSNSで認知されていたとは…
あまりの嬉しさで名刺をお渡しする。Twitter(現X)を見てくださってるらしく、アカウント名を教えてもらう。プロフィールを見ると、フォローされていますの文字が…私は気づいていなかったようだ。目の前でフォローを返す。十七絃をメインでやっておられるらしく、その話で少し盛り上がる。(以下 しんいちさん と明記。レポに名前が出ることは了承済)
「この後の新時代出られるんですよね?私もうちょっとだけここにいるので、見てますね!頑張ってください💪」と言ってリハに行かれるのを見送る。
そして、礼奈さんに認知されていたこと、いぶくろさんと目が合ったこと、ポジションが横のこと、友達が出来た事をすぐさま家族のグループLINEに送る。ひとりぼっちで福井まで来ているため、この興奮は文字にしか表せないのである。

当時のTwitterのアイコン
(普段から舞台でよく使用しているスーツ)

モニターに写った風来壮烈の演奏者の名前を見ると、なんと憧れのいぶくろ聖志さんの横に私の名前が!?こんな事ってある??奇跡では?どういう世界線だ?と思いながら、写真に収める。(それがサムネイルです)どういう名前の順なのかは不明だが、嬉しく思う。

そうこうしてる間に舞台上では、新時代のセッティングが終わり、演奏者が入っていく。
ここからは編曲を担当された後藤礼奈さんが指揮を執る。
いぶくろさんと同様、参加者の演奏をまず聞く。細かい注意が入る。さっきまでは自分は舞台にいたが、客席にいて客観的に見ても全員の表現を忠実に再現しようという気持ちが伝わってくる。向上心の塊しかこの場にはいないのか?そうに違いない。
1つ注意が入る度演奏の質は良くなっていく。冒頭、ソロが入ってからの力強い十七絃の音はそれはもう素晴らしいもので、編曲した礼奈さんも表現していく参加者も皆凄いと思った。
まばらだった演奏が段々曲になっていく。自分が弾かなくても聞こえる生のお箏の音が心地よすぎる。

暫く聞いていたが、リハ終わったのにこの場に居るのは迷惑かなと思い、離れて再度お土産屋さんに入る。さっき寄った時に一目惚れしたピアスを買うことにした。少し値段がするからという理由で一目惚れした物を買わないのは勿体ないなと思ったのである。ちゃんと種類、形を見て2つ購入した。メガネと同じ素材で出来ているそうだ。

一目惚れで買った🐇と🦖のピアス

沢山の初対面の方に会い、推しと目が合い、全力で何回も合奏をして少し疲弊した為、気分転換にと、会場周辺を散歩することにした。日差しは熱いが風が心地よい。
適当に歩いていると、大きな川と橋を見つける。その近くで子供が何かを見てはしゃいでいると思ったら、川に鴨が来ている様で優雅に泳いでいた。
田舎過ぎない、こののどかさ。それを見て心が癒された。春になり咲いた、たんぽぽ、オオイヌノフグリ、桜、菜の花、聞こえてくる川の流れる音。この雰囲気が奈良にはないとても良いもので、数ヶ月ぶりにボーッと景色を見るだけの時間を過ごす。
頭が空っぽになったのはいつぶりだろう。いつもパンク寸前になるまで色んなことを考えているのに、この景色を見てる今、ただ周りを知覚しているだけ。頭が軽い、気持ちも軽い。そうか、私にはこういう時間が必要だったのか…そう感じさせる程だった。
歩く度に自分の足元から聞こえる砂利の音、遠くから聞こえる車の音、鴨が川から飛び立つ音、暖かい日差し、涼しい風。それを感じながら、河川敷に座る。
とりあえず、毎日のノルマである韓国語の勉強をしようとアプリを起動し、15分程度勉強をする。遠いところに来てまで勉強する私は変なやつである。
その後もただ、景色を眺め、風を感じるだけであった。

河川敷での黄昏
河川敷から帰る時に見つけた桜と夕日

段々日も落ち、肌寒くなってきた。一旦会場に戻ろう。軽くなった頭と体を上げる。帰り道、桜が落ちているのを見かけ、夕日と共に写真を撮る。普段こんないい感じの写真を撮れるほど、私に余裕はあったんだろうか、そう思わせる1枚であった。

元来た道を戻る。会場では、賞受賞者、コンクール審査員の方々のリハーサルが引き続き行われていた。「組曲 福井」名だたる演奏者メンバーで、福井の情景がすごく伝わる迫力のある曲であった。
モニターには、第何楽章という文字と、イメージ写真が映し出されている。そのイメージを忠実に再現するのがプロであり、その演奏力の高さに感動した。ここでリハを聞きすぎたら当日楽しくなるなるかもしれないなと思いつつ、19時半からある交流会までどうやって過ごすか考える。
予約しているホテルは会場のすぐ目の前だが、チェックイン予定時刻を21時にしており、荷物を預けるくらいしか出来ないのかと落胆していた。にしてもこの何もすることがない時間暇だな…会場のソファに座ってリハを聞きながら、SNSを巡回する。
会場の作りなどを見ながらキョロキョロしていると、扉から出てきた いぶくろさんと目が合う。いつの間に移動していたんだ。さっきまで舞台上にいたではないか…挙動不審になっていると、向こうから会釈してくださり、会釈を返す。うん、絶対今私の顔キモかった。
これ以上、いぶくろさんと目が合ったら益々キモくなるだけだと思い、ホテルに1度行く。持ってきていたリュックを預けるのだ。
「すみません、9時チェックイン予定なんですけど、荷物だけ預けても良いですか?」
そう聞くと、フロントのお兄さんは新人だったのか、上司っぽい人が出てくる。
「チェックインはされないんですか?」
と聞かれる。
???チェックイン9時予定だったら、9時にしか入れないんじゃないのか?ホテルとか泊まったことないから分からん。
「え、できるんですか…?あ、チェックインしても外出れるしな…あ、もう入ります」
と訳分からん返答をした。タッチパネルでチェックインするようだ。手続きを済ませ、部屋に向かうためにエレベーターに行くと、呼び止められる。
ホテルの注意事項と、女性用大浴場の暗証番号を渡し忘れたみたいだ。それを預かり、エレベーターに乗る。
部屋に着く。おぉ、これがオートロック…使い方が分からん、カードを刺すと電気つけれるのか、凄い仕組みだな…にしてもだ、この広さ、綺麗さ、禁煙スペース、朝食付きで7000円…安すぎる…感動してSNSに投稿する。

ホテルの内装

とりあえず、さっき使ったモバイルバッテリーを充電する。帰ってきたら直ぐにお風呂に行けるように着替えなどを準備して、交流会の会場をマップアプリで調べる。ここから歩いてすぐの様だ。19時にここを出れば間に合うだろう。リハを聞いている時に、スタッフさん達が「7時にここを出ま〜す!」と言っておられたので、そのメンバーについて行けばとりあえずたどり着けるだろうと考えたのである。

部屋を出る時間になるまで、SNSの更新や荷物の整理、ホテルの注意事項を読んだりして過ごす。
さて、19時になった。ホテルを出よう。

交流会~就寝まで

ホテルを出ると目の前が会場なので、丁度会場から出てきたスタッフさん、コンクール審査員、受賞者の集まりを見つける。しれっと混ざってついて行く。歩くのがゆっくりな方を抜かしていき、気がついたら、目の前にいぶくろさんがいた。
めちゃくちゃ大きいリュックを背負っておられる…そして、服がとてもオシャレで、楽器屋さんと仲良さそうに和楽器について語っておられる。常に前を見ているその姿、とても尊敬する。そして、自分は凄いんだぞと見栄を張っておらず、皆と平等なのもまた素敵だ。
ボッチを極めて、ただ後ろを着いていくと、知らぬ間に会場に到着する。

交流会の会場

靴を脱ぐときにまたいぶくろさんと目が合ってしまい、軽く会釈する。あ、すみません、ストーカーとかでは無いんです…行く方向が一緒なので…
いぶくろさんは「懐かしいなぁ」と呟き、会場の写真を撮り、階段を上がって3階に向かう。(懐かしいな、の意味はいぶくろさんのnoteを読んだら分かります)
大広間で開催するようだ。

こんなすごい人たちが沢山いて、私の席はあるのか?と不安になる。(出席連絡してるから絶対にある)まず、受賞者などの凄い方々が右奥の机に座られる。6人座れる机が6個ある部屋であった。
これは誰か知ってる人の横に座らねば死ぬ!と思い、朝声をかけてくれたしんいちさんを待つ。だが…
「貴方1人で遠い所から来てるでしょ!こっち座りなさい」
と呼ばれ、遠慮はしたものの、案内されてしまう。目の前には高杉真宙似のイケメン奏者、菊重弦生さんがおられる…いや、絶対私ここじゃないじゃん、この横のいぶくろさん、礼奈さん、知事賞を持ってる坂本琴音さん達の席の方が場違いなので、それよりは良いが、絶対にここじゃない…もっと入口に近い席にしてくれ…と思っていると…
弦生さんが気を使って話しかけてくださる。なんということだ。顔が良すぎる上に声まで綺麗で、優しさまであると…すげぇ人だな。
どこから来たのか、いつからお箏をやっているのか、所属していた箏曲部は強いのかなどの話をする。またこれが、弦生さんの話を聞く態度が姿勢がとても良く、人の目を見る、話を広げる、頷く、笑うなど、もう全てにおいて天才なのである。
私はテンパり過ぎているため、「げんき」はどんな漢字なのか、菊重精峰先生と芸名の苗字が一緒だが、関係性は?などとアホなことを聞く。

