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103系は「電力バカ食い」なのか


103系客室カット模型

 103系はしばしば電力を大量消費しているように書かれ、省エネの敵であるかのような認識をもつ人も少なくない。その根拠は209系のアピールポイントであった、
「この電車は従来の半分の電力(47%)で走っています」
というステッカー。

 事実、209系の走行電力は、理論値として103系の47%まで下げられるようだ。ただしそれは京浜東北線で使用した場合のみだ。開発陣にとって、もっとも都合の良いデータがこれだったのだろう。
 
 意外に思われるかもしれないが、103系の電動車1ユニットあたりの加速消費電力は209系より少ない。電力回生により消費量が還元されることを見越して計算されるわけだが、この回生率を達成するためには運転本数と駅間が重要ポイント。
 京浜東北線で計算すれば47%だが川越・八高線で使用した場合はどうだろうか。209系・103系ともに2M2T、運転本数は時間に2,3本、駅間距離は長く、待ち合わせと接続のため停車時間も長い。京浜東北線と比べると回生率が大きく下回るはずだ。こうした運用条件に関わらず電力半分、では決してない。47%をすっかり鵜呑みにして誤解している人がほとんどではないだろうか。

 交通白書という本がある。図書館へ行けば見ることができるだろう。交通産業別に使用エネルギー量などが細かく記載されている。これによると、電力半分が自慢の209系500番代とE231系が走り始めた2000頃から、鉄道部門の電力使用は急増している。電力消費を左右するのは車両が全てではないが、これが僕にはどうもすっきりしない。

 103系はもともと高加減速性能と低消費電力を重視して作られた経済車である。東日本では悪者にされてさっさと片づけられてしまったが(博物館の収蔵品さえあの有り様だ)、西日本では50年の使用に耐えることが証明されており、走行だけでなく製造エネルギーから廃棄エネルギーまでを総合的に計算した場合、本当のところ103系に勝てる省エネ車は未だ存在していないんじゃないかとさえ考えてしまう。

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