Erkin Koray "Elektronik Turkuler"(1974年、トルコ)


エルキン・コライはトルコのアナドル・ロックの先駆的アーティストである。
アナドル・ロックとはサイケデリック・ロックとトルコの伝統音楽を融合させたようなトルコ独自のロックで、エルキン・コライ以外にもバルシュ・マンチョ(Baris Manco、故人)やエディップ・アクバイラム(Edip Akbayram)のようなアーティストがいる。特にバルシュ・マンチョはトルコでは国民的なスターであり、日本でもライブを行ったこともあることから日本でも大スターなのだとトルコでは勘違いされているらしい(彼は大の親日家でもある)。
エルキン・コライは昨年(2023年)逝去したとのことで、シングル盤を収録したコンピレーション・アルバム "Mechul - Singles & Rarities"の国内盤が先日ライス・レコードからリリースされた。
この"Elektronik Turkuler"というアルバムはアナドル・ロックの最高峰のような位置付けにあり、トルコ語でアルバム名は「電気的民謡」を意味する。その名の通りトルコの伝統音楽・伝統歌謡をロック化したもので、サズーのようなトルコの伝統楽器の音もところどころ聴こえてくる。
エルキン・コライがこのアルバムで試みたことはビートルズをはじめとした60年代の英米サイケデリック・ロックアーティストが試みたことの逆、と言えるだろう。ビートルズはロックという「自分たちの音楽」のためにインド音楽という「異質な音楽」を肥やしとして活用したが、エルキン・コライはトルコ音楽という「自分たちの音楽」のためにロックという「異質な音楽」を肥やしとして活用した(これはインド伝統音楽とロックを融合させたインドのシタール奏者、アナンダ・シャンカールの音楽にも当てはまることだろう)。実際当時のトルコでは、イスラム圏ということもあってかロック・ミュージックは「西洋の退廃的な音楽」と見なされ、エルキン・コライもあまり大衆からいい目で見られなかったようである。
興味深いことにエルキン・コライはジョン・レノンと直接会って話したことがあったらしい。どんな会話をしたのか、詳細が分かれば知りたいものである。今頃天国で二人は洋の東西を隔てることなく共にロックしていることだろう。

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