6月8日サブゼミCA【世襲政治家を法律で禁止するべきか否か】

ここでは、6月8日1限のサブゼミで実施されたCA(テーマ:世襲政治家を法律で禁止するべきか否か)の議論の内容についてまとめる。

記事

朝日新聞、2023年2月17日
「永田町『世襲天国』で“首相ガチャ” 小泉進次郎、福田達夫、小渕優子、加藤鮎子、鈴木貴子…」

2021年の自民党総裁選を勝ち抜き、総理の座を射止めて1年後、岸田氏は長男の翔太郎氏を政務担当の総理秘書官に抜擢したが、翔太郎氏を秘書官に起用したのは「岸田家4代」への布石と見られ、文雄氏も父・文武氏の秘書から政界でのキャリアをスタートさせ、文武氏の選挙区から出馬して35歳で初当選している。日本ではかねて選挙に勝つための「三バン」、後援組織の「地盤」、知名度の「看板」、選挙資金の「カバン」が必要とされている。一般に政治家となるには多大なコストがかかるが、世襲候補は「三バン」を親の代から労せずして引き継げるため、選挙において世襲議員が圧倒的に有利なのは、データからも明らかだ。
小選挙区制が導入された1996年以降の衆院選の全選挙区によると、「父母が国会議員・3親等内の国会議員から地盤の一部または全部を引き継いだ」のいずれかに該当する候補を世襲と定義した場合、候補者全体の13%が世襲で、世襲候補の勝率は比例代表による復活当選を含めると80%に達したという。 また、昨年の参院選でも、世襲の定義を「父母、義父母、祖父母のいずれかが国会議員」または「3親等内の親族に国会議員がいて同一選挙区から出馬」とした場合、世襲候補者19人のうち14人が当選した。全体の当選率22.9%に対し、世襲候補の当選率は73.7%だった。前に示した世襲の定義にあてはめると、96年以降に誕生した12人の総理のうち、非世襲は自民党の森喜朗・菅義偉氏と民主党の菅直人・野田佳彦氏の4人だけとなっている。

議論:立論者の立場と意見、及び反論

立論者は、世襲政治家を法律で禁止することに「反対」の立場をとる。(反論は「賛成」の立場から行う。)

議論➀

憲法22条「職業選択の自由」、14条「『法の下の平等』社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」に抵触する
└立候補すらさせないのは憲法違反

→世襲による当選がどれほど正当性を保っているのか疑問。
実力がある人は、有利な選挙区に割り振られるしくみなっており、実力主義となっている。実力(学歴など)がない人に、世襲が多いのではないか。そのため、世襲というものが、政治家の実力を正当に評価できない一つの足枷になっているのではないか。

→世襲の人たちにも「機会」を与えることが大切である。

→親の持つ名声やお金を使うことに対する規制が必要だと考える。せめて、スタート地点はみな平等にすることが妥協点ではないか。

→会社と同じで、一つの財産権だと思う。

議論②

家柄や門閥がない人物なら金権政治になる
└政治家の「道徳性」の有無は世襲・非世襲に関係がない、コネがないならカネ

→世襲を法律で規制することで、政治に色んな属性の人が参加するきっかけになるのではないか。それにより、市民に対してより多様な選択肢を与えることができるようになるのではないか。

→立候補することがすべてではないと思う。上に立つ者はある程度世襲で仕方がなく、下からのボトムアップ式に意見を吸い上げる形でよいのではないか。

→そもそもそうした政治の構造自体が問題なのではないか。

議論③

世襲を禁止にすれば「利益団体政治」が横行する
└世襲でも親子で政策変更はあっても「団体」から候補者を出せば政策転換はより起こらない

→利益団体政治が横行した方がいいのではないか。
利益団体の方が、社会の一部を代表していることになり、世襲政治に比べてより社会を代表する政治が可能になるのではないか。

→利益達成のためなら手段を選ばなくなってしまうのではないか。組織の支配よりも人の支配の方がまだマシだと思う。

→世襲政治も個人の支配ではなく、バックには多くの人や組織が絡んでおり、組織による支配といえるのではないか。

→「政治的英断」という言葉があるように、心ある政治家であれば政策転換がより可能となるのではないか。

→話し合って決めようということがなくなるのではないか。

議論④

政治家一族の賞味期限は半世紀、住民による自浄作用
└特に地方では地域の発展に尽くした一族の議席は不要になれば落ちる、一つの時代の終焉、地域が進歩した証拠(新潟の田中は3代69年間、島根の竹下は2代63年間、東京の石原は2代53年間)

→明治時代に作られた政治のベースが今も引き継がれている(大久保利通と麻生氏の例のように)。ここから考えると、賞味期限が半世紀であるのは無理があるのではないか。

→同じ地域の世襲を想定しているため、上記の例は当てはまらない。

→半世紀は長すぎる。地域が「進歩した」という点について、その時期の間にどれだけの停滞期があったかどうかも考慮して判断すべき。

講評:教授より

世襲政治については、細かい話は現実としてあり、それはみなが認識していることである。今日の政治において、外部からより多様な人材が政界に参加しているようにみなされていることが多いが、この認識は間違いであり、そうした人材は昔よりも「減っている」ことが事実。(宮澤喜一以降、世襲政治家が首相になり始めた。)
長年の長期政権により、政治はシステム化(年次/年功序列)されつつある。早く議員にならなければならないという現状がある。


参考リンク


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