見出し画像

新解釈:四十九日…六七日

五七日編はこちら

五七日が終わると私はソワソワしていた。
今頃協議を重ねているんだろうか……。
『ほら、さやさんの好きな生チョコケーキよ、チョコソースたっぷり!』
という、ゆみさんののんきな声が聞こえてくる。
『やることやったんだから、おいしいもの食べて、結果を待ちましょうよ。ずっと裁判対策でしんどかったでしょう。』

確かに五七日が終わった時、私は証言台にぐったりともたれ掛かった。よくあることらしく、ゆみさんは驚いていなかった。
しかし、次の人のために早く退出しないといけないのに、私はなかなか立ち上がれなかった。

「ゆみさんは、地獄行きになった人の弁護をしたことがある?」
『ありますよ。かなり難しいというか、弁護しがいがないというか…。地獄行きはかなり早い段階で決まるから弁護する時間はないからだけど…。』
「なるほど。」
聞くだけ野暮だったかな。

「私、思ったんですよ。この裁判は、私の人生の集大成であって、今まで生き抜いてきたことが大切なんだって。だからどんな結果でも受け止めないとって。」
ある意味自分に言い聞かせるように言った言葉だった。
『うん、判決が極楽浄土なら、私と同じだから、これからも会えるよ。先になくなったっていうおじいさま・おばあさまや飼っていた犬さんや鳥さんもいるから、会えるといいわね。』
「裁判終わってからもお友達でいてね。大変だったけど、カフェは楽しかったから!」
少し楽しみにしながら判決を待った。

運命の六七日の判決の日。
『判決を言い渡します。田中さやさん、何か言い残したことはございますか?』
「いいえ、ありません。判決、お願いいたします!」
『わかりました。あなたは、極楽浄土行きということが決定いたしました。がんばりましたね。』
「ありがとうございます。」

『理由を言いますね。五七日で話していたことがあなたにはあって、お父さんを傷つけた・あなた自身も苦しみました。養子縁組をすることであなたはお父さんから逃げたと思われているかもしれません。しかし、あなたは二七日の時に話されていたように、たくさんの人を楽しませ、また自らも楽しんだ。お父さんのことがあったからこその行動だと思います。あと少し時間があれば、あなたはきっとお父さんと和解していたことでしょう。こういった理由から先ほどの結果にいたしました。』

とても心に響く言葉たちだった。
「素敵な言葉、ありがとうございます。自分の人生に自信が持てました。」
『四十九日まであと7日です。ゆみさんと一緒に極楽浄土への準備をしてくださいね。』

続く

【六七日】
五官王と閻魔王の裁きを受けて、生まれ変わる条件や場所を具体的に決めるのが六七日の変成王(弥勒菩薩)です。
人間道に生まれ変わるにしても、どの国の、どの地域の、誰の子として生まれるか。地獄道に堕ちるならどの地獄に生まれ変わるかなどを決めると言われています。

参考資料


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?