ふらっと 日本橋
日本橋高島屋4階資料館で、企画展 「建築家・坂倉準三と高島屋の戦後復興ー「輝く都市」をめざしてー」が開催されていて、ふらり日本橋
実は、日本橋に来るには初めてで、東野圭吾の小説で、阿部寛が主演で映画・ドラマ化された「新参者」「麒麟の翼」のイメージが強く、5街道の起点としての古き良き下町風情の印象が強い。
そういった気持ちを抱きつつ、地下鉄銀座線日本橋駅を降りて、地下コンコースで高島屋へ。高島屋の印象は、愛知県出身のせいか、名古屋駅の高層のツインタワーで、高級品を取り揃えているイメージがふつふつと。
早速、エスカレーターで4階の高島屋資料へ足を向ける、かなりこじんまりした展示スペース。
入口に、今回の展示の趣旨が書かれていた。書かれているものの中で気になったこととして、
・師コルビジェの著書「輝ける都市」の扉には、「都市計画に、さまざまな 偶発的事象の中心に打ち立てる、論理的叙情的なモニュメントである」と記され、巻末に「活動的で力強く、静かで人間的な都市を作る」「建築を決定すること」と結ばれている
・坂倉は、劣悪な環境の都市や疲弊した農村への公共的な提案こそ、建築に求められる使命と教えられる
また、坂倉準三が世に大きく羽ばたいた源流として、先ほどの「偶発的事象」出会いを通して、建築家、都市計画家の礎が築かれている。
戦後、都市復興に向け、鉄道が整備され、その拠点(シンボル、ランドマーク)として、百貨店建築がベースにあったことは面白みを感じた。
1)フランスでのめぐり逢い コルビジェのアトリエに在籍した時は、戦時中ながら、パリで開催されていた万博の日本館を担当してグランプリを果たし、その時、内装、家具も担当していた高島屋と巡り合う。
2)百貨店建築でのトライアル 戦後、建築資材統制下の厳しい時代に、高島屋の案件を通して、ル・コルビジェから学んだスロープ中心に人の動きに沿って流れるように続く空間に、透明感あふれる清新な百貨店建築を実現させる
3)都市の中のシンボルづくり ニューブロードフロアーと南海会館によって、駅とつながるターミナルビルを「谷川の水に流れる如く、顧客の流れがよどむことなく流れる空間を」誕生させる
4)街づくり さらに、東急渋谷会館、巨大ターミナル新宿駅の要となる新宿西口広場、小田急ビルによって、大都市の公共空間を人々にとって、快適で機能的な、叙情的なものを実現される
5)都市計画への礎 戦後復興を起点に、ル・コルビジェの輝く都市の精神を引き継ぎながら、誰もが日常的に利用する駅と百貨店によるターミナルビルを主軸に、都市の公共空間への地道な提案をつづけた。
パネルを見ていて、戦後日本の厳しい状況ながら、活動的で力強く、静かで人間的な都市づくりに向けて、果敢に挑戦していく様が感じ取れる。
その集大成として、表玄関となる象徴的な都市的な公共空間として新宿西口広場、小田急ビルの紹介があった。
紹介文には、 太陽と泉のある地下広場
自然光が降り注ぎ、優雅な曲線を描く斜路と青い色調のタイルで彩られた貯水池 窯変タイルの貼られた円錐状の排気筒 階段の壁、磁気タイルの円形に貼られた地階の床などで構成された、土木的な無粋さを乗り越えた、詩情にあふれる清新な広場 西口に、副都心と中央公園へ続く広場とそれを囲む洗練されたビル群
新宿駅は、職場に通う時のターミナル駅で、小田急ビルも毎日見ている建物ながら、こういったパネルを改めてみると、味わい深い。
この写真は、5年前の冬に、小田急ビルの色とりどりの光を見て、きれいだなと思い、撮影したものだが、清新さを改めた感じてしまった。
この小田急ビルは、今年閉館をして、超高層ビルの建て替えが計画されている。戦後復興の時に、坂倉が思い描いた情景から、生まれ変わる新宿ターミナルは後世に何を残していくのだろうかとふと感じてしまった。
展示会後、エスカレーターを降りて、本館1階を見ていて、重厚な作りだなと思い、館内を見まわして、
誰が設計したのかと調べてみると、村野 藤吾。 学生の頃、製図で、有名建築家の建物を模型して提出する課題で、新建築等雑誌等で見てたなと回顧
かなりコルビジェ感があるなーと思い、調べてみると、村野 藤吾は、コルビジェをかなり意識して、彼を超える建築を目指していたという記事を見て、納得。
守破離ではないが、追い求めるロールモデルがあると、能力の進化は無限大になると再確認
今は、デジタル・ネット社会になっているが、だからこそ、人々が偶発的に巡り合えるリアルな場が重要ではと感じた。
コルビジェが言う、偶発的事象の中心に打ち立てる、論理的叙情的なモニュメントがある都市、また、坂倉準三が自然との共生を意識した都市建物群がいつかレトロフィットデザインとして再出する、そんな時代もあるのではと高島屋の模型を見て感じた。
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