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祝・独メルケル首相、4期目当選

ドイツの連邦議会選挙で、アンゲラ・メルケル首相が4期目当選を果たしました。喜ばしいかぎりです。

私、けっこう彼女のファンなんで、なんなら選挙運動期間中にドイツまで行って、「きゃー、アンゲラすてきー、がんばってー!」と、応援したいくらいの勢いでした。

彼女のどこが良いって、数え上げるといろいろあります。
まず政策や外交手腕はもちろんですが、ひじょうに冷静でバランスのとれた人だと思います。リーダーシップにも長けている。

あと些末なことですが、服装にパンツ・スーツが多いというのも好感がもてます。うちのメイさん(英メイ首相)みたいに、悪趣味なハイヒールに凝って脚線美を強調したがるおバカさんとはえらい違いです。

現在のイギリスは、EU離脱で複雑な課題を抱えているとはいえ、あちこちに媚びへつらっているメイ首相を見ていると、はっきり言って、ふがいない。(そんなことするくらいなら、EU離脱を撤回してほしい)

ドイツのメルケル首相みたいに、ちょっとやそっとのことでは動じない頼りがいのあるリーダーがいる国がうらやましいです。

でも、なによりメルケル首相が素晴らしいと思うのは、彼女は、ヨーロッパ最大の経済規模を誇るドイツと言う国のトップとしての資質を、「経験を通して学び取ってきた」人である、という点です。

ながらく「過小評価」されてきたメルケル首相

メルケル首相はハンブルク生まれですが、生まれて間もなく東ドイツに移っています。その後、東西ドイツが再統一されるまで、ずっと東ドイツで暮らしていました。

物理学の研究者としての地位を捨て、政界に進出した当初は、
「ちょっとシャイな、牧師の娘」(お父さんが牧師であったので)
「学者あがりで政治経験に欠けている」
「東ドイツ出身の、あかぬけない新参者」
などなど、門外漢・よそ者扱いされることが多かった人です。

若き日のメルケル首相を抜擢した当時のコール首相ですら、メルケル氏を「うちの女の子」と呼ぶなど、まぁそういう時代、そういう扱い方をされる状況を生き延びてきたわけです。

今回の選挙直前に、BBCが制作したメルケル首相の特集ニュースの中で、当時の彼女を知る人々にインタビューをしていましたが、そのほとんどの人が、メルケル首相を評して、「我々はみな、彼女を過小評価していた」と語っています。

そのうちの一人は、「シャープな政治的分析力など、彼女は持ち合わせていないと思っていた」とか。そして、曰く、「私たちは皆、全く間違っていた、それも長い間。」

実力で信頼を勝ち取る、というのは、その仕事を投げ出さずに取り組んできた者だけが得られる達成感です。

地道な歩みは必ず実を結ぶ

華々しく政界にあらわれたカリスマ的な若手政治家にくらべると、メルケル氏は、それはもう地味すぎるくらい地道に政界を歩んで来た人です。

ベテランの元官僚が、メルケル首相を評してこう言っていました。
「(アンゲラは)元英首相のブレアとか、アメリカのクリントン(夫)とかオバマみたいな、ああいう魅力はもっていない。そういう方法で人気を得るタイプではない。けれど、他の者たちが必死で競いあっている状況をじっくり観察し時期を待って、そして最終的には一人勝ちする」

そういう仕事ぶりってクールでいいなぁ、と思いますが、実際には、これはかなりの辛抱強さと精神的な強さを要します。

反対意見に遭ったから、不利な立場になったから、あるいは単にケナされたから、といって、そっこーで言い返したり、スネて投げ出したり、あるいは脅したりする直情径行な、どこぞの国のトップには真似できないことです。

とはいえ、今回のドイツ選挙は過去の選挙にくらべると接戦で、メルケル首相はそれを重く受け取っているようです。ドイツ国内だけでなく、今はヨーロッパも不安要素をはらんでいますが、何とか乗り切っていただきたいものです。

メルケル首相は、国の基本方針について、かつてこう言いました。

 We will take care of every single person in our society. That is our task.
(私達は、社会の一員ひとりひとりを大事にする所存です。それが私達の務めです。)

こういう確固たる意識をもち、そして実行できる人が、国際政治の場にもっと増えてほしいものだと思います。