見出し画像

UBスキャニメイター調整録+日本レガシー選手権2024年春 TOP8レポート


ご挨拶

どうも、urbです。今回は5月25日に常滑にて行われた日本レガシー選手権にてTOP8に入ったためそちらのレポートとそこに至るまでの経緯としてUBスキャニメイターの調整の遍歴を残したいと思います。

UBスキャニメイター調整録

2024年上半期の顔、UBスキャニメイター

言わずもがなですが、世はまさに空前の大リアニ環境。
2月初頭にMOより忽然と生まれたUBスキャム+リアニメイトパッケージを内蔵したUBスキャミネイターの登場以来、それまで愛用していたデルバーから鞍替えして継続的にこのデッキを使用してきました。

2月24日に行われた第25期レガシー神ではテーブルトップ17マッチ+2リーグ程度の練習量ではあったものの、直前にMOパンダさんが作成したリストの手応えが良かったこと、環境自体の本デッキに対する習熟度が今ほど高くなかったことも相まって11位に入賞することができました。

このアーキタイプに対する信頼感はここでグッと高まりました。

MOパンダブランドは伊達じゃない

《力線の探知機》を採用したRUGデルバーの登場などデルバー側にも変化はあったものの、ここからしばらくプライベートの多忙によりまとまった練習量が確保しづらかったこともあり、デッキ習熟度を高めるためにスキャニメイターを集中的に使用しました。

リストに対する試行錯誤:エスパー化の検証

練習過程ではリストは敢えて固定せずに幾つかの要素を検証すべく適宜リストを変更しながら試行錯誤を重ねていました。
特にタッチ白をすることでサイド後のフェアプランを増強する方向については友人間の中でもある程度結論が先行していたこともあって積極的にテストされていなかったため、逆に自分は比較的熱心に取り組んでいました。

以下にその中で検証対象となったカードについて雑感を記します。

■《聖カトリーヌの凱旋》

いわずと知れた白の強打クリーチャー

サイド後のフェアプランを後押しする要素としてまず試したのが《聖カトリーヌの凱旋》でした。このカードに対して期待したのは主に3点。

  • 墓地対策に引っかからないこと

  • デルバーやミラー戦のサイド後のゲーム時に絆魂能力によってライフレースをより有力に進めること

  • 自身のライフ損失を伴う《再活性》の使用期限を延ばし攻勢を維持しやすくすること

結論からいうと「要件は満たしているもののリスクに対して過剰な枠である」と判断しました。
カード単体の性能は素晴らしく一度場に出れば本来想定していた働きをしていたものの、白マナが必要になるタイミングがどこまでいってもコントロールしきれないこと、また実質2マナ帯のカードが増えすぎるいびつさという2点が重くのしかかり総合的なデッキのヘルシーさを考慮して選択肢から外しました。
また、ミラーマッチの増加に伴い《厚かましい借り手》の使用率が増えたことによってこのカードに対する信頼感が当初より揺らいだこともあり要件の中に"リキャストの容易さ"が加わったことも排除の要因として大きかったです。

■《害獣駆除》

OTJで追加された汎用スイーパー

サイドボードの固定枠となっている割りもの系2枚の枠については以前より"帯に短したすきに長し"という感が否めず、新しいカード試したさに加えて純粋に高いパワーを持つカードによる置換で解決できないかと考えて試用しました。

※ちなみに割りもの系のカードについては以下のような雑感を持っていました。
《仕組まれた爆薬》
+:設置は容易
-:起動コストが重い。納墓+釣り竿キャストのタイミングと分割せざるを得ないため釣るまでの流れとしてテンポの悪さが否めない
《火薬樽》系:
+:起動コストがタップのみで済むこと、起動によって流すコスト帯を可変させられる
-:《不毛の大地》や《目くらまし》を擁するデルバー系に対しては設置そのものが後手後手に回りやすく、その間のライフ損失が痛手となりやすい

