公務員の4月の繁忙期の心構え
残業の原因は「やったことのない業務」
以前、職員の時間外勤務を分析しました。
残業の原因は、いろいろな要素が複雑に絡み合っていて、一筋縄には解明できません。
しかしながら、どんな部署、どんな職員にも共通していることがあります。
それは、「やったことの無い仕事をする時に残業が増える」ということです。
言われてみれば当たり前かもしれませんが、
これが唯一の共通点です。
私の調査結果は次の通りでした。
・課の職員数が減った時(育休や療休で実働人数が減ったケースを含む)に、残業が増えたケースは3分の1、変わらなかったケースは3分の1、残業が減ったケースは3分の1
・課の職員数が増えた時に、残業が増えたケースは3分の1、変わらなかったケースは3分の1、残業が減ったケースは3分の1
・異動して最初の年に月20時間以上残業していた職員の7割以上は、その課で2年目の年に残業が減っている。残業が減っていない職員のうちほとんどは、課内の業務配分の変更があった、新規事業の担当となった、制度改正があったなどの原因が確認できた。
・業務分担の変更や制度改正なども無く、同じ課に何年いても残業が減らない職員もいるが、その職員はどこの課に異動しても一定の時間残業している。
・残業が極端に少ない課を除くと、窓口の有無に関わらず1月〜6月の中で4月が最も残業が多くなる課がほとんどである。
(手元にデータが無いので割合はざっくりです)
つまり何が言えるかというと、
・職員数の増減は残業の増減に関係ない。
・異動して最初の年に残業が多い人も2年目には減る。
・新規事業があると残業が増える。
・制度改正があると残業が増える。
・4月に残業が増え、5月に残業が減る。
これを一言で表現すると
「残業の原因は、やったことの無い仕事」
と言えます。
そして、その「やったことのない仕事」が
最も「やったことのない状態」である時期が4月です。
4月に残業が多いのは「転入/転出や退職/就職でお客さんが多いから」と思われがちです。
もちろん部署によってはその要素がとても大きな影響を及ぼしますが、
実は、転入/転出や退職/就職に関係の無い部署でも残業が増えます。
例えば、生涯学習関係の部署はイベントの多い10月〜11月が繁忙期ですし、道路関係の部署は契約が本格的に始まる4月下旬以降〜5月が繁忙期で、企画系の部署は決まった繁忙期はありません。
にも関わらず、どんな部署でも4月に残業が増えるのは
人事異動によって「やったことのない仕事をしている人が一定の割合いるから」に他なりません。
逆にいうと、毎年4月をうまく乗り切ることが長い公務員人生にとって重要になるのです。
4月を乗り切るコツ①「最初から自分のこだわりを出さない」
他の人がやっていた仕事を引き継ぐと
「何でこんなやり方をしているんだろう?」とか
「もっとこうしたら簡単にできる」とか、
思ったりするものです。
そこで改善を考えるのは良いことではあるのですが、
それを敢えて4月の忙しい時期にやる必要があるのか、
一呼吸おいて考えることをお勧めします。
なぜなら、改善するにも労力がかかります。
労力をかけた分、本当に効果があるのか。
忙しい中、労力をかけて改善しても、そんなに効果が得られないのであれば、
それは後で手をつければ良いのです。
私も4月から新しく担当になった業務があります。
それは会計年度任用職員(臨時職員)の休暇や勤務時間の管理なのですが、
私が引き継いだ内容は、紙ベースの休暇簿があり、そこに手書きで書いてもらい、課長の印鑑をもらうという、昔ながらのやり方でした。
最初にそれを教わった時、改善のしようがあるのでは無いかと思いました。
例えば「明日休みます」って課長に承諾をもらうようにしてもらって、記録としてはエクセルに入力してもらうという方法でも良いのでは無いかと考えました。
しかしながら、結局、改善せず紙に書いてもらう方法を私は選びました。
なぜなら、このやり方を変えるためには、
・本当に口頭で承諾をもらうだけで良いのか法的根拠を調べる
・エクセルで表を作り、入力の方法を臨時職員さんに教える
・教えた通り入力してくれているか確認する
といったことが必要になります。
これらの作業はもしかしたら1時間くらいで出来るかもしれませんが、半日以上かかったり1日では解決しない可能性もあります。
新しい仕事に慣れた頃に手を付ける分には全然難しいことではありませんが、敢えて4月の今一番忙しい時にやる必要はありません。
そこで、当面の間は教わった通り、紙ベースで処理することを選びました。
何より、これ、業務改善の効果としては小さすぎます。
紙に書いたとしてもエクセルで入れたとしても時間の削減効果は1回あたり数秒に過ぎません。
労力をかける割には大した効果がない → 後で暇な時にやれば良い!
