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手のひらに刻まれているもの

朝、顔を洗っている時に、ふと手のひらを見た。
「……見えるねぇ。」

中学生の時にさかのぼる

『あ、いてっ!うわ!シャーペンの芯刺さったかも!』
授業中にそうクラスメイトがつぶやいた。
ちょっと焦っているらしい。

別のクラスメイトが落ち着かせるように言った。
「大丈夫だよ。僕も小学生の時に鉛筆の芯が手のひらに刺さったけど、問題なく過ごしてるから!」
そう言って手のひらを見せた。

また別のクラスメイトも言った。
「僕もここに跡があるよ。」
私もその会話に参加した。
「私も小学生の時に刺さって、ここにほら!」

すると焦っていたはずのクラスメイトが冷静に突っ込んだ。
『鉛筆の芯ってそんな頻繁に刺さるものなん?』
そのクラスメイトの周りに集中していたのはおそらく偶然だっただろうが、あるあるなのかもしれない。


更にさかのぼる。

『いだぁ〜〜〜い!』
そう泣き叫んでいたのは、6〜7歳の私だった。
ペン立てにある歯ブラシか何かを取ろうとして、鉛筆の芯が手のひらにぶっ刺さったのだ。
しかも全てしっかりと削ってピンピンに尖っていた。

私は子どもの頃から、痛いからと言ってそんなに泣かなかった。
泣き叫んだということは、相当痛かったのだろう。
かなり血が出ていたのを覚えている。

医者だった父は「手のひら見せてみ!!」と私の手を引っ張った。
その時には鉛筆はなかったように記憶しているので、おそらく手の中で芯が折れてしまったと考えられる。
父は鉛筆の芯を出そうと、いろんな手を尽くしていたが、取れず、とりあえず消毒をしてくれた。

次の日、大きなガーゼにテーピングした状態で学校に行ったのを覚えている。
友達や先生に「どうしたの?」と心配されて、事情を説明した。
『鉛筆の芯が手のひらに刺さったの。しかも手の中で折れちゃって出てこなかったの。』
みんな痛そうな表情をしていた。

テーピングが外れてしばらくした頃、
手のひらを見て気づいた。

「これ、鉛筆の芯じゃん!」
触っても鉛筆の芯の感覚はわからないけど、黒色が見える。こんなものが刻み込まれたら痛いはずだ、こんな風に残るんだ……!とビックリした。

でももっとビックリなのは、体の中に溶け込んで消えるでもなく、そこから飛び出てくるでもなく、そこにただただ存在すること。
鉛筆の芯って毒だと、子どもの頃聞いていたから、体の調子が悪くなったらどうしようと思っていた。
もしかしたら何かしらの影響はあるのかもしれないけど、残したまま問題なく過ごせている。
人体って不思議だ。


そして鉛筆の芯刺さった体験をしていたのは、
身近のクラスメイトだけでなく……

高校生か大学生の時、踊る!さんま御殿を見ていたら、たまたま鉛筆の芯刺さった体験の話をしていた。
「オレ、子どもの頃、鉛筆の芯、手のひらに刺さったことあるねん!ここに跡あるわ。」
明石家さんまさんがそんなことを言っていた。

芸能人もそんな体験あるんだ、とちょっと親近感を抱いていた。
すると、すかさず綾瀬はるかさんが、「私2本入ってます!」と答えた。
明石家さんまさんが「……2回もそんな体験あるのって、おっちょこちょいやな」と突っ込んでいた。
確かに2回は体験しないかも。

こういう体験や手のひらに刻まれた跡なども、その人の個性になっていくのかな、と大げさに考えたミンチョンだった。

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