すると、他の参加者さんの方も座りに来られて、弦生さんの目の前から1つズレた席に移る。
「お話の途中でした?すみません」と言われ
「「あ、いえ…」」と二人して声を揃えて伝えたあと、弦生さんから「息子です」と目を見て言われる。いや、そりゃそうでしょ、さっきのお箏始めたきっかけの所で「父がやっていて…」ってあったでしょうに…無知な自分を晒し、羞恥していると、全員座ったのか、交流会が始まった。
このコンサートをやることになった理由、コンクールの存在意義、審査員(いぶくろさん、池上先生)の凄さ、ジャポニズム復興会の成り立ちなどを聞く。
これだけ和楽器に熱い想いを持っている人が多いという事にまず感動した。同年代も沢山いて、私だけ細々とやっているのかと思っていたが、外に出て見れば、こんなにも沢山の和楽器を愛する人がいる事を嬉しく思った。和楽器をやる人口が減っている、雑に扱われているなど、邦楽業界の現状を知りつつ、それを食い止めたい熱い人達が集まっているのがこの場所なのだと思った。類は友を呼ぶ、正にその通りである。熱い想いがあるから熱い人が集まるし、私のその中の一人なのである。

そして、まさかの私の左隣は池上先生なのである。あのリハで圧巻された「組曲 福井」を作っておられる方である。残念なことに曲を弾かせてもらったことはないが、曲想が好きになったので、何かやってみたいと思う。
まず、飲み物が出される。ビールかお茶かという選択肢でお茶を隣の方がついでくださる。
乾杯の音頭はいぶくろさんと決まる。ジャポニズムの集まりでは、乾杯ではなく、「弥栄(いやさか)」というそうだ。
博識ないぶくろさんはその説明をし、皆で
「弥栄〜!」
と言い乾杯をした。その後いぶくろさんは掛け声どう伸ばしたら良いのか分からなかったと笑っておられて可愛い。
暫くするとお造りを持ってきて下さる。それを食べながら、色んな方の話を聞く。隣の方がどこから来られたのか聞いて下さり、奈良県だと答える。すると、親族が奈良県の吉野にいるそうでその話を楽しそうにして下さる。吉野もまたいい所なのである。
何話していいのか分からない私は、ただひたすら話を聞いていた。
池上先生が福井愛をすごく語っておられて、福井県民に凄すぎると言われている程だった。私は池上先生の話を聞いて、東尋坊が福井県にある事を知ったほどなのに…(笑)ほんと地理が駄目すぎる…
先生のお話を聞いていると、好きなものを曲にする良さを知る。好きなものを好きな時に形に残すのは難しいが、音楽なら、その時の感情のまま残せるのである。組曲 福井を聞いた後にこのお話を聞くと、より一層福井の良さを知れて、私もどんどん好きになっていった。
その後、鍋が届いたり、肉が届いたりする。ちょっとずつ食べながら、お話をひたすら聞く。
なんと、飲み物も飲み放題らしく、お茶、ビールの他、チューハイやハイボールも飲めるそうで、スタッフの方が飲み物の名称を大声で言い、皆が手を上げるという賑やかな空気になって行く。
いぶくろさんも「は〜い!じゃあ、僕ハイボール!(ハイボールだったかちょっと定かでは無い、ソーダ、チューハイだった気もする…)」と元気に挙手されていて、可愛すぎて悶えた。
私はお酒が飲めないので、お茶を頂いており、途中でノンアルコールビールを注いで貰ったが、やはり味が駄目で飲めなかった…
すると、スタッフさんが池上先生の横にこられて、「初めて会う人達ばかりだから、自己紹介の時間を作るので、先生トリでお願いします」
という様な内容を話していた。先生はトリする様な柄ではないと言っておられたが、押しに負けて、大トリになった。

「じゃあ、この辺で自己紹介タイムにしたいと思います!一人2分くらいで話してください!」
そう伝えられた。2分長いと言っている人もいたが、私からすると短すぎて何話したらいいのか迷ってしまう程だった。どう簡潔に自分の活動の話をしたらいいのか。それをずっと考えた。
リハの時から気になっていた人の自己紹介などが聞けてとても楽しい。途中、池上先生がタバコを吸いに、いぶくろさんを誘い、居なくなってしまった。
私の番が来たらいぶくろさんに伝えたい事だらけだったので、「戻ってこい戻ってこい」とずっと念だけ送る。
気になることは突っ込みを入れられて深堀されるという何とも面白い自己紹介で、簡潔に説明される方、経歴を話す方、活動内容を話す方、多種多様で面白かった。お筝をやった事のないスタッフさんも今日で、和楽器の世界を沢山知れて好きになったと言ってくれていて、とても嬉しくなった。

いぶくろさんの番になる。まず、お筝を始めた学生時代の話、楽器屋さんでのバイトの話、和楽器バンドの話になる。売れた理由は?と聞かれ、「いい意味でメンバーが和楽器を持ち上げてくれなかった事ですかね?」と言っておられた。
「この曲やるから、ドラムと太鼓入れてきたから後よろしくって渡されて、お筝では到底弾けないようなテンポで、指使いも凄く工夫しないといけなくて…1曲の間に5小節しかパートがないとか、4回転調があるとかあって…ほんとに和楽器の事は考えず、やりたい音楽をやってるって感じで、それが和楽器感がいい意味でなくて、キャッチーで良かったんじゃないかなと僕は思います」
そう仰られた。確かに言ってる通りだと思った。
吉原ラメントや千本桜の様に曲想に合わせて、和楽器感満載なのも良いが、バンドの中にあるアクセントとして聞こえてくる和楽器も乙なものである。
すると、誰かが「やっぱりボーカルの奥さんの力もあっての…?」と少しニヤニヤしながら言う。

すると、いぶくろさんは
「確かに、ボーカルの力は大きいと思います。ボーカルが僕の奥さんなんですけど…あ、公表してるので言ってもらって大丈夫です」
とさっきとは少し違う柔らかい笑顔でそう言う。皆「ふぅ〜!」と少し茶化す。いぶくろさんの口から「僕の奥さん」って聞ける世界線…え、それやばくないか?最高なんだが…
そして、今回のコンサートの話になる。三味線を舞台で弾くのが初めてらしく、自分も新しいことに挑戦させてもらっています。と仰っていた。
そんないぶくろさんの三味線初舞台を生で見れるとは…感動である。三味線は池上先生に数回ご指導頂いたそうで、楽器は借りるそうだ。「そんな数回で黒髪弾けるの?大丈夫ですか、池上先生」と代表の方に問われ、池上先生は「う〜ん、分からないです」と笑っていた。
私はお箏に比べると三味線があまり得意では無いので、とても楽しみだと思った。

いぶくろさんの自己紹介も終わり、他の方々に移る。そして、遂に私の番だ。心臓がバクバクしているのが分かる。だが、ここまで来たんだ、後悔のないように全部話さないと!と覚悟を決める。
大勢の注目を浴びる中、1人で起立する。

「奈良県から参りました、坂本みのりです」
そう言うと、聞き取りにくかったのか「ん?何県?」と聞き直される。もう一度奈良県と伝え、再び話をする。
「恥ずかしながら、このコンクールの事も、ジャポニズムの事も知らなくて、いぶくろ聖志さんのSNSを見て、応募させてもらったのがきっかけです」
そう言っていぶくろさんの方を見ると、目が合い、笑顔で軽く会釈して下さる。人の話を聞く態度も素晴らしすぎる。…話を続ける。
「流派は宮城で、普段はフルタイムで介護福祉士の仕事をしています」
フルタイム勤務、ましてや、世間的にしんどいと思われている介護福祉士が意外だったのか、「おぉ…」と一瞬場がどよめく。だが、私の意外性、凄い所はここでは無い。ここからが本題だ。

「ちょっと性別がよく分からん見た目してるんですけど…一応女で…」と言うと、「いや分かるよ!大丈夫!」と声が上がる。その中で少し頷いてる人もいて、やはり性別が分かりにくいようだ。
「LGBTQ、セクシャルマイノリティ当事者でして、去年の4月に発達障害を持ってる津軽三味線やってる相方とユニットを結成しました」
関心の声があがる。ユニット名は?とすかさず聞いてくださる。先に自己紹介された方でユニット組んでるのに名前が決まっていない方がいたから、気になるようだ。
「みつば です」
そう答えると、由来は?と更に踏み込んで聞いて下さる。
「色んな意味を込めてるんですが、相方のほなみのみ、私のみのりのみ、津軽三味線の3弦の3、お筝の13弦の3からとってきたもので、また、三葉は自然界で傷つくことで四葉になるそうで、私たちマイノリティは偏見で傷つきやすい世の中でも皆さんに幸せを届けられる四葉のクローバーになろうという意味です」
熱い気持ちを持って、顔が熱くなっているのも分かるが、必死に伝える。周りから、また「おぉ!」と聞こえ、賞賛してくださる。
「あと、今年の2月にもう1つユニット組みまして、ダンサーの友達と組んでるんですけど、その子もマイノリティ当事者で、Openly Styleというかっこいい名前つけてます。由来はOpenlyが偏見なく、何でも話す、Styleはお筝の流派やダンスのジャンルに囚われないという意味です。両方ともSNSを中心に活動してます!」
Openly Styleについても説明する。皆が私の話に興味を持ってくれているのがよく分かる、視線の向き方がさっきと全然違うのだ。
「SNSでの活動っていうけど、どうやって調べたら出てくるの?」
と何とも有難い質問を投げかけてくださる。
「あ、今日、名刺持ってきてるので、私に声掛けてもらったらお渡しします」
そう言ってズボンの右ポケットに入れた名刺入れを取り出して見せた。
「将来、音楽で食べていくのが夢なので、何でも呼んでください!明日は、風来壮烈の十七絃を担当させて頂きますので、よろしくお願いします」
最後まで伝えきった。拍手が起こる。私の言いたいことは言った、後は誰にどこまで伝わったかだ。
風来壮烈に参加する事を伝えた時、またいぶくろさんと目が合って、にこやかに会釈して下さった
どうして、そんなに素敵な人なんだろうか…その時点で感極まっていた。手が震えているのを自覚しながら座り、代表の方々の話に移る。