《害獣駆除》を使用した所感としては確かにカードパワーは高く、対《ウルザの物語》デッキを中心に雑多なマッチアップで採用できる汎用性は魅力的でした。ただ、先述した火薬樽系の欠点に共通する点が多くそもそもこの枠が2マナアクションであることに起因する課題であることを再確認するに至りました。

■エスパー総評

メインはコンボ/サイド後はボードコントロールという構造は好きだった

汎用スイーパーを含む多めの除去本数によってサイド後にエスパーコントロールのように振る舞うのはある程度使用感も良く全体戦績も伴っていました。
特に聖カトリーヌについてはこのカードでしか覆し得ないゲーム展開があったこともあり、成功体験を築くには十分な印象を残してくれました。
また、当時よく質問をもらった点として《剣を鍬に》の非採用ですが、ここは最序盤から使用しうる除去は黒に揃えてあくまで盤面を返す強アクションの瞬間だけピンポイントで白マナを使うことで第三色のマナが必要な時間を減らそうという試みでした。

ただ、デッキ全体の所感としてはミラー以外に最も懸念していたデルバー系デッキに対してマナベースの脆弱さがどこまでいっても拭いきれませんでした。
サイドカードの強化と引き換えに足回りの不調リスクを抱えざるをえないという最大の問題に対して「挙動の安定を常に最優先するべき」という結論をもってエスパーの探求はここで打ち切りました。

ゲームプラン:釣るべきか釣らざるべきか

このデッキの最大の強みであるプランの可変性は広く周知されているため今更深くは触れませんが、ある程度使用した感覚を元に補足をするのであればプラン選択のキーポイントというものがあります。

■基本的なマッチアップの骨子に基づいた判断

基本マトリクス

「自分よりも早いコンボ相手に無理に追いかけっこしない」「コントロール相手にはディスアドバンテージの発生を避けてゲームする」…各象限に合致する基本的な考え方はありふれたものですが、それらを体系的に整理することでコンボとフェアの側面のいずれを選択すべきかの基本方針を把握できます。

■負け方を鑑みる
基本は先述の骨子に沿ってインアウトを行いますが、一部固有の要素が生じるマッチアップについては以下のような要素を考慮し比較的「負けづらい」と思われるプランを適用します。

  • 相手デッキの想定される妨害札の枚数

  • 防御態勢が整うまでの時間

  • 自身がサイド後に使用しなければいけない対策カードの本数

あまり当たったことがないマッチアップであっても、これらの要素を鑑みればある程度もっともらしいインアウトの形に至りやすいです。状況証拠から考えて自分がもっとも敗勢に陥りづらいケースを検討してプラン選択に繋げます。

例:対戦経験が少なかった緑単ポストが相手のゲーム。メインは迅速に《残虐の執政官》を釣ってゲームを取ったものの、サイド後2本目のゲームでは1ターン目《エルフの開墾者》からスタートされ《外科的摘出》と《フェアリーの忌み者》に嵌って負けた。
→思考素材:想定していたよりも墓地対策の量が多く、防御札はいずれも速いものばかりだった
⇒採るべきと思われる戦術:3本目ではスキャムプランを選択し相手が対策札でキープしたところに軽量クロックを連打。キャントリップ類で《不毛の大地》とカウンター類をかき集めることで相手のキープをスカらせながらテンポ勝ちする

また、逆に陥りがちなミスとしては勝ち方を先行して考えてしまうことです。勝ち方ベースで検討するとどうしても派手なリアニメイトプランに印象が寄りやすく、イージーな戦略選択に傾くきっかけとなりやすいです。

自分もかねがね友人に言われますが、このゲームの肝は"勝ち方ではなく負け方"です。

■思考の裏をかく
いわずもがなですが、ここまでを踏まえたうえで実際のマッチアップにおいてはアドリブが求められます。
世間で耳にする定石、メイン・サイド後の2ゲーム目でお互いにどういったサイドカードとこちらのプランを見せたか…これらの前提条件によって相手の思考の裏をかいたイン・アウトを行うことで相手のプランをスカらせる思考が必要です。
ただ、ここは知識というよりもプレイヤースキルの領域に属する要素であるためこれ以上の説明は避けます。

