風俗スカウトマンに勝つ!若年女性・少女のための伴走型支援とは?「若草プロジェクト in KYOTO」北川美里さんインタビュー
今まで生きている中で「あの時、やっておけばよかった…」という後悔や、忘れられないことは、皆さんにも1つ2つあるのではないでしょうか。
今回、お話を聞かせていただいた北川美里さんは、そんな「あのときの思い」を胸に活動をされている方です。
北川さんは、京都府更生保護女性連盟(以下、更生保護)の「若草プロジェクトin KYOTO」で若年女性・少女を支える活動をされています。
若草プロジェクトとは、瀬戸内寂聴さんと、元厚生労働事務次官である村木厚子さんが呼びかけ人として始まり、例えばDVや薬物依存、性搾取などSOSを心に抱える女性たちにとって、本当に必要なことを仲間と共に寄り添い支援するという活動です。
瀬戸内寂聴さんによる若草プロジェクトの講演を聞きに行かれた北川さんは「この活動は京都にも必要だ」と強く感銘を受けたそうです。
元々、北川さんは10数年に渡り保護司をされてきて多くの女性会って来られました。その経験から、生きづらさを抱えている、居場所がない、という孤立した女の子たちのために愛溢れる人たちと一緒に立ち上がり、「若草プロジェクトin KYOTO」を2016年7月に発足しました。
後悔・敗北感からの決意
保護司として経験した様々な出会いの中で、特に印象的なことがあったそうです。
「保護司として、20歳位の親がいない少女を担当した時の話です。学歴もなく、仕事にもつけない。良い子なのだけど、覚せい剤で再犯してしまって。私の家を出た瞬間に刑事に捕まったのです。「もっと何かできたのではないか」と反省や後悔があって。その後、刑務所からその子が送ってくれた手紙には『私の話を聞いてくれたのは、北川さんと、売人(覚せい剤の)だけでした』と書いてあったのです」。
生きづらさを抱えていた彼女は、売人に騙されていると気付けなかった。どこにも頼れない、私を理解してくれる人なんていないんだと絶望している彼女にとっては、売人が救いの神に見えてしまった。
そう痛感した北川さんは、「あなたが出所した時には今度こそ絶対居場所を作るからね!」と強く決意し、「本当の意味での自分ごと」として若草プロジェクトの活動をすると決めたそうです。
若草プロジェクトの活動を続けるなかで、北川さんにはもう1つの活動の軸にしている“くやしさ”があります。「自分たちの活動って、風俗のスカウトマンに負けたままなんです」と、北川さんは言います。
“風俗のスカウトマンに負ける”とはどういう意味なのでしょう。
“JKビジネス”の実態把握とともに、それに巻き込まれている少女たちを自宅に招きいれ、保護するなどの救出活動を実際にされている仁藤夢乃さんという方がおられます。
「スカウトマンは女の子たちに住居、食事、仕事を提供し、さらに相談相手にもなってあげている。だから居場所のない女の子がJKビジネスや風俗に流れてしまう」という仁藤さんの言葉に、北川さんは敗北感すら覚えたそうです。
北川さん個人としては、「今の活動よりももっと寄り添える場所が必要だ」という思いがあります。たとえば一緒に住む、事業を起こす、役割をつくるなど。より具体的な支援がないと、スカウトマン達に対抗できる居場所にはならない、苦しんでいる女の子たちとつながれない」と痛感されています。
あなたとわたし。一緒に
更生保護とは、「人が立ち直るとは誰かの力があってこそ」という思いで、犯罪歴のある人たちの更生を支援することです。
生きづらさをかかえて孤立している女の子たちは、犯罪の加害者や被害者(性犯罪)となってしまいやすく、依存症や自殺者の増加につながります。
北川さんは、彼女たちを支援するときは、支援を“してあげる”や、”してもらう“という「支援者」「被支援者」という分け方ではなく、同じ目線で寄り添い、一緒に元気になっていこうという「伴走型支援」として活動していきたいと考えておられます。
「立ち直ると言うのは、上から目線というか、ひっぱりあげるでは解決できなくて、本人が気づくことが必要だと思います。それには安心安全な場所で、信頼できる人間関係を築いて、今の自分を認めてもらって、過去のしんどかったころに戻ることではじめて立ち直り、自分で自分の人生を歩めるものだと感じます。だからこそ伴走型と考えているのです」。
熱い思いで活動を続ける北川さんですが、先の通り、まだまだ目指すカタチには届いていません。北川さんの思いに共感した方、できれば若い人たちにも、この伴走型支援に加わってほしいと強く感じておられます。
人を支えるなんて自信がないと思われるかもしれませんが、一人一人の「なにかしたい」「力になれたら」という気持ちが集まればそれは大きな力になります。
現在、発足から3年目となる「若草プロジェクトin KYOTO」。活動の場として、上京区のバザールカフェにて、誰でも来られるオープンな場を開いています。
また、今後はお寺や市民センターなど、活動の時間・場を広げていきたいと考えておられます。ほっとお茶を飲みながら、若草プロジェトクトがどんな場なのか、どんな活動をしているのか、まず触れてみることからみなさんもはじめませんか?
【若草プロジェクト:http://wakakusa.jp.net/index.html】
【BazaarCafe→http://www.bazaarcafe.org】
(文/写真・小原亜紗子)