全員の自己紹介が終わり、再び食事に戻る。締めのうどんが全席減っていないのだ。
スタッフの方が、「○○ホテルの方は車手配してるので順番に降りてきてください!」と言っておられる。自己紹介タイムがあまりにも盛り上がりすぎて、少し時間をオーバーしているのだ。
県知事賞を貰った方、審査員の方達はホテルが準備されているらしく帰る準備をし始めた。
各々立ち上がり、挨拶をして回っておられる。
すると…いぶくろさんがこちらの席に向かってこられる。後ろで手を組んで、スキップかのような軽い足取りで…私の隣におられる池上先生にお話か?にしても、足取り軽すぎないか??と疑問に思っていると、立っている私の右横に来て、
「名刺、く〜ださいっ」
と目を見て笑顔で言われる。え、どういうこと??何が起こってる?今私がすることは何?目の前にいる人いぶくろさん…?どういう事??と1秒程で色々考えパニくる。
「え、え、良いんですか…」
とか細い声で言う。もうキモオタである。
名刺を1枚お渡しすると、「じゃあ、僕も…」と言って丁寧に両手を添えて名刺を渡してくださる。その名刺がカッコイイのなんのって…!名刺って非売品だから、その人から直接頂かないと貰えないもので、今、それを手にしてしまったことに感動を覚える。
せっかく、10年間も憧れたいぶくろさんが目の前にいるのだ、勇気を振り絞って伝える。
「お写真とかっていいですか?」
「全然良いですよ!」
オタクが吹き飛んでしまいそうなキラキラした笑顔で答えて下さる、尊い…無理…
ノーマルカメラは嫌なので、色味が変わって、肌加工をしてくれるフィルターを準備する。
頑張って自撮りしようとするが、画角が分からない、いぶくろさんの方が背が高いので、どうしたら良いのか分からず首を傾げる。
すると、前にいた参加者のお母様が「撮りましょうか?」と声をかけてくださる。だが、他撮りで自分の写りが分からない状態で撮られるのは嫌だったので
「あ、大丈夫です、頑張ります」
と変な答え方をする。それを聞いていたいぶくろさんは、
「じゃあ、僕が撮ろうか?」と手を出して下さる…え?推しに携帯を渡すという事ですか??確かにいぶくろさんの方が背が高いし、撮り慣れておられるのだが…迷わず携帯を渡す。
「はい、じゃあ、撮るね」と言って撮ってくださる。

初のツーショット📸

あぁ、尊い…推しの笑顔が1番尊い…やばい、と思いながら携帯を返して貰い、少しお話をする。
「えっと、10年前からずっと見てます!」
ここを「見てます」か「好きです」かどっちで言ったのか覚えていない。
「私、お箏始めたのこの音とまれ!がきっかけで…」
と言うと、
「あ、じゃあ、龍星群とか?」
と聞いてくださる。
「そうです。それで、前から和楽器バンドは知ってて、龍星群聞いた時に、一箏の人上手いなと思って調べたらいぶくろさんで、その時から見てます」
といっぱいいっぱいになりながら伝える。
そんなオタクの話を終始笑顔で聞いてくださるいぶくろさん。
「そうなんだ!ありがとう。あ、そういえば、なんか色々してそうだよね、SNS見てもいい?」と聞いてくださる。
「全然、どうぞ」
と伝え、名刺渡す時にお伝えした裏にSNSのQRコードがある事をもう一度伝える。
Twitterを開き、「これ?」と私のアカウントを開いて見せてくださる。「あ、それです」と答えると
「うん、分かった、後で見とくね、フォローしとく」と言われ、目の前でフォローされる。
「え、あ、え?あ、ありがとうございます、そ、そんな」
とテンパりが段々隠せなくなってくる。いや、興奮のあまり、Twitter、Instagramに推し(いぶくろさん)の事を書き込んでいたので、それ大丈夫かな、と急に不安になる。
「あ、あの、いぶくろさんの為なら本当にどこでも行くので、何でも呼んでください!」
と伝える。
「うん、分かった、じゃあ、僕もいつでも呼んでね」
と言われる。え???いや、いぶくろさんイベントに呼ぶって、え?こんな下っ端が呼んでいいのか???は????いぶくろさん呼んだら1回でいくらするんだ…
「え、いや、あ、そんな…そんな…こちらこそです…」
もう訳が分からず、自分でも何話してるのか分からない。
「あ、あと!SNSにメンションしたり顔出しとかって大丈夫ですか?」
と聞く。
「うん、何でも大丈夫だよ」
とまたにこやかに答えて下さり、私は昇天寸前である。


そこでまた、スタッフさんから送迎車の話があり
いぶくろさんとは別れる。最後に何か話したような気もするが、もう覚えていない、それどころではないのだ。明日よろしくお願いしますとか言ったのかな?ほんとに覚えていない。
いぶくろさんが傍を離れると、他の参加者さんが名刺くださいと声をかけてくださる。
「え、あ、良いんですか!ありがとうございます。よろしくお願いします、後ろにSNS載ってまして…名刺のイラストは自分で描きました」
といつも通りテンプレを言う。皆、流派のこと、イラストのことを褒めてくださる。とても嬉しい。

話したいと思っていた後藤礼奈さんを探して追いかける。
「礼奈さん!」
後ろから声をかけ、呼び止める。
「奈良県から来た坂本みのりです、お写真よろしいですか?」
と聞く。快く承諾してくださり、フィルター付きカメラを準備すると
「あ、綺麗に写してくれるやつだ〜」
と可愛い反応。もちろんですよ!と笑って返す。

後藤礼奈さんとツーショット📸

「ありがとうございます!いつも見てます!お筝やってない友達もTikTokでお筝やってる人出てきたよって教えてくれるくらい、礼奈さんの活動見させてもらってて、もっと友達に見てもらえるように布教しますね」
とありえない熱量と早口で言う。
「うん、ありがとうございます」
と優しい笑顔で言ってくださる。キモオタにそんな素晴らしい対応してくださるのがやばい。
礼奈さんが帰られるのも見送り、他の参加者さんに声をかける。
県知事賞を受賞された、坂本琴音さん。このコンサート唯一の山田流の方で、日本文化を凄く愛しておられる方だ。山田流の方とお話してみたかったので、声をかけることが出来て良かった。
その後、机が一緒だった菊重弦生さんに声をかける。皆が帰る前、一番最初に名刺の準備をして下ってて、目が合ったのは分かっていたのだが、色んな方に声をかけられておられたので話せなかったのである。
「良かったら、名刺お渡ししてもいいですか?」
と聞き、交換して頂く。大阪の方なので是非何かあればお願いしますと伝える。とても気さくで素敵な方だ。

話しかけたいと思っていた方に声をかけ終わり、一度自分の席に戻る。大半の人はもう既に帰っておられる。すると、参加者のひとりの方が私の傍に隠れながら来て、
「自分も男も女も好きになれるんですけど、どうしたら良いですか?周りにそういう人いなくて…」
と聞いてくださった。とても不安そうな感じで、でも、仲間を見つけたという嬉しそうな感じも見てわかる。
「そうなんですね、勇気をだして話して下さりありがとうございます。私でよければご相談に乗りますので、いつでもご連絡ください」
そう言って名刺をお渡しする。すぐにこうやって勇気を出してくれたことへのお礼などを言える私は本当に成長したな、と思う。もう私がいっぱいいっぱい過ぎて泣きそうである。
私の活動してる意味はここにあったのだ。セクシャリティは誰しもが公表できる物ではなく、むしろ、偏見や差別が怖いから隠して生きる人の方が多い。その中、私に相談してくれた、カミングアウトしてくれた。それは凄い事なのである。振り絞っても足りない大きな勇気を出してくれたのだ。
少しでもその方の味方になれただろうか、私も未だに言うのは怖くて震えるし、視線も世間の意見も気になる。だが、こういう同じ悩みを持った人に手を差し伸べられる人間になりたいから公表して活動すると決めたのだ。

