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名字の言 キズやコンプレックスは宝物2023年8月7日

 ある女子高生は「ハーフ」に憧れを抱いていた。その彼女が母親に真顔で聞いた。「なぜ、お母さんはフランス人と結婚しなかったの?」▼この話を聞いた脳科学者の茂木健一郎氏は、彼女が“重大なことを見落としている”と指摘する。もし、お母さんが海外の人と結婚していたら「『今の自分』はこの世に存在しない」(『脳科学者・茂木健一郎の人生相談』第三文明社)▼作家の村田喜代子さんがかつて、「自転車に乗れない」「父親がいない」「吃音」など、自らが持つ幾つかの事柄について、本紙で語っていた。それらに悩まされることはあったが、常に楽しい方向へと考える習慣を身に付けることができた、という▼さらに「“足りないもの”こそが私の文学の源」と述べた上で、こう強調した。「『玉にキズ(瑕)』ということわざがありますが、何かを生み出すときに、発想の跳躍台になるのは、“玉”よりも“キズ”です」「何らかのキズやコンプレックスを抱えていたとしたら、それは宝物です」と▼“幸せになりたい”という願いは、自分を別人に変えて実現することはできない。また、他人と比較した結果の優劣でも決まらない。今の自分の境涯をどこまでも開き、高めていく中に真の幸福はある。(城)

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