と言う視点も大事です。
効率化に限らず、人事異動で引き継ぐと、
教わったやり方に対して「おかしい」とか
「本当はこういう風にやらなきゃいけない」とか
いろいろ疑問に沸いたりするものです。
しかし、それを敢えて4月の忙しい時には手をつけないと言う判断も一つです。
4月を乗り切るコツ②「慣れてる仕事は『秒で』終わらす」
4月になぜ忙しくなるか?
それは、やったことのない仕事がたくさんあるからです。
しかしながら、やったことない仕事の中にも簡単にできる仕事や、
今までに経験した仕事のノウハウをそのまま使える仕事はあります。
やったことの無い仕事に時間がかかるのだから、
簡単に出来る仕事は秒で終わらせて、
やったことのない仕事のために時間を確保することが重要です。
引き継いだ仕事の中に簡単な仕事があると、
つい「この仕事、楽勝だな」と思って
ゆっくりやってしまうものです。
そうしていると往々にして、突然上司から
「あの仕事どうなった?」と言われて
焦ってしまう。経験のある方多いのでは無いでしょうか。
仕事を引き継いだ時に大事なのは
「漏れが無いように仕事をする」ことです。
楽勝な仕事はもうさっさと終わらせ、
「他にやらなきゃいけないことは?」とか
「次に何をやらなきゃいけない?」とかを考えるべきです。
場合によっては、引き継ぎ書を見たり、前任者に聞いたり、ファイルのフォルダーを開いたりして、
とにかく「漏れ」「抜け」「忘れ」が無いようにしなくてはなりません。
簡単にできる事はさっさと終わらせて
「次、何をやらなきゃいけない?」
というところに時間をかけるべきです。
4月を乗り切るコツ③「バタバタした空気に巻き込まれない」
焦ると、ミスが起こります。
ミスが起こると、余計な仕事が発生します。
4月はみんな、焦っています。
「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と思っていながら、
どれくらいの仕事があるのかも把握できてない。
そういう状況で焦らない方が無理です。
だから、仕事のミスが多いのも4月です。
しかも、焦っているのは上司や周りの人も同じです。
4月は自分以外にも他の人がイライラしてたり焦っていることに注意が必要です。
そこに巻き込まれて自分も一緒になって焦ってしまうと、結局ミスをするのは自分。
ミスをすれば怒られてしまうし、大きな問題に発展してしまうかもしれません。
もしかしたら、上司に相談しようとしても忙しそうで話しかけにくい場合もあるかもしれません。
また、上司から仕事を頼まれる時も、焦った雰囲気で強い口調で言われたりすることもあるかもしれません。
そうしていると、自分もそこに巻き込まれて、イライラしたり、腹立ったり、自分も焦ったりしてしまいます。
ミスが増え、余計な仕事が増え、余計な仕事が増えるとまた忙しくなり、悪循環になってしまいます。
ちょっと一歩引くイメージで状況を客観的に見流ことが重要です。
4月のバタバタにいかに巻き込まれずに済むかが重要です。
「忙しい」は状況を表す言葉では無く感情を表す言葉
忙しいと感じている時、その渦中にいる間は「あれもやらなきゃ!」「仕事が重なってる!」「問題が発生した!」と、いっぱいいっぱいになってしまうのですが、後になって振り返ってみると、大した仕事をしていないことに気付いたりするものです。
つまり、「忙しい」というのは、必ずしもある期間内の業務量が客観的に見て多い状態を表すのでは無く、「業務量が多いと感じて焦っている気持ち」を表す言葉なのです。
「忙しい」と感じたら、それは状況では無く、感情の問題かもしれないと、一歩ひいて客観的に自分を見ることも大事です。
まとめ
4月の業務の向き合い方
①自分のこだわりを最初から出し過ぎない →敢えて最初は教わった通り
②簡単な仕事はさっさと終わらせて時間を確保 →仕事の漏れを無くす
③周りのバタバタに巻き込まれない →焦るとミスが増えて余計な仕事が増える
4月はどんな部署でも、窓口があってもなくても、「忙しい」となりがちです。
それは、多くの職員が「やったことのない仕事」に取り組んでいるからです。
そこで大事なのは、合理的に、冷静に、淡々とこなすことです。
もし、改善したいとか、付加的なことをしたいと思っても、敢えて後回しにする。4月を乗り切って、まずは軌道に載せていきましょう!
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