その方は、うんうんと頷き、またこっそりと自分の席に戻られた。
そうやって色んな人と話してる内に、もう数えるだけの人数しか会場に残っていない。残ってるのは、福井県在住の方やホテルが近い方などだった。
もう10時も超えたし、そろそろ帰るか…とカバンを持つ。残っておられる方に
「先に失礼します、明日よろしくお願いします!」
と笑顔で挨拶をし、階段をおりる。
色んな事が起きすぎて感極まっているため、帰り道友達に電話しようとLINEのトークを開いて、そのまま電源を落としておく。
玄関でスタッフの方と出会い、お礼などを伝え、靴を履く。
入口付近で、楽器屋さんご夫婦や団体のお偉い方などが談笑しておられる。
これをすり抜けてどうやって帰ろかと思っていると、1人の方が「名刺貰っていい?」と声をかけて下さる。もちろんです、とお答えし、その場の方全員に配ることにする。
団体のすごい方は、「お箏なんてさくらさくらしか弾けないけど」と仰られる。
「いや、でも、さくらさくら弾けるだけですごいですよ。お仕事も凄いことされてて尊敬します」
とお伝えすると、感心したような声が聞こえる。また、横にいた賑やかなスタッフさんにも渡そうとすると
「僕こそ、今日初めてお箏について知ったくらいなのに、貰っていいの?」
とご謙遜される。だが、私はこの方の自己紹介にとても感銘を受けていたので、その事をそのままお伝えする。
また関心の声が上がる。空気がまた柔らかくなったのを感じる。やはり褒め言葉を直接伝えるに限る。人のいい所を見つけるのがどんどん得意になってきているので、更に伸ばしていきたいと思った。
「すごいよね、なんかね、周りの人とオーラが違うんだよ、いぶくろさんと同じような、こう芸能人みたいな空気感があってね、でも、池上先生やいぶくろさんの様に一般人と同じ目線で話するでしょ、そこが凄いなと思ってたんだよ」
と言ってくださる。すると、その場にいた方全員が頷いておられる。
「うんうん、ほんとそうなんだよ、リハ前もマスクして立ってるだけで、オーラ凄すぎて近づけなくて、声かけるの遅くなってごめんね」
と言われる。
「いやいや、オーラとかそんな無いですよ、むしろなんか声掛けにくくてすみません」
なんて笑ってみせる。そうか、リハ前の調弦前に不思議そうに声かけられたのはそういう理由があったのかと思う。私は普通にしてただけなのだが、何やら人と違う空気感があったようだ。
「いぶくろさんと同じ空気感を持ってる」
と言ってくださったり、たくさん褒めてくださる。
「活動も凄いよな、いっぱい悩んだやろうし、でも、今後ろ見てないやろ、前しか見てないやろ?」
と聞かれ、
「思い返すとそうですね、今は振り返らず前に進むことしか考えてないです」
と即答する。実際にそうなのだ、イメチェンしてこうやって活動すると決めてから、多少落ちる日はあっても前しか見ていないのだ。
「この見た目もいいよね、僕最初オシャレな男の子いると思ってて😂この見た目から入る人がいてもいいと思う」
そう言ってくださる。やはりここでも男だと思われていたみたいだ。正直嬉しい、その人の見る性で捉えてもらって良いと思ってるから、それくらいでいいのだ。
「実際、前はもっとお箏やってる見た目やったんですけど、今はお箏やってなさそうな見た目で、しっかり10年やってるっていうのを持ち味にしてて、顔が好きだからって理由で和楽器知ってもらうのもありかなと思ってます」
と更に深い活動内容を話す。そして、過去の自分の写真を見せる。
すると全員声を揃えて「今の方がいい」と言ってくださる。私もそう思っているし、笑顔も今の方が心から笑えていて好きなのだ。

初めて出会った方にここまでたくさん褒めて頂き、活動の応援をして頂く事がなかったため、私の涙腺は崩壊寸前であった。ホテルまでの帰り道泣きながら歩いて帰ろうと心の中で思う。話の途中で何度泣きかけたことか。
さっきまで上で話し込んでいた楽器屋さんとしんいちさんも降りてきて、名刺をお渡しする。しまった、持ってきてる分なくなってしまった。20枚近く持ってきていたのに、そんなことあるのか…

また色んな話をしていると、最後までご飯を食べていたメンバーが出てくる。福井県内の方なので、車でホテルまで送りますよ、と言ってくださるが、お箏を教えたりしている程、大ベテランの凄い方のため、皆「いやいや、そんな!涼みがてら歩いて帰りますよ」と言う。
正直私ももう泣きそうなため、車に乗って一息ついたら終わる気しかしていなかったため、他の方に賛同する。

「さて、じゃあ、帰りますか」
と1人が言い、一斉に帰路に向かう。しんいちさんは横に来て下さり、普段してる仕事の話をして下さる。私が情報開示をしたことによって話しやすくなったみたいだ。似た職種のため、その話で盛り上がる。あと、ホテルがあの綺麗さ、駅近、朝食付きで1泊7000円安すぎますよね!?と少しはしゃぐ。本当に安すぎるのだ。

「お!ここなんかいい感じやな」
と楽器屋さんの一声で橋を渡る。橋から見える川とサイドの建物、月が綺麗で皆で感動する。
夜風の心地よい冷たさ、温まった心、凄く良い気分だ。私の涙も今は引っ込んでいる。
すると次は楽器屋さんが私の左横に来て下さる。
「俺の夢はな…」
と話し出される。歌舞伎を見に行くなら歌舞伎座があるけど、箏曲聞きに行きたいってなったらどこでやってるか分からないと言うのを勿体ないと思っておられるそうで、箏曲座みたいなのを作りたい。そして、そこに出る出演者みんなに出演費用を払えるようになりたい、と熱く語ってくださる。
音大、芸大を出た人は演奏技術は申し分ないけど、仕事の取り方を教えてもらってないから待ちスタンスが多くて、卒業していざそれで仕事するとなると、何も出来ない人が多くて勿体ない、プロが1回演奏いくらって決まったら、下の子達も決めやすいし、全員に平等に出演費用を出せるようになると思う。とたくさんお話して下さった。
実際に私も仕事しながら、音楽活動をしていて、演奏に呼んでもらえることはあっても、出演費用はないし、全ての準備、交通費は自費なのである。まず、演奏させて頂くにあっての、ギャランティーの交渉の仕方、相場を何も知らないのだ。それがしっかり形にしてもらう事が出来たら、もっともっと若い奏者が活躍できる場所が増えるんだと思う。

「和楽器の世界は上の人が下を蹴落すのもまだあるけど、そんな事してたら、邦楽業界終わっちゃうんよ、だから、もう皆で助け合っていくしかないんだよね。それを分かってくれてる師匠方に声をかけて色々活動したりしてるんだけど」
とそんな話もしてくれた。なんて熱い人なんだ、こんな思考の人に出会えたことを嬉しく思う。

また、途中でいぶくろさんの話もされていて、いぶくろさんが学生時代アルバイトしていたのが、その楽器屋さんなのである。舞台の準備のために一緒に汗流して…という思い出話もしてくださり、あんな大きく立派になって、と親心になっておられた。いぶくろさんの楽器屋さんと仲良さそうに話してるのはそういう事だったのか。

しっかり稼ぎたい奏者を探してると言っておられたので、私は何でもやるのでいつでも何処でも呼んでくださいと伝えた。今は経験が欲しいので!と。

そんな熱い話をずっとしていると気がつけば、ホテルの前に到着していた。
1人の方はこの後、飲みに行く予定があるらしく、解散する流れになる。だが、皆楽しすぎて離れがたくなっていた。
「今日は初めて会った人ばかりだったけど、明日は絆ができてるから、更にいい演奏になるんだろうな」
と1人の方が言い、皆頷く。これだけ想いを共有した仲だ、きっといい演奏になるに違いない。
「じゃあ、僕は飲みに行きますね!」
と言うが一向にその場を離れようとしない。
「えぇ〜!もう、すっごい楽しかった!」
とずっと言ってくれていて、私も嬉しく思う。和楽器の世界に触れてこなかった方なのに、そこまでよく思って頂いて、嬉しい限りだ。
なんやかんやしながら、しんいちさんとそのスタッフさんとホテルに入り、スタッフさんがチェックインだけするのを見守る。リアクションがいちいち可愛いので、見ていて楽しい。
「もう、早くカウンター行けっての!ってね!ごめんなさいね〜、めっちゃ待たせちゃってて」
とお茶目にカウンターの方と話してるのがまだ良い。
「飲みに行くの、お気をつけて!明日お願いします!」
そう言って、その方とは別れる。しんいちさんとエレベーターの前まで行き、
「何階です?」
と聞く。すると、なんとホテルの階まで一緒という(笑)そんな事ある?と思いながら、一緒にエレベーターに乗り、その階に着くと、しんいちさんは左へ、私は右へ。
「明日お願いします!おやすみなさい」
と挨拶をし、自分の部屋に入るためにカードキーを取り出し、タッチする。