レポート:日本レガシー選手権2024年春

当日のデッキリスト

THE 正拳突き

当日のデッキリストは王道ど真ん中のリストで正面突破を図りました。リスト勝ちはもはや考えておらず、プレイスキルによって雑多なマッチを拾いつつミラーは嚙み合いの要素が多いこともあり都合のいい展開を祈ろうと割り切っています。
細かいカードの選択要素としてはミラーやデルバー戦を考慮して《目くらまし》の4枚目をギリギリ採用とした点、同様の理由から《仕組まれた爆薬》と《火薬樽》のスプリット採用などが挙げられます。
また、開催地や大会参加者の規模からミラー以外の雑多なマッチがある程度想定されるためネタ割れてしていても尚ゲームを決定づけられるパワーを持つ《濁浪の執政》は2枚に維持しました。

戦績

R1 UBスキャムシャドウ D: ×○○
R2 スキャム忍者 D: ×○○
R3 食物連鎖ゴブリン P: ○○
R4 赤単プリズン D: ×○○
R5 茶単 D: ○○
R6 グリクシスデルバー D: ○×○
ID
UBミラー D: ××(柳澤さん)
スイス6‐1‐1 8位抜け
SE1 UBミラー D: ××(柳澤さん)

日本選手権では初めてTOP8に入賞できました。僥倖。
総評としてはミラーを含む《悲嘆》+《再活性》パッケージを採用したデッキとの遭遇率、そのほかの雑多なマッチアップの発生数はほぼ事前予想通りでした。
ただ、テンポ、コンボ、プリズンと満遍なく当たったうえでR3以外すべて後手番スタートだったため「おいおいおい」と思いつつ歯を食いしばって勝ちを積みました。

惜しむらくは、唯一純正ミラーマッチが発生したスイス最終戦とSE1で優勝者である柳澤さんに完全にやり込められてしまったことです。
全体的にマリガンを強いられたこともありますが、メインはいずれも《納墓》や強打に至れず、サイド後も相手より先行して脅威を繰り出せない初手に陥ってしまいました。
肝心なところで完全にデッキが失速したのは無念でしたが、柳澤さんの構築は面白い上にかなり理詰めで細部を構成されていたこともあり後日の解説を見て目を見張りました。
高いプレイスキルと堅強な構築理念を持つ彼が優勝したことには全くもって驚きません。柳澤流に敬礼です。

日に2度敗れるバカがいるか(cf. 範馬勇次郎)

振り返りとその後

不確定要素がどうしても伴うゲームである以上自身のポテンシャルを100%出し切れることなんてほぼ無いですが、最後の2試合までは自身の実力をしっかりと出せた結果として大型大会で戦績を残せたことはうれしく思います。

特に当日に至る経緯として直前まで参加に消極的だったところを友人に発破を掛けられて参加した流れもあったため、打席に立つ機会がある限りはなるべくそれを逃さないようにすることが大事であると再確認させられました。


※その後、翌週のレガシー神ではどうしようもないツキのなさで即0-2ドロップしたためタイトルホルダーだった廣田さんのバックアップへ回ってました

最後に

来週にはモダンホライゾン3が遂に到来します。空前のUBスキャミネイターブームはおそらくどこかのタイミングで然るべき禁止改定を経て終了し、メタゲームの変遷が再開すると思われます。
ですが、試すべき価値のあるアイデアやカード評はすでにいくつも出始めているため、さっそく新デッキ案はいくつか思案しています。
次は2年ぶりの開催となる夏のBMOレガシーに向けて引き続き研鑽を積みたいと思います。皆さん試合で当たった際にはぜひ楽しみましょう。

最後に大会主催元のBIG MAGICのスタッフの皆さん、運営/進行に携わっていただいているジャッジの方々、いつもありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?