鍵の開いた音を聞き、入室。明かりをつける。靴を脱ごうとした時、鏡をに写った自分が無理して笑顔を作っているのが分かる。それを見た途端、部屋に戻って気が緩んだのか、涙が止まらなくなった。
悲しい訳では無い、ただ心の穴や傷が埋まった気がしたのだ。
今まで楽しくなかった人生を何とかして変えて活動し始めたら、今日初めて会った人達に認めて貰えた。活動してる意味を見失いかけていた時に、少なからず人の助けにはなれた。自分の生きている意味を見つけられた気がして心がいっぱいになってしまった。
友達にLINEを送る、活動してる意味があった、色んな人に認めて貰えた、と。泣きすぎて画面もほぼ見えない。自分の嗚咽だけが聞こえる。
交流会に行く前にすぐに風呂に行こうと思って、机の上に準備したものはあまり意味をなさなかった。とりあえず歯磨きでもしようとするが、歯磨きをしていても涙は止まらなかった。
推しと演奏出来て、声をかけて貰えて、名刺を頂けて、フォローして下さって、SNSで私を見てくれている人がいて、セクシャルの悩みを打ち明けてくれる人がいて、過去の暗かった自分からは考えられないくらい明るく笑顔で活動内容を話して、色んな人が褒めて、認めてくれて…キャパオーバーするに決まっている。元からキャパのない私が処理できるはずがないのだ。
友達もまた、「よく頑張ったね」など優しい声掛けをしてくれる為、更に涙は止まらなくなった。

もうどれくらいの時間泣いていたのか分からないが、風呂に行こうと決心する。とりあえず、涙をふき、着替えなど必要な物を持って、大浴場へ。
この泣いた顔で誰にも会いたくないので、大浴場の扉のパスワードを呟きながら、俯きながら向かう。
暖簾をくぐると他の学生?さんの団体がおられて、一瞬ザワつく。
あ、すみません。女です。と言わんばかりの少し高めの声で「すいません…」と言いながら入る。
浴室は1人でまた泣きそうになるが、何とか涙をこらえる。温かい湯に漬かり、今日の疲れを癒しつつ思いを馳せる。十分に温まってから浴場を後にした。
部屋に戻ってからは、化粧水などを顔につけながら、動画を見て過ごし、明日、泣き腫らした顔で舞台には立てないので、しっかりマッサージをする。
明日の準備をして、布団に入る。
カーテンの隙間から入る明かりが少し眩しいが、「今日は凄いことがあったな…」としみじみ思いながら、気づいたら眠りについていた。

2024.04.14(日)

起床からコンサート終わり

7時過ぎ、アラームの音で起床。外はもう十分明るくなっていた。そうか、遂に本番かと思いながらテレビを付ける。家でこの時間にテレビを見ないためなんか新鮮な気分だ。今、大ブレイク中の芸人たちがトークをしている。芸能のタメになる話をしていて、うんうんと頷きながら、顔を洗って、日焼け止めを塗る程度の下準備をする。
服は上下とも真っ黒が舞台での指定のため、とりあえず黒シャツと黒のズボンだけを履き、少し肌寒いので昨日着ていた白のカーディガンを羽織った。

本番である今日は、母親、姉、従姉妹が見に来てくれる予定である。家族のグループLINEに名刺が無くなったことを伝え、予備を持ってきてもらうことにする。従姉妹にも昨日あったことをLINEでざっくりと話した。

さて、朝ごはんを食べに行こうと、まだボサボサの頭のままで、衣装も中途半端なまま、食堂へ向かう。
エレベーターで1階まで降りると、昨日ホテルまで一緒だったスタッフさんに会う。
「あ!おはようございます!昨日はありがとうございました、あの後飲みに行かれて何時に帰られたんですか?」
などと挨拶とたわいも無い話をする。昨夜で一気に知り合いが増えたため、居心地が良くなっているのが自分でも分かる。
少し話したあと、「今日宜しくお願いします、また後で」と伝え、食堂へ入る。
まだ比較的空いている時間のようで、お盆を手に取り、食べ物を取っていく。目移りするものが多くて困る…悩みながら取っていると、
「おはようございます!」
と声をかけられる。振り返ると礼奈さんがおられた。スタッフさんが泊まられている良い旅館におられると思っていたので、あまりの出来事に驚き、少し固まってから挨拶を返す。すっぴんでもお綺麗すぎてビックリするレベルだ…私もこうなりたい…としみじみ思いながら、席についた。
8時半を過ぎてくると段々人も増えてきて、食堂のスタッフさんが席の譲りあいなどを声掛けておられた。
黙々と食べているとまた、「おはようございます、昨日おったよね?」と後ろから声をかけられる。昨日名刺交換した上の立場におられるスタッフさんだった。
「あ、そうです、おはようございます!今日は宜しくお願いします」
とご挨拶をする。昨日のキメキメのビジュと違って、ボサボサすっぴんなのに何で気づけるんだ?白カーディガンのおかげか?と不思議に思いながらまた食べ進めた。
食器を片付け、エレベーターに向かう。すると、見慣れた姿が……
「しんいちさん!おはようございます!もう朝ごはん食べました?」
ともう友達かのように話しかける。
「おはようございます、まだです、今から行こうかと思ってて…」
「お、マジですか、結構混んできてたので早めに行った方がいいですよ」
そうお伝えして、一緒にエレベーターに乗る。
「じゃあ、また後で宜しくお願いします!」
そうお伝えし、自分の部屋に戻った。

さて、メイクとヘアセットをしよう。カバンからメイクポーチとヘアセット用品を取り出す。
せっかく、こんな綺麗なホテルに泊まってるんだ、自分のビジュの変化を見てもらおうと、写真と動画を撮ることにする。メイクするまでのボサボサをまず撮る。
コンタクトを入れて、メイクをする。この段階ではまだ、眼力だけ強くなっただけである。その動画も撮る。
髪を濡らすために、腰を90度に曲げ、浴槽に頭を入れて、シャワーで豪快に濡らす。こうすることでちゃんとパーマが出るのだ。タオルドライをして、ヘアオイルを付けて軽く乾かし、ハードミルクとジェルを混ぜて髪に揉み込む。
前髪の分け目の上がり方や、パーマの具合を調整しながら、ドライヤーで形を決めていく。仕上がったら、ケープで固める。
よし、完成だ。これも動画に収めて、写真も良い感じに撮る。うん、いつ見ても何故こんなに変わるのか不思議である。

Before After
坂本 みのり on Instagram: "寝起き▷▶▷舞台用ビジュまで… すっぴんと気合い入れる時の差が凄すぎて自分でも面白くなってきました😌それを動画にしました🙌 この見た目で和楽器のお筝やってます!もう10年目です ホストじゃないですからね!舞台でもカッコつけてます💕 プロの方と比べるとまだまだ技術が足りず、演奏で魅せる!は出来ませんが、顔から入る和楽器の世界があっても良くないですか??和楽器知ってくれるキッカケが顔ファンでも良いんです やっと好きになれた自分のこの見た目を最大限に利用して、私なりのアプローチで邦楽業界盛り上げていきます🙌 (熱いこと語っちゃった🤭) #セクマイ #セクマイさんと繋がりたい #LGBT #レズビアン #レズビアンさんと繋がりたい #中性 #中性的女子 #ジェンダーレス #ジェンダーレス女子 #ボーイッシュ #雰囲気好きな人いいね #雰囲気だけでも推してください #筝 #琴 #和楽器 #和楽器バンド好きと繋がりたい #koto #Japan #パーマヘア #センターパート #beforeafter #メイクアップ #メイク変身動画" 18 likes, 0 comments - minori17koto3c4 on April 15, 2024: "寝起 www.instagram.com


⬆️動画バージョン

よし!昨夜大泣きしたとは思えないビジュに仕上がった。衣装としてループタイとベストを身につけ、荷物を整理する。
出る前にSNSを確認していると、Twitterに通知が来ていた。なんと、朝に呟いた自分の熱い気持ちを書いたツイートがいぶくろさんにいいねされている…昨日の余韻がまだ残っているため、それを見ただけで目がうるうるしてしまうが、せっかくビジュを良くしたのに泣く訳にはいかない、今日のために何ヶ月も頑張ってきたのだ。気合いを入れ直して、会場に向かった。

会場に入ると、昨日一緒だった方々が既に来ておられる。私に気づいてくださったのか、にこやかに挨拶をしてくださる。
「おはようございます!今日はよろしくお願いします」
と真っ黒で柄の悪い見た目だが、持ち前のにこやかさで挨拶を返す。
荷物を置き、周りを見渡す。賞の受賞者の方なども来られたので、様子を見計らってご挨拶に行く。
いぶくろさんは楽しそうに礼奈さんとお話されていたので、話が終わるのを待って、声をかけに行く。
凄く綺麗な笑顔で「おはようございます、よろしくお願いします〜」と言ってくれているが、敬愛しすぎて顔が見れない…キョロキョロと変な行動を取りながら、挨拶を終わらせて邪魔にならないように隅に行く。
昨日の私服とは打って変わって、全員が真っ黒の服のため、引き締まって見える。一段と迫力があって見える。特に弦生さんに至っては、前日白シャツだったのが、黒シャツになって、髪も上げておられたため、オーラというか、なんか凄すぎて挨拶するのもめちゃくちゃ緊張した。
いぶくろさんは他の参加者さんに声をかけられ、写真撮影に応じておられる。私の時も思ったが距離が近すぎる、皆貴方に憧れてるんだぞ…!貴方は有名人なんだぞ…!と心の中で暴れる。
そうこうしてるうちに、朝リハが始まる。

奥田雅楽之一先生の「こどもの情景」
これがまた凄く美しいメロディで感動する。
「黒髪」も朝リハで三味線を弾くいぶくろさんが見れるという素晴らしいものだ。歌もパート分けがしっかりしてあり、とても良い。
リハを聞いていると段々緊張してきたため、一度外に出て、「風来壮烈」を聴きながら楽譜を確認し、イメージを更に膨らます。
たまにSNSを確認したり…すると、インスタをフォローして下さった参加者さんがいぶくろさんのサインをもらっているストーリーを見つけた。
あ、写真だけじゃなくて、サインっていう手があるのか…
とそこで気づき、カバンを漁るがマジックなどは持ってきていない。福井に向かっている家族に急いで連絡し、マジックを買ってきて欲しいと伝える。家族も新幹線で楽しくやっているようだ。写真などが送られてきていた。

もう時期、家族が来てくれるという安心感と、それと同時に本番が近づいてきているという緊張感で気持ちがザワザワする。お昼ご飯も食べてる場合じゃないため、とりあえず楽譜の読み込みをたくさんした。
13時を少し過ぎた頃、会場に入ると、全員で集合写真の撮影をしていた。
あ、入りそびれた😇
そう思ったがもう遅い。タイムスケジュールが書かれたメールを開く。当日の13時記念撮影の文字が…13日の分しか見ていなかったため、逃したのである。こういう所がしっかりしてそうでしていない私のダメな所だ。
撮影が終わると、舞台袖に風来壮烈を弾くメンバーか集められる。次の新時代を弾く人への案内があるようだ。みんなが真剣に話を聞いているこの感じ、学校感があってなんか楽しい。
その話を聞き終えた後は、琴音さんが持ってきて下さった山梨のお土産を頂いた。なんと気の利く方なのだ。しょっぱい系と甘い系が選べるようにお菓子のチョイスがしてあり、数も沢山入っているものだった…私は甘いほうを1つ手に取った。

話も終わり、解散となると母親に声をかけられた。無事に到着したようだ。姉から頼んでいたマジックを受け取り、支払う。従姉妹は舞台衣装の私の写真を撮り始めていた。
本番の時間を再度伝え、家族は昼食を食べに行くと言い、一旦別れた。
本番は14時からで、それまで何をしようか。とりあえず、邪魔にならないように、会場の隅っこに立つ。
すると、参加者さんの女子高校生に声をかけられる。
「すみません…今、お時間ありますか?」
「え、はい…」
なんかやっちゃったんかなと思いながら恐る恐る答えると、
「ずっとカッコイイなと思っててこの子と写真撮って欲しいんですけど…」
と言われて、後ろから別の女子高校生が出てくる。
「写真、全然大丈夫ですよ!」
私、全然凄いやつじゃないけど大丈夫かな、賞を取られた坂本さん別の人だけど…と思いながら撮影に応じる。
にしても、写真を撮って欲しいと言ってる子と目が合わない…あと、隣にいるのに遠い。推しを前にするとキョドってしまうから、それなのだろうか…
お友達さんがカメラを準備されるが、
「あ、良かったらわたし撮りますよ!はい、近づいて〜」
と言って写真を撮る。
「撮ってくれるって!」
そう言って大興奮のお友達さん。黄色い声?みたいなのが聞こえる。

当時の写真

無事に撮り終わると、airdropで送って欲しいと言われる。撮影を一緒にした子はiPhoneではないようで、お友達に送っておく。
一応、名刺を渡しておこうと思い、良かったら…と渡す。
すると、昨日交流会で一緒だった管理職をされているスタッフさんが
「あ!写真は事務所通してもらわんと!俺通してや!」
と嬉しい冗談を言ってくださる。いやいや、そんな凄いやつじゃないんで…と言いながら幸せな気持ちになる。さっき集合写真に入れなくて落ち込んだ私はどこかへ行ってしまった。

そんなこんなでわちゃわちゃしていると、その方たちのお母さん?らしき人が
「○○箏曲院です、良かったら、この子達と写真撮って上げてください」
と言われる。
「え、あ、私全然凄い人じゃないけど、良いんですか??」
少し焦りながら伝えるが、凄い人扱いが変わらない…
そこのお弟子さん6人と写真を撮る。皆直立で前で手を組んでいるだけだ。
お母様方が入れ代わり立ち代わり写真を撮る。
「良かったら、なんか最後にポーズとかしときます?流行ってるのとかあれば…」
味気ない写真もなぁ、と思い声をかけるが、特に皆思い浮かばないようで、
「じゃあ、皆で肩組んどきますか!近づいてください〜」
と言って、皆で肩を組む。
お母様方は「お!いいですね!」と言ってくださっている。
撮り終わったあとはお礼を言って、名刺をお渡しする。

その時の写真

この写真を撮っている時に、食事を終えて戻ってきていた従姉妹が前を通る。なんとも気恥しい…
皆さんと別れた後、家族を探し、場所の確認をする。どの方向から動画を撮るといいのかなど打ち合わせをする。舞台の左側に座っていたので、右の方がいいのでは?と提案し、右の1番後ろに座ってもらった。
さっき、写真をお願いされたことを楽しく報告する。有名人になったような気分だった。

あ、そうだ、さっき7人で撮った写真のデータを貰おう、と思い、
「お話中すみません、さっき撮った写真、airdropで送って頂けますか?」
と話しかける。お母様方はやり方が分からないようで、娘さん達が携帯を操作し、送ってくださる。
満面の笑みでお礼を伝え、また家族のいる席に戻る。動画をどの部分撮って欲しいかなど、細かに確認する。動画、写真を撮っていいのかスタッフさんに確認も取った。
本番開始の30分前になるが、衣装の指定であったハッピが渡されない…周りを見るとほとんどの人が着ている…近くにいたしんいちさんに貰ったか確認し、スタッフさんに声をかけ、予備がある場所に取りに行く。
すると、昨日の交流会で一緒だった同年代メンバーがいた。
「せっかくなんで皆で写真撮りませんか?」
と声をかけ、写真を撮らせてもらう。

まさか福井県で仲良くなれる人がいるとは、思いもしていなかった。
インスタ教えてください〜と言って、皆さんと交換してもらう。皆いい人たちで本当に来てよかったと思う。

本番の時間も近づいて来たので、楽器の出し入れ等に邪魔にならないように客席の後ろに立つ。
開始の時刻になった、今回のコンサートの意図や普段行われているコンクールについて、ジャポニズム復興会のお話などが始まる。
準備された客席も満席に近い状態でとても嬉しく思った。

さて、演奏が始まる。まず最初は黒髪。
舞台上にはコンクール審査員、受賞者、公募の方が上がられる。
いぶくろさんの三味線演奏初お披露目である。
黒髪らしく重たくもあり、風情もある演奏。歌もパートがしっかり分けられているため、聞きやすくとてもいい仕上がりになっていた。

黒髪演奏時
捌けの様子

さて、次は奥田雅楽之一先生の「こどもの情景」である。先生自身が曲の説明をされる。
奥さんの出産時に、家に1人で暇だったため、1月から12月までの曲を作ったとの事だった。
演奏を聞く。とても美しいメロディラインで、七夕のキラキラした星空の様子が分かる曲想であった。
弾き終わった後に司会の方に「奥田先生が大変ロマンチストだと言うことが分かりました」と言われていたほどだ。
この曲を演奏されている間、いぶくろさんは舞台の右側の客席の後ろに腕組みをして立っておられ、真剣に演奏を聞いておられた。演奏が終わり、舞台袖に戻る時、従姉妹がいぶくろさんがいた事に気がついて、私に「え?ずっと後ろにおったん??」と驚いていたくらいだ。それもそうだ、テレビに出たり、日本武道館で演奏する様な人がその辺にいるとは思わないよな、でも、本当にいぶくろさん、ずっと客席か舞台袖に居て控え室にいない…自分を有名人だと思わなさすぎている気がする。まぁ、そこがいぶくろさんの良さなので何も言わない。

3曲目は「飛騨によせる3つのバラード」である。
この曲の間に次に演奏する風来壮烈のメンバーは舞台袖に集まる。
かなりの実力者ばかりの演奏のため聞き惚れてしまう。風来壮烈のメンバーも舞台袖から技を盗もうと必死に見ていたほどだ。
題名だけ知っていて初めて聞いたが、この曲を弾けるようになりたいとまで思わせるそんな演奏だった。

演奏当時の写真

舞台袖では、毛氈が引かれ、直ぐに舞台上に上がれるように靴を脱いで待機するよう指示があった。パートごとに奥から順番に並んでおく。
すると、前にいた女子高校生2人が靴を脱いでいるのに毛氈から出ていたので、小声で声をかける。
「足汚れちゃうんで中入ってくださいね」
少し黄色い歓声が上がり、お礼を言われる。なんかここまでキャーキャー言われると恥ずかしくなってくる。私は足汚れるよと伝えただけなのだが…
その後、ハッピを着ていない参加者さんがおられたので声をかけ、予備の場所を伝える。
ドキドキ、ソワソワしながら演奏が終わるのを待ち、曲想をもう一度練る。ここまで来たら頑張るしかない。やるしかないのだ。

飛騨によせる3つのバラードの演奏が終わり、拍手が起こる。演奏者達が降りてくる。
いぶくろさんは引き続き舞台上におり、自分の説明と曲の説明をされる。
楽器がどんどんと並び、合図と共に順に舞台に上がっていく。
スポットライトを浴びていないから、普段の舞台よりは緊張しないものの、色んな感情がせめぎ合う。曲の説明をしながら後ろに移動したいぶくろさんの横に付き、丁寧に座り、十七絃の印を確認する。(演奏で間違わないように付けた印が消えていないか)
説明が終わり、いぶくろさんが座ろうとする。だが、あまりにも狭すぎて、座る幅がない。これ、場所作るのに楽器動かさないと…!と思っていると、いぶくろさんは私の方を見て「ちょっと動かしてもいい?」と聞かれる。超高速で頷き、大丈夫ですと伝え、楽器の頭を振る。よし、全員ちゃんと定位置に着いた。
1番前にいる参加者さんをみんなが見て、合図が出され、お辞儀をする。
遂に演奏の始まりである。
昨日出会った人たちと共に頭の出だしを揃える。重たく地響きがするように、戦の荒々しさを表すように…丁寧に弾いていく。
夜になる、ピチカートで軽く星の瞬きを想起させるような柔らかい音。
一瞬静まる。いぶくろさんの首振りと息の飲む音と共に十七絃のソロパート。段々速くなり、箏パートが次々とついてくる。みんな楽しすぎるのかどんどんペースが速くなる。
ラストスパートに向けて激しく重たく体を使って弾いていく。
最後全員で音を揃えて締め。
音を消してお辞儀をする。すごく大きな拍手が起こった。これで私の演奏は終わってしまったのかという寂しさと、弾き切ったという嬉しさが込み上げてくる。

次の曲の準備のために舞台から降りる。次の楽器の準備が始まるので、直ぐに客席の隅に向かう。客席の後ろにも人が立っているため、狭く、「すみません」と言いながら素早く通る。
その時「え、カッコイイ」とまた別の学校の女子高校生に言われてるのが聞こえた。うん、めちゃくちゃいい気分、だが、直接いってくれるともっと嬉しいんだが…
自分のカバンがある所に戻り、楽譜、爪などを片付け、携帯を手に取る。
さて、次は「古晒」である。池上先生、宇野さん、清原さんの3人で三味線を弾かれる。堂々と歌を歌いながら弾く姿はとても美しかった。宇野さんは交流会の自己紹介でも優しさが滲み出ていたのだが、舞台に立つと別人かの様に堂々とされており、カッコイイと思った。
安定した手の捌き方などを見る感じ宮城なのではないか?と思うほどだ。

次は「新時代」である。礼奈さんが編曲されたもので、「新世代コンサート」の題に合わせて選曲して下さったのだ。
まず、礼奈さんのソロから始まり、グリッサンド、十七絃の重たい音が続く。華やかで軽やかなリズムで進んでいく。観客を見ると、リズムに乗って体を動かしている人がいるくらいだ。
新時代、応募したら良かったなと思うほど、楽しい編曲にしてあって、動画に納めたほどである。

次は坂本 琴音さんの独奏、「こもれび」である。
今回のコンサート唯一の山田流の奏者。山田流で使われている曲のようだ。
こんな天気が良くポカポカした日に合う曲であった。また、琴音さんの表現力が凄すぎてとても感動した。
山田流を習ってみたいとまで思うレベルであった。

にしても、曲の紹介や自分の紹介をする人達、トークがうますぎて感動した。やりたい箏曲のビジョンがしっかりしているからだろうか、熱い思いが伝わってくるのだ。私もこれ程の熱量で話せているのだろうか。

そして、最後は「組曲 福井」である。
演奏が難しいため、公募の人以外での演奏である。

モニターを使っての演奏
エピローグ

モニターで何楽章であるか、またその情景を映しながら演奏が進む。流石プロだらけの演奏だ。質の良さが分かる。情景もそのまま見えるのだ。
プロローグでは、これから福井に行く旅が始まるワクワク感。
第2楽章の雪の永平寺は、雪の重さや凍えるような寒さで軋む木の音、雪が表現され、心が浄化されていく。
第3楽章の芦原湯の町は、温泉の温かさ、湯に浸かって温まる優しい音が響き渡る。
第4楽章の真冬の東尋坊は、荒々しい波、灰色の暗い海、痛いほど感じる冷たい風などが表現され、一気に気が引き締まる。
そして、エピローグ。福井県での楽しかった旅に思いを馳せながら、帰りの新幹線で楽しく話し、最後は疲れて寝てしまうという、楽しい旅らしいイメージで締めくくられる。
あまりの素晴らしい演奏にとても大きな拍手が起こった。箏曲をやっている人間からすると、目指すべき演奏を見させて頂いた感じで、とても勉強になった。

閉会式から帰路

あっという間に閉会式へ。名残惜しく思いながら、解散と言われる。聞きに来て下さった方も帰路につかれる。
そして、私はもう一度いぶくろさんに声をかけに行こうと、楽譜、携帯、マジックを持つ。家族にいぶくろさんに声をかけに行くことを伝え、その場を離れる。
いぶくろさんの撤収が早すぎて一度見失う。各々が挨拶したい人に声をかけに行くため、人の間を縫って動くのが大変である。
出口の自動ドア付近でいぶくろさんを見つけ、声をかける。
「いぶくろさん!お疲れ様です!今お時間いいですか?」
と確認を取り承諾を得る。
「サインいいですか?」
そう言い、風来壮烈の楽譜と姉が買ってきてくれたマジックをお渡しする。
ニコニコと対応して下さり、荷物を下に置き、屈んで膝の上で書いてくださる。

いぶくろさん作曲、いぶくろさんと共に弾いた楽譜に頂いたサイン


「ありがとうございます…!もう1回写真いいですか?」
と確認すると
「良いよ〜」
と即死案件の可愛い笑顔で言ってくださる。カメラを準備すると昨日のこともあってか、すぐに携帯を預かって下さり、少し屈んで下さる。

2枚目のツーショット📸
推しと同じ服を着て同じパート、隣で弾かせて貰った日

取り終わると、
「ありがとう〜、髪型一緒だね」
笑顔で言ってくださる。お互いの頭を交互に指差して、一緒だねって尊すぎんか??と発狂しかけるが我慢する。
「いえ、こちらこそありがとうございます。一緒ですね…!本当に今日はありがとうございました、また宜しくお願いします、お疲れ様です」
とご挨拶をし、別れる。自分でも手が震えているのがよく分かる。あぁ、遂に終わってしまったのか。虚無感に苛まれながら、ホールに戻り、名刺をお渡ししたい方を探す。
人混みをかき分け、宇野さんを探す。
「昨日交流会で一緒だった、坂本みのりです。演奏素晴らしいかったです。関西で何かされるときはお手伝い出来ると思うので宜しくお願いします!」
と名刺をお渡しする。
「ありがとうございます!今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします」
と丁寧に挨拶してくださる。

皆さんと撤収作業をしながら、気になる人にどんどん声をかけていく。
「坂本さんのお弟子さんですよね?奈良県から来た…」ともうテンプレになりつつあるセリフを言い、お弟子さんにも声をかける。この方も和楽器バンドを見てお筝を始めた方で、2年目だと言っておられた。
「2年目ってめっちゃ不安だと思うんです、私も実際にそうだったので、良かったら気軽に連絡くださいね」
名刺をお渡しする。そして、気になったことを聞く。
「今日、カラコン入れておられます?何使ってるんですか?」
「あ、渡辺直美のエヌズコレクションの玉こんにゃくです」
「え!!!エヌズコレクション好きなんです!特にサイダー好きで!玉こんにゃく買うか悩んでたので発色実際に見れて嬉しいです!めっちゃ似合ってます!」
と邦楽業界では中々ないカラコンの話で盛り上がる。不思議過ぎる話である。
気をつけて帰ってくださいね、とお伝えし、離れる。

すると、交流会で仲良くなった福井県在住の御家族さんが声をかけて下さる。皆で記念に写真をとの事で、お祖母様も入ってもらい皆で撮る。

とてもお世話になった方々

「ありがとうございます!!」
と撮影のお礼を伝え、談笑をする。写真を頂こうとairdropの話をするが、分からないようで、LINEを交換することになり、皆でLINEを交換する。
「また、福井県とかでお会い出来ましたら宜しくお願いします!」
そう声をかけ、名残惜しみながら別れる。

お土産を見に行っている家族と合流し、昨日今日であったことを話しながら、お休みを貰ったお礼に職場へのお土産を見る。
本当にすごい日だった。もうそれしか思わない。
お土産も無事に買い終わり、新幹線の時間までホールで待っていると、いぶくろさんがお土産屋さんにスっと入っていく。
お土産屋さんにいるお客さんは、いぶくろさんの事を知らないのか見向きもしない。
「え、そんなことある?みんな、いぶくろ聖志だぞ、すごい人なんだぞ??」
と母親に言いながら眺める。
いぶくろさんが出てきた時に母親がその事に気づいたのか
「本日はお疲れ様でした」
と声をかけると、急なことだったため、いぶくろさんは驚いておられたが、笑顔でお疲れ様ですと言ってくださっていて、本当に人柄の良さを感じた。

ホールから出て、駅の階段付近で新幹線の切符をオンラインで姉が予約してくれる。
4人で談笑していると、しんいちさんが来られる。
「あ!しんいちさん!今日お帰りですか?新幹線??」
と聞く。
「2日も休み取ったら厳しいから明日から仕事です。飛行機で帰ります」
と話してくださる。家族に昨日からお世話になってる方だと説明する。
「来年のコンクール出ます?」
と聞かれる。
「う〜ん、悩んでます。でも、来年いっぱいは教師になるための勉強をするので、コンクールの余裕がないかもなんですよね…」
などと話す。そうしたら、しんいちさんは、「彼女の流派の曲は1曲しか弾けなくて…」と話してくださる。終始面白くて楽しい人だと思った。
途中でしんいちさんとも別れる。こうやって巡り会えたのだ、また何処かで会えるだろう。

従姉妹は尺八の山田さんの演奏に惚れてしまったようで、ずっと山田さんを探していて面白かった。
私も好きなスタッフさんがいるので、その方に挨拶をしながら時間を過ごし、新幹線に間に合うように改札に向かう。
4人で楽しく写真を撮ったりする。

恐竜の足🦖
何故か靴の色が揃ってしまった4人😂

改札前で姉が切符を発券してくれていると、宇野さん、清原さん、池上先生も来られる。家族に声掛けてくると伝えて、カバンを預かってもらい、声をかける。
「先生、ご挨拶遅れてすみません、昨日横に座ってた坂本みのりです。本日はありがとうございました」
と自己紹介をしつつ名刺をお渡しする。
流派の話などをして下さる。人柄が素敵すぎる。先生は名刺を切らしてしまったようだったが、本当に出会えただけで大満足である。
挨拶を終え、家族と合流し、改札前で買ってもらった切符を分ける。その間に、従姉妹の推しの山田さん、いぶくろさんは改札を通られる。プロの演奏家は後ろ姿でさえ、カッコイイのである。
私達も新幹線に乗るためにホームに向かう。
すると、向こう側のホームにいぶくろさんの姿が。関西に帰る我々と関東に帰られるいぶくろさん。
従姉妹に向こうのホームにいぶくろさんがいることを伝えると
「こうやって逆に行くの寂しいな」
としんみりした事を言い出して、悲しなるからやめて!などと言っていた。
最後にツーショットや、と言って、従姉妹に名刺を出してと言われる。

いぶくろさんの名刺(宝物)と奥にいるほぼ写ってないいぶくろさん

感極まってまた泣いてしまいそうだ…
ホームでお会いした池上先生、宇野さん、清原さん、大谷さんにご挨拶をし、帰路に着いた。
池上先生が前を通られた後に、「あの方が最後に演奏してた組曲 福井作った方。」と話していると、姉が
「うちは永平寺のパート好きやった、木の軋む音とかをちゃんと聞いて表現出来るって凄いなって思ったわ」
と話してくれる。今まで邦楽に興味がなく、私の演奏に口出しばかりしていた姉と初めて箏曲について話したのだ。
すると、従姉妹も続けて
「私は温泉のパートやな、めっちゃ良かった」
と言ってくれる。従姉妹は高校の箏曲部の舞台を見に来たりしてくれていて、今回のコンサートへの参加が決まって報告した時に絶対に行くとまで言ってくれていたのだ。いぶくろさんの話をしている時に「いぶくろさんが十七絃やってた曲(飛騨によせる3つのバラード)良かった、喋ってる時優しい明るい人やのに、最初の一音でスイッチ入ってやばかった」と言ってくれていたほどだ。そう、そのいぶくろさんの良さを知って欲しかったのだ、やっと分かってもらえて本当に嬉しく思う。私が伝えきれなかった箏曲の良さをいぶくろさん達プロが伝えてくれたのだ。
ちなみに母も温泉のパートが好きで、私は荒々しい、良い意味で箏曲らしくない東尋坊のパートが好きである。

新幹線の中でいぶくろさんの事をメンションして、投稿などをする。
すると、いぶくろさんも新幹線の中だからか、数十分でリプが返ってくる。あまりにも驚きすぎて、大はしゃぎで家族に報告した。
「やばい!リプ来た、やばい…尊すぎんか、なんやこれ」
本当に人柄が良すぎる…5万人もフォロワーがいて、通知ですらきっと大変なのに、こんな一般人にリプくださって、こんな人になりたいと更に思った。
あっという間に敦賀に到着し、次はサンダーバードに乗って大阪まで行く。
すると、
「みのりさん」
と優しい声が後ろから聞こえる。振り返ると、さっき名刺をお渡しした宇野さんがおられた。
「これ私の名刺です、良かったら…」
と和テイストで可愛い名刺を渡してくださる。
「ありがとうございます!またご機会がありましたら!」
そうお礼と挨拶を告げる。なんといい人なんだ…ホクホクした暖かい気持ちになれる。

その後、サンダーバードに乗るのに切符が通らないなどの不具合があったものの、無事に大阪に到着。

帰り道に撮った写真を何度も見返す私(左)と姉


夜ご飯を4人で食べようとなり、飲食店を探し、もつ鍋を食べることに決まる。席について今日の感想などを話す。
にしてもさっきから、インスタのDMの通知が減らない…
一気に色んな人と交換したので、誰が誰なのか、どんな話をした、交流会でどんな服を着ていたか送ってくださいとストーリーに載せていたのだ。
減らない通知を適宜確認しながら、2日間で吸収したことをたくさん話す。私はこんな活動がしたいと、活動していて良かったと。
母がフラワーアレンジメント、姉がナレーターの仕事をしていて、表現する人間が多いため学んだことを題材にたくさん意見しあった。

そして、皆さんとDMでお話していて分かったのは、宇野さんはやはり宮城の方であること。品格、弾き方を見ただけで何となくそうだろうなと思っていた。そして、やっと同年代の宮城奏者に出会えてとても嬉しく思った。
また、私とツーショットを撮ってくれた女子高校生のお友達さんに何で声掛けてくれたのか聞いてみた。すると、「その子がリハの時からずっとカッコイイ、一緒に写真撮りたいって言ってて、もしかしたら二度と会えないかもしれないんだから!って言って声かけさせて貰いました」との事だった。なんと嬉しいことだ。県知事賞を取られた坂本さんと勘違いされているのかと思いきや、ちゃんと私目当てであったようだ。
なので、その子もDMもくれていたので、良かったらと言って、私の盛れてる写真がたくさん投稿されている別のインスタ垢も教えた。有難いことにフォローして下さっている。
交流会で仲良くなった子達は帰り道でも私の話をしてくれていたようだ。「みのりさん優しかったね、カッコイイね、また会いたいね」などと盛り上がってくれていた様だった。

その他、清原さん、山田さん、大谷さんのアカウントを発見し、丁寧にDMを入れて挨拶しておいた。
本当に凄い奏者で投稿を見ながら毎回刺激を貰っている。

最後に…

福井県で色んな事があったおかげで、私は自分の強み、やりたいことがしっかり見えた。
今まで、友達やコンカフェのお客様が「かっこいい」と言ってくださる事はあったが、お世辞なのかもしれないと思っていた。だが、福井県で初対面の色んな方(老若男女問わず)に「かっこいい」と言ってもらい、良い意味でお筝やって無さそうなこの見た目を褒めてもらい、これを武器にしようと思った。
楽器をただ弾けるだけでは特徴も強みもなく、話題性もない。だが、私にはマイノリティがあるし、褒めていただける見た目がある。これを利用できるだけしようと思った。
すごい演奏ができる人は山ほどいて、編曲、作曲ができる人も沢山いる。
じゃあ、わたしにできることは?そう、まずは顔ファンでもいいから、私を知ってもらい、セクシャルマイノリティと和楽器を知ってもらうことだ。その入口作りを私がしたらいい、という事だ。
宣伝力もまだまだのため、難しいかもしれないが、勇気をだして、自分もマイノリティでどうしたらいいかと相談してくれる人がいたり、和楽器の世界で困っている人がいたり…そんな人の味方になって支えてあげたい。マイノリティから和楽器を、和楽器からマイノリティを知ってもらう為の事を今回両方出来たのだ。
これは私の強み、私にしか出来ない事である。これをもっともっと伸ばして行きたいと思った。
たくさんの気づきをくれた今回の演奏は、本当に私の人生の宝物である。
推しに応援して頂いてる以上、推しに恥をかかせないためにももっと努力して頑張ると心に決めたのだ。

私の叶わないと思っていた夢とは、「10年間憧れ続けたいぶくろ聖志さんと演奏すること」である。
それが叶ったところか、活動の応援までして下さったのだ。夢を叶えるためにまた、ここから全力で頑張りたい。

さて、福井県のお話もこれでおしまい。
最後までこんな長文を読んでくださり、本当にありがとうございました!!

私は福井県で沢山のことを学び、自分の活動の方針もしっかり決め、今年大きい決断をする事が出来ました!これからも面白いこといっぱいしていくので、宜しくお願いします☺️

【これを最後まで読んでくださった方へ】
「風来壮烈」の演奏動画のURLをお送りします!
私のSNS(Twitter or Instagram)のDMにnoteを読んだ旨を伝えて頂き、動画を視聴したいとご連絡ください🙌
私のSNSをフォローした上でメッセージを送ってください!

お送りする動画内には、本文中にあるハプニング(目が合うなど)も入っております
原曲はYouTubeにありますので、聞いてみてくださいね💕︎


文章、演奏に関する感想お待ちしております!
本当にありがとうございました!!

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